某TV局が解説するところのトルコ軍のシリア北部クルド人居住地域への軍事侵攻の解説だが、腹たつほどテキトーなので、ここでTV局が解説しないようなことを解説したいと思う。
トルコ軍のシリア北部クルド人居住地域への軍事侵攻だが。
これ、そもそも発端は何か?
アメリカはISをシリアから追い出したい。
でもシリアの正統な政権であるアザドは大嫌い。
そして自国の兵士を最前線に立たせて死なせたくない。
ということで、なんだかんだあった末にクルド人と組んでクルド人が最前線で歩兵として戦うことになった。
最近あちこちで放送されているが、クルド人というのは、シリアとトルコとイラクの間あたりに分布している人たちで、クルド人国家というのは存在しない、というのはみなさんご存じのところだろう。
クルド人の一部はトルコでもシリアでも独立運動と称してテロ活動しているヤツらがいる。
トルコのエルドアン政権やシリアのアザド政権からすればクルド人の武装自衛集団なんぞテロリストと何ら変わらない。
実際、トルコやシリアの国内で治外法権化しているのだから、半分領土を侵犯されているようなものである。
アメリカはこの状況を利用した。
アメリカはどうやらクルド人に、ISを追い出せば自分たちの国だか自治だかを認めてやるっぽいことをほのめかしていた模様。
そりゃークルド人がんばりますわ。
実際、クルド人は超がんばった。
おかげでISはシリアからはほぼ一掃された。
そしたらトランプは、ISがいなくなって用事がすんだからシリアから撤退すると言いだした。
アメリカがシリアからいなくなったら、北はトルコ軍から、南はロシア軍のバックアップを得たシリア正規軍から、挟み撃ちでフルボッコにされる。
そうなるとクルド人の国だか自治だかなんてのは実現される見込みは厳密に0%まで完全に消えてなくなる。
マティス国防長官(当時)は
「俺がそんな二枚舌の不義理を働いたことにされるのはゴメンだ」
といって辞めようとした。
そうしたところ、なんとトランプに先に首を切られた。
というのが真相だ。
で、今。
米軍がシリアから撤退した。
トルコ軍は速攻でシリア北部クルド人居住地域への軍事侵攻を開始した。
いままではトルコ国内でテロリストを殲滅しようとも、ちょっと攻撃すればすぐ越境してシリア側に逃げて手が出せなくなる、なんてことになっていたのは間違いなかろう。
クルド人の武装集団を壊滅させる千税一隅のチャンスというわけだ。
ここまでは我輩の予想がまんまアタリ。
しかし外れたところがある。
トルコのエルドアン政権は最近アメリカと仲が悪くなりつつあった。
シリアのアザド政権はアメリカとは仲が超悪い。
トルコのエルドアン政権は最近ロシアとわりと仲が良い。
シリアのアザド政権はロシアと超仲良し。
しかし、トルコとシリアは仲が良くない。
シリア国内のクルド人がトルコにいってテロ活動してもアザド政権は知らんがなを突きとおす。
そりゃートルコもイラッとしますわ。
アザド政権は南でも同じことをやっている。
シリア国内のイランから支援を受けたテロリスト集団ヒズボラがイスラエルにいってテロ活動してもアザド政権は知らんがなを突きとおす。
イスラエルはナメられるのを超嫌うので、ときどきシリアを領空侵犯してヒズボラの拠点を爆撃するだとかしている。
もちろんイスラエルとシリアは仲が良くない。
トルコとシリアの関係とよく似てますわ。
……という状況から、シリア国内に来たトルコ軍を迎撃するために、シリアのアザド政権はクルド人と手を組むようだ。
これは予想外だな。
これからは?
アメリカはトルコに制裁すると言っている。
本来、トランプの持ち味は何するかわからん狂人的なところだったのだが。
しかし。
ガチ強硬派のボルトンやバノンを相次いで解雇したことから、どうやらこいつ思ったよりチキンなんじゃないか説がまことしやかにささやかれている。
つまり、アメリカはトルコには軍事攻撃しない。
アメリカはトルコに金融制裁するにとどまる。
トルコは軍事攻撃されるか金融制裁されるかにかかわらず、ロシアの側へ行く。
中国/ロシア/イラン/北朝鮮/ベネズエラの反米同盟にトルコが加わるという寸法だ。
そのうち韓国も加わるのだろうが、まあそれは置いといて。
ロシアとしてはパーフェクトゲームである。
なぜか?
