石川 鉛筆
大竹です。今回ご紹介させて頂くのは石川さんの鉛筆デッサンです。
真っ暗な画面の中心で向かい合う白い骸骨の構成は、”藝大 油画 デッサン”と検索して出てくる作品と並べても、引けを取らない格好良さがありますね。
背景を何度も鉛筆を走らせて黒くしていったのでしょう、線の密度を感じる真っ黒さです。そこから白い骸骨のシルエットが浮かび上がる構図は分かりやすくもインパクトがありますね。中心にも縦に明るく光が走っており、両者の間にある緊張感の様なものを表しているのでしょうか。
「ブルーピリオドさながらの自分の内部に向かっていった結果として生まれた作品…に見えるけど、そうでもないんだろうな?ティーンエイジャーでもない余裕のある大人が描いているので、表面を取り繕うのは苦も無くできるしね!」と小原先生がおっしゃっていましたが、自分と向き合っているのでなければ、相手は誰なのでしょう?作者が暗闇の中で向き合っている相手の事を想像してみたり、はたまた自分だったら相手は誰になるのか?と考えてみると面白い1枚だと思います。
骸骨の造形も線を何本も重ねて細かく追っており、骨の乾いてざらついた質感が伝わってきますね。持った時のずっしりとした重みも感じられます。我々の顔の皮膚・肉の下にある骨は複雑な形を持っており、ここまでしっかりと観察して描いた事で石川さんにもいくつか新たな発見があったのではないでしょうか。
絵を描き始めると、これまで何気なく見ていた物の見方が変化していきます。電信柱の陰影が美しく見えたり、錆びた看板が面白いマチエールに見えたり、捨てられたゴミ山の形が面白いものに見えたり…。身の回りの全ての物がモチーフという新たな視点から見る事が出来るでしょう。石川さんの周りで見慣れた物も、きっとガラリと変化して見えてくると思います。是非、その変化も楽しんで頂けたらと思います。