はるかいにしえの時代、シューティングの自機の選択はできなかった。
コインを投入すると、自動的に自機が割り当てられた。
いつのころからか、そうではないものが現れ始めた。
複数の自機のなかから、おのれの良しとする性能をもつ機体を選択できるようになったシューティングが現れた。
始祖はなになのかまでは知らないが、アイテムによるショット変更ではなく最初から自機を選択するタイプのものはグラディウスIIが始祖かもしれない。
自機の選択の可能なシューティングにおいて、ひとつの定番が生まれた。
広い範囲にショットを打て移動速度が速く、そのかわり前方への攻撃力が弱いタイプ。
仮に広範囲タイプと言おう。
ショットは前方に集中していて攻撃力が強く、そのかわり横や斜め方向にショットが打てず移動速度が遅いタイプ。
仮に集中タイプと言おう。
ここで注目したいのは移動速度である。
集中タイプほうが攻撃力が強い。したがって移動速度が遅いというハンデがあることで広範囲タイプと釣りあう性能になるはずである。
・・・と設計される場合が多かった。
しかし!
この設計は間違いだったと気付かされる。
ちゃんと調査はしていないが、はじめてこの設計コンセプトを覆したのは恐らくケイブの首領蜂、および続編にてコンセプトの完成をみた怒首領蜂ではなかろうか。
首領蜂や怒首領蜂は東亜系とよばれる弾幕避けのシューティングであり、製作元のケイブは東亜系の直系子孫である。
これら東亜系シューティングはとにかく弾が多い。
だから弾を吐き出すザコキャラを早々に退治できたほうが有利なことが多い。
したがって広範囲タイプが有利になりがちとなる。
しかし集中タイプにも魅力が無くてはならない。
よって、集中タイプには広範囲タイプより速い移動速度が与えられた。
シューティングのセオリーが覆った瞬間だ。
この大転換には、われわれシューターには当初思いもよらぬ旨みをもたらした。
1~2面あたりの最初のほうのステージでのクリアを優先するなら、ザコキャラを退治しやすく、また移動速度が適度に遅くて弾幕を避けやすい広範囲タイプ(怒首領蜂ではCタイプ)が有利である。
もちろんこれは不慣れなころの話だ。
腕前が上がってくると、集中タイプ(怒首領蜂ではAタイプ)の魅力があらわになってくる。
広範囲タイプではなかなか倒せない硬い敵を瞬殺でき、そして画面を大きく動いて反対側のザコキャラも瞬殺する、そんなスタイルをとることができる。
いわば
「蝶のように舞い、蜂のように刺す」
式の戦いかただ。
実際やってみなければわからないのだが、この戦いのスタイルは実に弾避けが心地よい。
広範囲タイプしか扱えないプレイヤーにとっては理解するすべの無い、集中タイプ使いにのみ与えられた楽しさだった。
見るものにも、敵に弾を撃たせ、そのうえで弾幕を縫うようにして超絶技巧で回避するそのプレイは、広範囲タイプでは得がたい美しさを獲得した。
どちらが強いかはともかく、後々の時代までシューターの多くにこの集中タイプが愛されることになった。
もちろん、いくら集中タイプが楽しいとはいえ、集中タイプのみ難易度が上がってしまってもバランスが悪い。
だから首領蜂においては、遅い広範囲タイプでは避けにくい、広範囲タイプ特有の難所がいくつか用意された。
これによりバランスが取れ、バランス調整についての方法論が完成した・・・かのように思われた。
ところが!
続編の怒首領蜂ではそのバランス調整がくつがえることになる。
道中のほぼ全てのあらゆるところで広範囲タイプが有利になった。
攻略に関しては、集中タイプはあらゆる意味で不利になった。
集中タイプ使いのシューターでさえ、クリア優先ならば広範囲タイプを使うべし、と言わざるを得なくなった。
これについての白熱した議論が展開された。
なぜ、わざわざクリアしにくい集中タイプが継続して用意され、そして前作の首領蜂のような広範囲タイプ特有の難所がなくなったのか。
長い長い討議の末、われわれシューターは一つの結論に到達する。
蝶のように舞い、蜂のように刺す、この集中タイプのスタイルは実に楽しく美しい。
しかし広範囲タイプより弾幕が濃くなり、攻略は実に困難である。
それでもなお、われわれは集中タイプを使いつづける。
なぜならば、集中タイプ使いであるわれわれは、濃い弾幕を避けることのでき、そして集中タイプにのみ許された楽しさを知ることのできる、自らの腕前を誇りとするからだ!
だからわれわれは集中タイプの難易度上昇を肯定しよう!!
