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海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

大分県教育行政の腐敗

2008-07-12 00:01:30 | 教育
 大分県の教員採用試験や管理職の任用をめぐる贈収賄事件は、県の教育行政全体で何十年にもわたって不正な採用・任用が行われてきたという実態が明らかになってきた。いったい、不正な形で採用された教師はどれくらいの数・割合になるのだろうか。不正採用された教師を懲戒免職にしたら、余りにも多すぎて学校現場が大混乱しかねない……。そういう状況になりそうだが、だからといっていい加減な幕引きは許されない。不正採用された教師は採用を取り消すべきだし、合格していたのに落とされた教師に対しては、実態調査をきちんと行って本採用すべきだ。コネや賄賂で採用された連中のために落とされ、人生を狂わされた人のことを考えれば、それは最低限やるべきことだろう。
 報道を見るたびに視聴者の多くは、自分の県ではどうなのか、と考える。沖縄県では昨年、採用試験で採点ミスがあり、本来合格していた受験者が大量に落とされる、という事件が起こった。その際に、教育庁の採点係が一人しかいなかった、という驚くべき実態も明らかになったのだが、問題が発覚したのは受験者の得点が本人に公表されていたからだ。
 私が教員採用試験を受けた90年代の半ばまでは、試験の得点は本人にも公表されず、問題用紙も回収されたので自己採点もできなかった。すべては教育庁の密室の中で行われていたのであり、教育庁内部で不正が行われたり、ミスが発生したとしても、受験者にはまったく分からないようになっていた。採点ミスは去年が初めてではあるまい。これまで沖縄県の教員採用試験受けた大半の人が、そう考えたのではなかろうか。しかし、今となってはそれを検証することもできない。これまで本当にきちんと採用試験が行われてきたのか。情報を公開しなかったが故に、教育庁には不信の陰がつきまとい続けるだろう。
 1年の補充期間を入れて10年、沖縄で高校教師をやったのだが、沖縄県の採用試験に関して言えば、金銭の授受などの不正採用については聞いたことがない。ただ、合格・採用後の学校配置についてはコネが効くというのを以前、某指導主事から聞いたことがあり、実例も知っている。
 親が校長のある教師が、新採用で当初は離島の高校に配置が決まっていたのだが、親のコネを使って那覇市内の高校に配置替えされた。その教師の替わりに離島に行かされそうになった教師があとで事実を知り、コネを使った教師をぶん殴ってやろうか、と思ったという話をしていた。その教師は酒の席で、親のコネで配置を替えてもらった、と自慢げに話していたという。
 そのほか校長試験に合格した某教頭が、勤めている学校で生産された物を、教育庁の幹部にお中元として熱心に送っていた例もある。校長の中には高校にランクづけして、開邦高校や球陽高校といった進学校に行きたがり、生徒指導が厳しい普通高校や実業高校には行きたがらない者がいるのだ。その校長も沖縄島中南部の進学校の校長になることを狙って、教育庁の幹部に生徒が実習で生産した物を送っていたのだが、望みを果たせずがっくりきていたそうだ。こういう連中が校長になると、目をかけた教師に管理職試験を勧め、同じ手法を伝授していく。そうして腐敗は再生産され、深まっていくのだ。
 大分県ほどひどくはないとしても、採用や任用、人事の問題は沖縄の教育行政にもある。上意下達的な権力構造が強化され、情報が独占されて教育行政が密室化することにより、不正が生まれる土壌ができる。沖縄県の採用試験で問題が続いているのも、教育行政に危険信号が灯っているということだろう。
 今後、大分県の問題を口実にして、文部科学省が各県の教育行政への管理を強化しようという動きが生まれそうだ。だが、それは逆効果でしかない。しょせんは教育行政の上下関係を強めるだけで、内輪の問題として矛を収めようというものだ。組織内で上の権限が強まれば強まるだけ、その上に対する買収が生じるのだ。
 大切なのは教育行政を市民に開かれたものにすることであり、教育委員の公選制を今こそやるべきだ。退職校長や教育行政に従順な人物で固めた形だけの教育委員会などもういらない。公選制によってやる気のある多様な人物が集まることによってはじめて、教育行政のチェック機能を果たすこともできる。
 チェック機能を果たせなかったという点では、労働組合の問題も問われる。行政と馴れ合って不正を糺す能力を欠如させた大分県教組は、保護者や市民から指弾されるだろう。それにきちんと対処できなければ自滅しかねない。そういう問題も含めて、今大分県で起こっている問題は、その県の特殊性はあったとしても、それだけでは収まらない問題を投げかけているはずだ。

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