<from Wikipedia>:
A racing bicycle made by Cyfac using shaped aluminum and dual carbon fiber chain- and seat-stays. It uses Campagnolo components.
"ROAD BICYCLE"
From Wikipedia, the free encyclopedia
A racing bicycle made by Cyfac using shaped aluminum and dual carbon fiber chain- and seat-stays. It uses Campagnolo components.A road bicycle is a bicycle designed for use primarily on paved roads, as opposed to off-road terrain. Sometimes road bicycle is used as a synonym for racing bicycle.
毎日一回、クリック応援を!
(人気ブログランキング)
* 長編小説『フォワイエ・ポウ』前号掲載分「全36回」、、
(回読ご希望の方は、こちらから入れます・・・)
------------------------------------------------
長編連載小説「フォワイエ・ポウ」6章
著:ジョージ青木
1(客のマナーと店の方針)-(6)
(4)-2
「ところでマスター、これ、少し、ドロップハンドルの幅が狭いのですが、ひょっとしたら女性用のハンドルじゃないですか?でも、サドルの高さは高い。というより、フレームそのものは長いのですから、女性用といったって、日本人向きではないし・・・」
「いや、これはね。半年前まで女性が乗っていたの。身長172センチの女性。大学病院の女医さんが乗っていた。実は、その女医さんに、一度は、プレゼントでこの自転車を差し上げたのです。その時に、ハンドルだけ替えた。だからハンドルは日本製ですよ。でも1年と半年前、なぜかアメリカに留学する事になったので、私がまた引き取った。その時のハンドルをそのまま使って、今も乗っているのです」
「エ~、その女医さん、マスターの彼女だったのか?」
熱心に自転車を眺めていた真理子は、上目使いに本田を覗き込んだ。
「違う違う!そりゃ美人で背が高くて、ステキな女性でしたよ。でも、彼女ではない。私はね、ステキな女性や美人は見慣れていますから、とっくに世界中で見ていますよ。ちょとやそっとで手当たり次第にね、とっかえひっかえ、あちらこちらの女性を好きになったりはしないよ!」
「へ~、マスター。世界中歩いているのか・・・」
決して驚いてはいない真理子は、本田の話に口裏を合わせた、間合い程度の言葉を喋る。そんな真理子の間合いに対し、さらに本田の話は続く。
「その女医さんね、私の以前の仕事の上得意さんだった。毎年、アメリカとヨーロッパで学会のある度に、海外出張された。彼女は国家公務員だから、担当官庁の許認可を取らなければ海外に出れないのさ。時に文部省、場合により厚生省に事前の許可を取って下さってくださった。そしてその後の手続きは、私の会社の本社の関係になる。つまり東京本社事業部に指名していただき、全国から参加する5~60人の医者や学者、さらに関連の企業人や研究者達が海外渡航する。そんな学会参加団体旅行全体の仕事を、我社を挙げて受け請うのです。大きな仕事ですよ。この周辺は私が担当していた。そんなこんなで、我が社全体、会社と全国の支店を挙げて、厚生省の仕事をもらっていた理屈になる。ずいぶんと、その女医さんにはお世話になっていたのですよ。だからプレゼントした」
「話は、いたって簡単です・・・」
簡単だと思っているのは、本田だけであった。
「ヘエ~、その女医さん、きっとマスターのフアンだったのよ。きっとそうだわ!」