・・・と。
だが、これには1つの悪い側面が発生した。
集中タイプ使いであることはシューターにとっての誇りとなった。
だから、広範囲タイプを使うものを見下すものがあらわれた。
広範囲タイプはチキンだと影でののしられる事態にまで発展した。
シューティングは自らのサイフから捻出したコインを投入し、そして自分だけで遊ぶゲームである。
だから他人からチキンだとか言われる筋合いはない。
みずからの美学に照らし合わせ、みずからがそれを選択しなければ良いだけのことで、他人に干渉すべきではないのは明白だ。
その後、ゲーセンから新しいゲームが入ると同時に古いゲームが引退していき、シューティングが少しづつ代替わりしていくようになり、いつしかチキン論争を聞くことはなくなったことで自然に解決することになる。
いまでは、ときおり怒首領蜂大復活にてAタイプをつかうとき、かつて怒首領蜂の到達したシューティング哲学、そのスタイルに熱狂した当時のわれわれの熱き魂を思いだすのみとなったのであった。
コインを投入すると、自動的に自機が割り当てられた。
いつのころからか、そうではないものが現れ始めた。
複数の自機のなかから、おのれの良しとする性能をもつ機体を選択できるようになったシューティングが現れた。
始祖はなになのかまでは知らないが、アイテムによるショット変更ではなく最初から自機を選択するタイプのものはグラディウスIIが始祖かもしれない。
自機の選択の可能なシューティングにおいて、ひとつの定番が生まれた。
広い範囲にショットを打て移動速度が速く、そのかわり前方への攻撃力が弱いタイプ。
仮に広範囲タイプと言おう。
ショットは前方に集中していて攻撃力が強く、そのかわり横や斜め方向にショットが打てず移動速度が遅いタイプ。
仮に集中タイプと言おう。
ここで注目したいのは移動速度である。
集中タイプほうが攻撃力が強い。したがって移動速度が遅いというハンデがあることで広範囲タイプと釣りあう性能になるはずである。
・・・と設計される場合が多かった。
しかし!
この設計は間違いだったと気付かされる。
ちゃんと調査はしていないが、はじめてこの設計コンセプトを覆したのは恐らくケイブの首領蜂、および続編にてコンセプトの完成をみた怒首領蜂ではなかろうか。
首領蜂や怒首領蜂は東亜系とよばれる弾幕避けのシューティングであり、製作元のケイブは東亜系の直系子孫である。
これら東亜系シューティングはとにかく弾が多い。
だから弾を吐き出すザコキャラを早々に退治できたほうが有利なことが多い。
したがって広範囲タイプが有利になりがちとなる。
しかし集中タイプにも魅力が無くてはならない。
よって、集中タイプには広範囲タイプより速い移動速度が与えられた。
シューティングのセオリーが覆った瞬間だ。
この大転換には、われわれシューターには当初思いもよらぬ旨みをもたらした。
1~2面あたりの最初のほうのステージでのクリアを優先するなら、ザコキャラを退治しやすく、また移動速度が適度に遅くて弾幕を避けやすい広範囲タイプ(怒首領蜂ではCタイプ)が有利である。
もちろんこれは不慣れなころの話だ。
腕前が上がってくると、集中タイプ(怒首領蜂ではAタイプ)の魅力があらわになってくる。
広範囲タイプではなかなか倒せない硬い敵を瞬殺でき、そして画面を大きく動いて反対側のザコキャラも瞬殺する、そんなスタイルをとることができる。
いわば
「蝶のように舞い、蜂のように刺す」
式の戦いかただ。
実際やってみなければわからないのだが、この戦いのスタイルは実に弾避けが心地よい。
広範囲タイプしか扱えないプレイヤーにとっては理解するすべの無い、集中タイプ使いにのみ与えられた楽しさだった。
見るものにも、敵に弾を撃たせ、そのうえで弾幕を縫うようにして超絶技巧で回避するそのプレイは、広範囲タイプでは得がたい美しさを獲得した。
どちらが強いかはともかく、後々の時代までシューターの多くにこの集中タイプが愛されることになった。
もちろん、いくら集中タイプが楽しいとはいえ、集中タイプのみ難易度が上がってしまってもバランスが悪い。
だから首領蜂においては、遅い広範囲タイプでは避けにくい、広範囲タイプ特有の難所がいくつか用意された。
これによりバランスが取れ、バランス調整についての方法論が完成した・・・かのように思われた。
ところが!
続編の怒首領蜂ではそのバランス調整がくつがえることになる。
道中のほぼ全てのあらゆるところで広範囲タイプが有利になった。
攻略に関しては、集中タイプはあらゆる意味で不利になった。
集中タイプ使いのシューターでさえ、クリア優先ならば広範囲タイプを使うべし、と言わざるを得なくなった。
これについての白熱した議論が展開された。
なぜ、わざわざクリアしにくい集中タイプが継続して用意され、そして前作の首領蜂のような広範囲タイプ特有の難所がなくなったのか。
長い長い討議の末、われわれシューターは一つの結論に到達する。
蝶のように舞い、蜂のように刺す、この集中タイプのスタイルは実に楽しく美しい。
しかし広範囲タイプより弾幕が濃くなり、攻略は実に困難である。
それでもなお、われわれは集中タイプを使いつづける。
なぜならば、集中タイプ使いであるわれわれは、濃い弾幕を避けることのでき、そして集中タイプにのみ許された楽しさを知ることのできる、自らの腕前を誇りとするからだ!
だからわれわれは集中タイプの難易度上昇を肯定しよう!!
・・・と。
だが、これには1つの悪い側面が発生した。
集中タイプ使いであることはシューターにとっての誇りとなった。
だから、広範囲タイプを使うものを見下すものがあらわれた。
広範囲タイプはチキンだと影でののしられる事態にまで発展した。
シューティングは自らのサイフから捻出したコインを投入し、そして自分だけで遊ぶゲームである。
だから他人からチキンだとか言われる筋合いはない。
みずからの美学に照らし合わせ、みずからがそれを選択しなければ良いだけのことで、他人に干渉すべきではないのは明白だ。
その後、ゲーセンから新しいゲームが入ると同時に古いゲームが引退していき、シューティングが少しづつ代替わりしていくようになり、いつしかチキン論争を聞くことはなくなったことで自然に解決することになる。
いまでは、ときおり怒首領蜂大復活にてAタイプをつかうとき、かつて怒首領蜂の到達したシューティング哲学、そのスタイルに熱狂した当時のわれわれの熱き魂を思いだすのみとなったのであった。