それはまず、ロシアの目的から説明しなければならない。
ロシアの目的は何か?
ロシアはもう、アメリカとガチの軍事力で対抗する気がない。
ロシアのGDPなんぞ韓国くらいなんだから、まあそりゃー、冷静に考えればそんなもんだろう。
我輩が推測するに、ロシアの目的は、自分の手は使わずに、なるべくアメリカが介入しなければならない状況を世界各地で起こして、アメリカの軍事費や人的リソースを浪費させることにあるのではないか、という気がしている。
その観点からすれば、ロシアとしてはパーフェクトゲームであると先に書いた意味が何となくお分かりいただけるだろう。
自分の手は使わずにトルコを手に入れたのだから。
ギリシャの対岸にロシア製のミサイルが配備されたらどうすんのよっと。
実際、ロシアは正攻法によるシリアへの軍事介入を前よりしにくくなっている。
前にシリアに持って行った1隻しかない空母の近代化改修にしくじって事故で再起不能にしてしまった。
これは当blogで紹介したことありますな。
また、ロシアの命綱である原油価格は、もう1ドル70ドルに戻る気配は感じられない。
ロシアは財政が厳しいので、軍事費を削減している。
ということは、ますます大きな声では言えない方法でアメリカと対峙していくということだ。
ロシアはトルコを取ったらどんなメリットがあるか?
もともとロシアはウクライナ経由でガスを送るパイプラインを持っていた。
しかし、どっかの半島の大統領よろしく反露しかしないウルトラ無能な大統領(当時)のせいで、ウクライナのパイプラインは機能しなくなった。
ウクライナは寝てても儲かるパイプラインの通過料と、ガスをチョロまかしても目を瞑ってもらえたロシアの寛大さを失い、経済が崩壊した。
いっぽうロシア。
黒海の東のほうから引っぱってくる輸送方法を失ったガス、これをどうするかというと。
ウクライナを経由せずにトルコを経由してヨーロッパに送るという寸法だ。
だからロシアはトルコを必要とする。
そしてウクライナはロシアからは完全に必要なくなる。
しかもウクライナは欧米からは
「あなたの理念は民主主義に基づいていて大変すばらしい!」
と口先介入だけもらっただけで、反露をしたのに見合う経済的な援助はほとんど何も得られなかった。
ウクライナにはますます未来がなくなる。
ロシアはこのウクライナの反露政権(当時)の樹立は欧米の裏工作によるものと考えている。実際そのフシもある。このあたりは当記事では書くのはやめにしておくが。
まあ、ロシアはトルコを欧米から奪うのはイーブンな貸し借りなしの関係に戻っただけだと考えるだろう。
わたしはもともとシリアが混沌と化したらトルコが増長するだろうと考えていた。
かつて当blogのどこかにもそう書いた気がする。
しかし別の形でトルコが増長する未来が実現してしまった。
トルコのエルドアンは「汎アラブ主義」なるものを掲げている。
これはアラブでいがみ合わないで連帯しようという意味では綺麗な話だが、実はそこにとどまらない。
トルコは、トルコが盟主となって他のアラブが従う形で汎アラブを実現すべきだと言っているに等しい。
そしてイラン。
イランはアラブ各国の少数派であるシーア派に裏から手を回すことでスンニ派政権各国を不安定化させて喜んでいる。
とくにイエメンとか。
そしてアラブが不安定化すればするほどトルコが増長しやすくなるのだ。
ではどうすればよかったか?
ちょっと前と同じく、たいして銭がかからない程度のわずかな人員の米軍だけをシリア北部に駐留させ、未来永劫そのままにしておけば、とりあえず現状維持はできた。
その銭も惜しんだトランプに勝算はあるのだろうか。
トルコ軍のシリア北部クルド人居住地域への軍事侵攻だが。
これ、そもそも発端は何か?