「真理子さんよ、それとこれは違うよ。女医さんは家財道具や自転車を手放して裸一貫、仕事もやめて単身、留学と称してアメリカの婚約者のもとに旅立ったのだ。とにかく、それ、真理子さん誤解だよ。まったく、あなたって云う人は、初めて会った私に対して遠慮もなく、しかも唐突に、まして、ぶっきらぼうに、そしてこの真夜中に。いや、もう明け方か?朝っぱらから、何を云い出すやら・・・」
「マスター、若し、私がこの自転車ほしいといったら、私に下さいますか?」
さらに唐突な真理子の質問に、本田は即答した。
「あ~、いいですよ」
本田の発言に驚いたのは真理子だった。
竹本は、一言一句逃さずに2人の話を聴いていた。本田と真理子、その2人の会話の始まった時点から、竹本の頭の中は真っ白になっていた。
一瞬、次の言葉を失っていた真理子に対し、本田は、さらに畳み掛けた。
「若し、よかったら、今夜このまま乗って帰りますか?」
和風的な端正さ、しかも左右対称、何の特徴もない能面のような、いや、コケシのような小さな面持ち。真理子の無表情な目は輝き、突如として大きく見開いた。そして再び、こけしの目のように点になって、動かなくなった。
「ほんとにいいのですか?」
「あ、いいよ・・・」
「ほしいほしい、今から乗って帰る!今日、いまから絶対に乗って帰る・・・・!」
「ちょっと待ってくれよ、真理子さん。ライトの電池を取り替えておこう」
本田はわざわざ店に戻り、新品の単一乾電池二本を持ち出し、自転車のランプにくっ付いていた古い電池と取り替えた。
「それから、これが自転車の鍵。キーチェーンの番号は・・・」
「ちょっと待ってください、マスター」
真剣な口調で、竹本が口を挟んだ。
「真理子さん、失礼ですが、自宅まで何分かかりますか?」
「竹ちゃん、どうしてそんな事聞くの? そうね、20分位かかるかな・・・」
「あの、マスター、もうこの時間ですから、女性が自転車に乗って帰るのは危ないです。お昼間に帰らないと、やばいです。それから、今夜はエレベーターが動かないから、階段を自転車もって下りるの、たいへんですよ。俺は手伝いませんよ」
全員、沈黙した。が、本田が口を切った。
「竹ちゃん、ありがとう。よくわかった、やはり今夜は危険だな、止めとこう」
「・・・」
「よし、自転車は、今夜のところは店に入れておこう。私はタクシーで帰る。みんなタクシーで帰るでしょう」
「・・・」
「この自転車の鍵一式、竹ちゃんに預けておこう。真理子さんたちも竹ちゃんも、来週の日曜日に、またいらっしゃい。その時に竹ちゃんから真理子さんにこの鍵を渡してくださいよ・・・」
今度は竹ちゃんが目を丸くした。
その瞬間、真理子が大声で笑いはじめた。
「マスター、ありがとうございます。来週日曜日まで竹ちゃんに鍵預かってもらいます。次の日曜日も、またお店に参ります」
本田は、ホッとした。
「真理子さん、ありがとう。この自転車、中古だけどまだしっかりしているからね。でも、そろそろタイヤをとっ替えないと、かなりちびてますよ。そろそろパンクの危険あり!この手のタイヤは、高いよ。だいじょうぶか?」
「わかってます。タイヤ替えると、前後輪の2本で4~5万はかかります。だいじょうぶです。この自転車を買ったとおもえば安い安い・・・」
「わかった、タイヤがパンクする前に、新しいタイヤ買って取り替えるか? 私に約束できますか?」
本田は微笑みながら真理子に問いかける。
「約束します」
「OK! じゃ、これで決まり。真理子さんにこの自転車プレゼントしよう!」
「ありがとうございます。でも、すこし寂しくなるなあ~・・」
真理子が意外な発言をした。
「どういう意味なの、まりこさん・・・」
本田が理由を尋ねた。
「もう2~3年になるかな~、実は、隣のおでん屋に寄っています。もちろんウイークデーに・・・」
「ウム、なるほど」
「フォワイエ・ポウの入り口に電気が灯り、お店の中から音楽が聞こえてくる。以前はモダンジャズ、このところは誰かカラオケを歌っている音が聞こえ始めた。そしてこの赤い自転車が入り口の左側に立てかけてあるの、最近になって気が付きました」
「・・・」
「入り口ドアは、深みのあるネイビーブルーの1色だけ。お店の名前は白銀色のぶち抜きで、いかにもクール。バランスが良い。さらに左側に、真紅のフレームの高級自転車がさりげなく立てかけられている。紺碧の海の色と真紅の自転車の色。力強くてお洒落、とにかくバランスがいいのです」
