紙魚子の小部屋 パート1

節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物のあれこれ、家族漫才を、ほぼ毎日書いています。

シンプル&シュール

2008-09-28 23:39:35 | 読書
 子育てをしている中で、絵本にハマったことは大きな収穫だったが、子どもたちが2人とも決して手に取らなかった絵本がある。それはキライだったからではなく、「この絵本はぜーったい、浮「!!」と確信する絵柄だったからである。そして彼らの予感は見事に当たっていた。確かに、オバケや幽霊のお話が多い方なので、明らかに浮「話ではあるのだけれど、ストーリーや設定以前に、その表紙のシンプルな絵柄に、なみなみならないコワさを感じたのであろう。たとえば、これ!

子どもたちにウケようというより、「本気でコワいわよ!」と真剣勝負を挑んでいるような。一度見たら脳裏に焼き付いてしまい、忘れたくても忘れられないほどインパクトのある極度にシンプルな絵。そして「救いがない」(笑)けれど、透明感のある(やっぱり忘れられない)余韻を残すおはなし。

 でもどこか可愛らしく、あたたかく、ユーモラスなのは、きっとせなさんのお人柄が滲み出ているから。「子ども」が大好きで、なおかつ「子ども」を尊敬し、だからこそ、手加減なしの真剣勝負なのだ。

 それは、日本を代表する絵本作家であり、子どもたちにも絶大な人気を誇り、図書館での回転率が素晴らしい「せな けいこ」さんである。せなさんの絵本のムードは、まさしくオンリーワンな独自な世界である。あれだけシンプルな絵柄なのに、追従する人もいない。

 ふと、そんなせなさんのことが気になり、同僚の方に検索していただき、せなさんについて書かれたものを探していただく。『別冊太陽』の『絵本の作家たち3』がヒットしたので、せなさんのページを通勤電車の中でじっくりと読む。

 彼女は子どもの頃、武井武雄さんの絵本をひたすら愛読し、高校生の頃、ご招待もされていない作家さんのパーティに、受付で相当分の金額を払うので、と交渉してまんまと潜り込み、たまたましゃべった方が武井先生のお知り合いだったので、頼み込んで紹介していただくことになる。せなさんは1932年生まれ。現在80近いお年なのである。そんな昔にこんな大胆な女子高生がいたのだ。

 高校卒業後は銀行員をしながら、武井先生の弟子になる。明治/大正生まれの方達ばかりの中で、「おじょうちゃん」と呼ばれながら、厳しくも手厚い指導をしていただく。武井先生ばかりでなく、他のお弟子さんたちにも親切に仕込んでいただくことになる。基礎をみっちり仕込まれ、下絵は念入りで緻密に描き込んだりしなければならないが、本番描く段階では、ぎりぎりまで削ぎ落とし、最小限のものしか描かないとか。

 彼女がインタビューに答えていた中で、知り合いの方に言われた言葉が面白い。
「あなたに武井武雄の絵はかけないけれど、武井先生にも、あなたの絵がかけないのよ」。なるほど~。こういう発想の転換があるのか~。

 毎日毎日の生活をきちんとしていれば、最上級の作品ができるという、見本みたいなかたである。子どもたちとの生活、ウサギさんたちとの生活が、ネタの宝庫なのだった。相方は落語家なので、「おかみさん」でもあるのだ。残念ながら夫である柳亭燕路さんはすでにお亡くなりになられているが、ご存命時には「春の日だまりのような」(笑)二人三脚でのアットホームなご家庭だったに違いないと思う。

 絵本はコラージュの手法で作られるので、千代紙や包装紙は大事な商売道具。せなさんは、とくにお菓子の包装紙がお気に入りで「私にとっては箱の中身より、外側の紙が大事なんです」。だから、以前作った作品を新しいシリーズで作る時には、そのお菓子店の包装紙の有無で、主人公の服が同じ模様でできるかどうかが決まるというのだ。

 高級和紙店の紙より、お菓子の包装紙!! とても共感する話である。この話だけでも、せなさんが好きになる。

 しかし、あのシンプル極まりない絵が、武井武雄の弟子として、厳しい修行の果てに出現していたとは。そういわれてみれば、絶妙な輪郭である。

せな けいこのプロフィールをウィキより抜粋

(せな けいこ、本名:黒田 恵子、1932年 - )は、日本を代表する絵本作家の一人。

東京都に生まれる。お茶の水女子大学附属高等学校卒。武井武雄等に童画を師事。1970年に『いやだいやだの絵本』でサンケイ児童出版文化賞受賞。夫は、落語家の故 6代目柳亭燕路。

児童出版美術家連盟会員。

[編集] 主な作品

* 『いやだいやだの絵本』(福音館書店)
* 『あ~ん あ~ん』(福音館書店)
* 『もじゃもじゃ』(福音館書店)
* 『きれいなはこ』(福音館書店)
* 『いやだいやだ』(福音館書店)
* 『にんじん』(福音館書店)
* 『ねないこだれだ』(福音館書店)
* 『くずかごおばけ』(童心社)
* 『どうぐのおばけ』(童心社)
* 『おばけのかぞえうた』(草土文化社)
* 『となりのたぬき』(すずき出版)
* 『うさんごろとおばけ』(グランまま社)
* 『おばけにあったうさんごろ』(グランまま社) など多数。


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