紙魚子の小部屋 パート1

節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物のあれこれ、家族漫才を、ほぼ毎日書いています。

恋わずらい!?

2008-05-12 23:05:58 | アート
 いや、まさか、とは思うけれど、そんな可能性も垣間見える「KYOSAIあたり」。惚れたか!?と思うほどなのは、ずずずずずーん、と心にストレートに入って来たから。

 妖怪変化だろうが、恐ろしい幽霊だろうが、んなわけないやろ~!と突っ込みたくなるような大ボラの絵巻であろうが、地獄極楽の住人たちであろうが、動物さんたちであろうが、どんな絵にもリアルな臨場感に溢れているのだ。どんな架空の人や物も「そう!これよ、これ!」とまっすぐに理屈抜きに、あれこれ考える暇もなくすんなりと入って来るのだ。

 水に浮かぶ龍がくつろいでいるのをみても、困り顔の閻魔さまを見ても、オナラ合戦をする群衆を見ても、ビンボーでんねんと佇む貧乏神を見ても、なんの身構える事もなくすう~っと入ってくる。だってまるで見て来たように描いてあるんだもの。あの揺るぎない自信と、ベストを尽くした天才の技量をもってして出来る事。

 私が好きなのは彼の描く動物さんたちなんだけど、これがもう、一等チャーミングな仕草を選りすぐってメ[ズを付けてあり、動物好きなら身をよじってハートマークを飛ばしまくるのではないか、と思う。ほんと、可愛い。これは暁斎が、動物を仔細に観察するため、自宅に片っ端から動物を飼っていた賜物なのだろう。と共に動物さんたちへの尽きせぬ愛もね。

 徹底的な観察力は、東洋のレオナルド・ダ・ヴィンチか、と思うほど。気の済むまで観察したおしたので、鯉なんかもどの角度からだって、真正面で口開けてるのだってオーケー。完全に自分の物になるまで事細かに見たんだろうな、きっと。

 それから彼の絵のパトロンであった富豪の娘がわずか14歳で亡くなったとき、彼女を主人公にした代表作「地獄極楽めぐり図」が、すばらしく美しい。追善供養のために制作されたものだが、たつが御所車のような乗り物に乗って、地獄を通り過ぎ、閻魔さまなどどこ吹く風で、極楽に導かれ、金色に輝く仏さまになるまでが描かれているんだけど、その色合いなども14歳の少女に相応しいロマンチックな優しさに満ちている。
 これを見て親御さんはどれほどか慰められた事だろう。そのために、暁斎は自分の持っているすべてを投入したと思われる。悲嘆にくれる親心をなんとしても慰めたい!!という、ひたむきな思いがびしびしと伝わってくる感動的に美しい画帖である。

 思いも鰍ッない構図とかに度肝を抜かれたり、聖人の集合や大津絵キャラの集合などの遊び心にうきうきしたり、どえらい残虐な処刑画に慄然としたり(さすが国芳の弟子)、ぬうぼうとした化け猫に爆笑したり、凄惨な幽霊にぞぞっとしたり、四季がすべて入り込んだ風景の鰍ッ軸にうっとりしたり、可愛い動物たちを「よしよし」と愛でたり、それは忙しい。

 そして、江戸から明治に移り行く激動の時代を生きた、桁外れに器の大きい河鍋暁斎という人にも絵にも、どんどんはまり込んでゆくのである。 

 しかしなぜか図録でみても、河鍋暁斎の画はヌケガラでしかない。彼の画はホンモノを肉眼で見なければ、あの上手さや魅力は伝わらない。だからテレビや雑誌で彼の画をみても、全然興味が湧かなかったのだな。まさに一期一会のチャンスだったのだ。

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