真理子の会話をぬって竹ちゃんが質問する。
「なに、なぜ、何のバランスがいいの?」
「色のバランスが好い、竹ちゃん見てごらんよ。入り口の濃紺は、キャンバスの大半を占める、そのキャンバスの右上にある白銀の店のシンプルな飾り文字。さらにやや左下の自転車の三角フレームの真紅。右下の真紅の背景は、このビルの壁の色。その壁って、薄い山吹色じゃないの。もう完全に、構図は完成しているの。最高よ・・・」
「・・・」
「これ、絵になると思わない?」
真理子は、フォワイエ・ポウの入り口付近を自分の視野と視界で切り取って、大きな絵画のキャンバスを想像している。
とっさに気が付いた本田、
「そういえば、そうだよな・・・」
真理子は本田を見上げながら、
「そうでしょう、マスター。これは絵になっています!」
本田は、初めて気が付いた。
(そういえば、絵になる。絵になっている。真理子の審美眼には恐れ入った・・・)
「だから、私が、自転車を持っていくと、この絵のバランスが崩れるのだ・・・」
本田はますます、そんな感性の持ち主である真理子に自転車をプレゼントする気になった。
自分の「持ち物」を褒めてくれる人間がいれば、喜んでその人間に与えてしまう、そんな本田の悪癖は、再び蘇ってきた。
「この絵のバランスが崩れても、いっこうに構わない。その崩れたアンバランスは、真理子さんが来店してくれる事で修正できる。新しい自転車の持ち主が、しょっちゅうここに顔を出せばいい。持ち主が現れると、それで十分にバランスは取れる。それでいいじゃないか!」
「マスター、すてきです。そんな風に解釈してくださるなんて、私、うれしくてたまりません。今夜眠れないな~・・・」
「眠らなくても、もう朝だよ、真理子さん。でも、自転車大切にして、かわいがってください。私が持っているよりも真理子さんが持ち主になった方が、よく似合う。自転車も、そのほうがいい。喜ぶと思うよ」
「ありがとうございます!」
二人の会話を聞いていた竹ちゃんは直立不動のまま、彼の目だけが輝いていた。が、今夜の竹ちゃんの目は、なぜか、まばたきの回数が多かった。
竹ちゃんは店仕舞いする本田を手伝った。
自転車のフェラーリは、竹ちゃんの手によってフォワイエ・ポウの店内フロアーに運び込まれた。
「エ~ マスター、この自転車こんなに軽いんですか? 見てください。僕の小指だけで、持ち上げられる・・・」
「そう、自転車の重量は、8キロもないでしょう。ペダルに足を置いているだけで、何もしなくていい。べつだん、足に力入れなくても、ペダルに乗せた両足の重みだけで十分。この自転車なら、するすると前に進み始めるよ・・・」
「へ~、そんなものなのか・・・」
竹ちゃんは一人、はしゃいでいた。
おしゃべりの疲れが出たのか、真理子と連れの若い女性の2人は、おとなしくなっていた。しかし真理子の細長い目は、くりくりと輝いていた。そして、なぜか神妙であった。
店のドアの鍵を閉め、一同賑やかに非常階段を下りて雑居ビルの外に出た。
ようやく解散した。
空を見上げれば、先ほどまで真っ暗だった夜空を見上げれば、すでに東の方向から夜明けの気配がする。
(あ~ 長い日曜日だった。でも、楽しかった・・・)
独り言をつぶやきながら、
(今から30分かけて自宅に帰ってもしかたない。まして、タクシーなんてこの時間つかまりゃしない。こうなったら事務所で仮眠するか。事務所まで歩くか・・・)
一歩一歩の歩幅は広いけれど、しかし、ゆっくりとした足取りで、本田は事務所に向かって歩き始めた。
さわやかな五月中旬の早朝、まだ日の出の時間までの間合いは、ある。
早い朝のこの時間、排気ガスで汚れる前の時間帯である。水気のないクラッカーのように清々しく乾いた、初夏の朝の空気感。さわやかな空気を胸いっぱいに吸い込む。本来、人がいるはずの場所に、全く人の気配のしない殺風景な繁華街を通り抜ける本田の姿があった。
<6章・完>
(次回7章に続く)
*人気ブログランキング参加中!
人気blogランキングへ
* 長編小説『フォワイエ・ポウ』の過去掲載分、「全36回」、、
(ご参照希望の方、こちらから入れます!)