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海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

「県外移設」と辺野古微修正

2010-11-12 14:24:32 | 米軍・自衛隊・基地問題
 2009年4月18日付琉球新報に〈「普天間」代替 2段階で110メートル以内 県、沖合移動「決着」へ意向 騒音など軽減は不明〉という見出しの記事がある。全文を以下に引用する。

〈県は、米軍普天間飛行場代替施設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)で移設案の沖合移動について、評価書とその後の補正など二段階の修正により、百十メートル以内の移動で政府と折り合いをつける意向であることが、複数の幹部の話で分かった。ただ、評価書など残るアセス手続きの中で百メートル程度の移動が実現しても、騒音など住民生活への影響がどれだけ軽減されるかは不透明だ。

 アセス条例の規則では、アセスをやり直さずに可能な飛行場部分の軽微な修正範囲は十ヘクタール以内。千八百メートルの滑走路幅では移動幅は約五十五メートルとなる。県側は、アセス条例の規則を根拠に①事業主による自主的移動②知事意見への対応措置としての軽微な修正③環境への負荷の低減を目的とする修正-で沖合移動が可能だとの見解だ。
 県首脳によると、昨年の町村信孝官房長官(当時)との水面下交渉でも、一回きり約五十五メートルの修正で決着を図ろうとする町村氏に県は、二段階修正を求めて折り合いがつかなかった。
 県側の判断には、政治的な決着では、アセス軽視の批判が出ることへの懸念があった。
 県側は、町村氏や二橋正弘官房副長官(当時)との交渉で二段階の修正を要求。だが町村氏は、米側に二回の修正は要求できないと県の主張に難色を示した。これに対し県首脳は、町村氏に「米側には一回の説明で百メートルほどずらすと説明し、その上でアセスの手続きで二回に分けてずらせばいい。米側に二回も理解を求める必要はない」と切り返したが合意できなかった。
 一方、政府合意のタイミングとしてアセス調査が継続している段階で政府側と決着した場合、県環境影響評価審査会の審議を軽んじているとの批判が出るのではとの県側判断も働いた。
 県首脳は「アセスが始まる前ならよかったが、アセスが進んでいる中では、審査会や住民意見を軽視しているとマスコミから批判される」と早期決着に慎重になった背景を説明した。(滝本匠)

「私の求めに近づく」仲井真知事が会見

 仲井真弘多知事は十七日の定例記者会見で、町村信孝前官房長官が米軍普天間飛行場移設問題に関連し、環境影響評価(アセスメント)の範囲内で修正できる五十五メートル以内で沖合移動を容認する考えを示したことについて「『一ミリも動かさない』という時期に比べると、私が求めていることにだいぶ近づいてきた」との認識を示した。
 ただ、アセス範囲内の“微修正”が、知事が沖合移動要求の理由に掲げる住民生活への影響の軽減につながるかについては「技術的にどういう効果があるかはよく分からない」と述べ、環境アセスの内容や専門家意見などを踏まえて判断したいとの考えを示すにとどめた〉
 
 昨年の4月段階で、沖縄県が110メートル以内という具体的な数字を出して、日本政府と〈折り合いをつける意向〉であったことが明らかにされている。当然、それは仲井真知事の判断と指示によるものだ。当時の町村官房長官が〈米側に二回の修正はできないと県の主張に難色を示した〉のに対し、〈県首脳は、「米側には一回の説明で百メートルほどずらすと説明し、その上でアセスの手続きで二回に分けてずらせばいい。米側に二回も理解を求める必要はない」と切り返した〉という。政府に対して米側との交渉のやり方まで教示するのだから、仲井真知事の下で県幹部らが積極的に政府にはたらきかけていたのが分かる。
 結局、アセス調査が継続している段階では、〈県環境影響評価審査会の審議〉や〈住民意見を軽視〉しているという批判が出るとの判断から、県と政府の合意には至らなかったようだ。しかし、その後、自公政権から民主党を中心とした政権への交代が行われなかったら、今頃どうなっていただろうか。仲井真知事と政府との間で110メートル以内の沖合移動という合意が交わされ、埋め立てに向けた工事が進められていたのではないか。

 これは過去の話ではない。これから起こり得る話でもある。
 昨日11日に沖縄県知事選挙が告示された。再選を目ざして立候補した仲井真氏は、選挙前になって普天間基地の「県外移設」を唱えだした。一方で、「県内移設」反対を明言することはせず、名護市長選挙・市議会議員選挙の結果や県民世論の変化など外部環境の変化を理由に挙げて、「県内移設」は不可能、という状況認識を示すにとどめる手法を貫いている。「県内移設」反対を曖昧にすることによって、「県外移設」を唱えつつ、「県内移設」で政府と交渉する余地を残そうとしている。
 このような仲井真氏の姿勢を見るとき、改めて引用した記事を確認せざるを得ない。〈2段階で110メートル以内〉で〈沖合移動〉し、政府と合意するという方針を、仲井真氏は捨て去ったのか。とてもそうは思えない。民主・国民新政権が「辺野古回帰」を遂げた今、仲井真氏の本音は同じ形で政府と合意したい、というものではないのか。
 仲井真氏にとって障害となっているのは外部環境の問題であり、それは裏を返せば、県民世論などの外部環境が変化すれば、「県外移設」という公約の転換もあり得るということだ。これまで「県内移設」を推進してきていながら、選挙前になってにわかに打ち出した仲井真氏の「県外移設」は、政治家としての信念に裏打ちされたものではなく、軽いものでしかない。
 それを見透かしているからこそ、普天間基地の「県内移設」(辺野古新基地建設)を是が非でも進めようとしている民主・国民新政権や自民党本部、名護市の移設「容認」派議員たちは隠然、公然と仲井真氏を応援している。仲井真氏の「県外移設」が本物なら、彼らも応援しようがないだろう。「県内移設」を進めようとしている者たちが応援していること自体が、仲井真氏の唱える「県外移設」の内実を明らかにしているのである。
 選挙に当選したら公約をひっくり返す政治家の醜態を、沖縄県民はこの1年余でさんざん見せられてきた。110メートル以内の沖合移動という「微修正」で政府と「決着」する寸前までいっていた仲井真氏が、選挙前になって唱えだした「県外移設」。外部環境=吹く風しだいでひっくり返る軽い公約はもういい。いま沖縄に必要なのは、沖縄に新たな基地は決して造らせない!「県内移設」反対!を明確に打ち出し、それを貫くことだ。



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1 コメント

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新たな危機 (りゅう)
2010-11-13 21:45:52
 先日、海外ニュースを見ていたら、確かイギリスで学生が「学費の値上げ反対!選挙公約では値上げはしない、ではなかったか!!」と大きな道路を埋め尽くすデモを行っていた。
 公約は、剥げ落ちる膏薬で。
 沖縄の場合、民主党はすでに自民を超えている?かもしれない。
 沖縄、ああ沖縄、踏ん張れ!!!
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