goo blog サービス終了のお知らせ 

海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

書評:知念ウシ著『ウシがゆく』(沖縄タイムス社)

2010-11-08 22:37:28 | 読書/書評
【2010年11月7日付沖縄タイムス掲載】

 本書は沖縄タイムスに連載された「ウシがゆく」を中心に、二〇〇二年以降に書かれた評論やエッセーに新たな書き下ろしを加え、まとめられたものである。「植民地主義を探検し、私を探す旅」という副題が示すように本書には、沖縄を内と外から縛りつけている植民地主義の実態を見つめ、気づき、考え、克服しようとする著者の姿勢が貫かれている。
 インドで出会った植民地主義研究者、アシス・ナンディ博士に著者は問う。植民地主義はまだ存在すると言えるのか。ナンディ博士は答える。
「人々の心、あらゆるレベルの支配形態の中に存在する」「今や、被植民者は自らを植民地化されているとは感じず、考えない。被植民者自身が植民者のようになろうとしているからだ」「このような被植民者を利用して植民者は支配を続けるのだ」(155ページ)。
 植民地主義は今も存在する、この沖縄にも。それは米軍基地や自衛隊基地という目に見えやすい形だけでなく、文化や芸能、ふだん使っている言葉、日々の行動、思考にも根を張っている。そのことに著者は鋭敏に反応する。そして、自らの権力性に無自覚な植民者を徹底して批判し、被植民者として自らが置かれている現状に抵抗し続ける。
 そのような批判、抵抗を著者は日々の生活の中で行っている。「カマドゥー小(ぐゎー)たちの集い」の一員として基地問題で行動するときにも、沖縄で子育てをし日々を暮らしている生活者としての視点、感覚、思考を大切にしている。
 そして、批判したくてもなかなか口を開けない自分の弱さから目をそらさず、地域社会のしがらみの中で行動することの難しさを痛感しながら、自分の足で一歩を踏み出し続けている。 
 それは口で言うほど簡単なことではない。だからこそ著者は、沖縄に平和運動をしにやってくるヤマトンチュに対して、自分の地元のヤマトでやってほしい、と言う。そして、日米安保体制の下で米軍基地の負担を沖縄に集中させてきた日本政府と日本人に対して、沖縄の基地をヤマトに持って帰れと主張する。
 このような著者の主張には、これまでも共感や困惑、反論など様々な反応があった。普天間基地の「県外・国外移設」、あるいは無条件返還が議論されている今、著者や「カマドゥー小ーの集い」が行ってきた主張が改めて注目されていい。時宜を得てまとめられた一冊である。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 大豆の丈 | トップ | 「県外移設」と辺野古微修正 »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ふゆいちご)
2010-11-12 20:19:32
はじめまして

>「今や、被植民者は自らを植民地化されているとは感じず、考えない。被植民者自身が植民者のようになろうとしているからだ」「このような被植民者を利用して植民者は支配を続けるのだ」

日本人、というか、多くの“ヤマトンチュー”を指しているようでドキッとします。(私も関東に住むヤマトンチューですが)

知念ウシさんのことは初めて知りました。
御本を買わせていただこうかと思います。
返信する
植民地主義について学ぶ (りゅう)
2010-11-23 23:17:23
 今日、植民地主義を学んだ。
西洋を見つめ続ける日本、しかし米国に押さえられ続け、ついには青いコンタクトをつけ、金髪の髪を作る若者を生み出した。
 私は、沖縄で産まれたことを感謝したい。歴史を学ばせ、世界というものを考えさせるから。そして、今日植民地主義ということを学んだ。植民者と被植民者それは加害者と被害者の形にも似ているように思う。いつの間にか加害者になるということにもなりかねない。
 琉球から沖縄そして沖縄県について常に自分の足元から考えていきたいと思った。
 
返信する

読書/書評」カテゴリの最新記事