アメリカはISをシリアから追い出したい。
でもシリアの正統な政権であるアザドは大嫌い。
そして自国の兵士を最前線に立たせて死なせたくない。
ということで、なんだかんだあった末にクルド人と組んでクルド人が最前線で歩兵として戦うことになった。
最近あちこちで放送されているが、クルド人というのは、シリアとトルコとイラクの間あたりに分布している人たちで、クルド人国家というのは存在しない、というのはみなさんご存じのところだろう。
クルド人の一部はトルコでもシリアでも独立運動と称してテロ活動しているヤツらがいる。
トルコのエルドアン政権やシリアのアザド政権からすればクルド人の武装自衛集団なんぞテロリストと何ら変わらない。
実際、トルコやシリアの国内で治外法権化しているのだから、半分領土を侵犯されているようなものである。
アメリカはこの状況を利用した。
アメリカはどうやらクルド人に、ISを追い出せば自分たちの国だか自治だかを認めてやるっぽいことをほのめかしていた模様。
そりゃークルド人がんばりますわ。
実際、クルド人は超がんばった。
おかげでISはシリアからはほぼ一掃された。
そしたらトランプは、ISがいなくなって用事がすんだからシリアから撤退すると言いだした。
アメリカがシリアからいなくなったら、北はトルコ軍から、南はロシア軍のバックアップを得たシリア正規軍から、挟み撃ちでフルボッコにされる。
そうなるとクルド人の国だか自治だかなんてのは実現される見込みは厳密に0%まで完全に消えてなくなる。
マティス国防長官(当時)は
「俺がそんな二枚舌の不義理を働いたことにされるのはゴメンだ」
といって辞めようとした。
そうしたところ、なんとトランプに先に首を切られた。
というのが真相だ。
で、今。
米軍がシリアから撤退した。
トルコ軍は速攻でシリア北部クルド人居住地域への軍事侵攻を開始した。
いままではトルコ国内でテロリストを殲滅しようとも、ちょっと攻撃すればすぐ越境してシリア側に逃げて手が出せなくなる、なんてことになっていたのは間違いなかろう。
クルド人の武装集団を壊滅させる千税一隅のチャンスというわけだ。
ここまでは我輩の予想がまんまアタリ。
しかし外れたところがある。
トルコのエルドアン政権は最近アメリカと仲が悪くなりつつあった。
シリアのアザド政権はアメリカとは仲が超悪い。
トルコのエルドアン政権は最近ロシアとわりと仲が良い。
シリアのアザド政権はロシアと超仲良し。
しかし、トルコとシリアは仲が良くない。
シリア国内のクルド人がトルコにいってテロ活動してもアザド政権は知らんがなを突きとおす。
そりゃートルコもイラッとしますわ。
アザド政権は南でも同じことをやっている。
シリア国内のイランから支援を受けたテロリスト集団ヒズボラがイスラエルにいってテロ活動してもアザド政権は知らんがなを突きとおす。
イスラエルはナメられるのを超嫌うので、ときどきシリアを領空侵犯してヒズボラの拠点を爆撃するだとかしている。
もちろんイスラエルとシリアは仲が良くない。
トルコとシリアの関係とよく似てますわ。
……という状況から、シリア国内に来たトルコ軍を迎撃するために、シリアのアザド政権はクルド人と手を組むようだ。
これは予想外だな。
これからは?
アメリカはトルコに制裁すると言っている。
本来、トランプの持ち味は何するかわからん狂人的なところだったのだが。
しかし。
ガチ強硬派のボルトンやバノンを相次いで解雇したことから、どうやらこいつ思ったよりチキンなんじゃないか説がまことしやかにささやかれている。
つまり、アメリカはトルコには軍事攻撃しない。
アメリカはトルコに金融制裁するにとどまる。
トルコは軍事攻撃されるか金融制裁されるかにかかわらず、ロシアの側へ行く。
中国/ロシア/イラン/北朝鮮/ベネズエラの反米同盟にトルコが加わるという寸法だ。
そのうち韓国も加わるのだろうが、まあそれは置いといて。
ロシアとしてはパーフェクトゲームである。
なぜか?
それはまず、ロシアの目的から説明しなければならない。
ロシアの目的は何か?
ロシアはもう、アメリカとガチの軍事力で対抗する気がない。
ロシアのGDPなんぞ韓国くらいなんだから、まあそりゃー、冷静に考えればそんなもんだろう。
我輩が推測するに、ロシアの目的は、自分の手は使わずに、なるべくアメリカが介入しなければならない状況を世界各地で起こして、アメリカの軍事費や人的リソースを浪費させることにあるのではないか、という気がしている。
その観点からすれば、ロシアとしてはパーフェクトゲームであると先に書いた意味が何となくお分かりいただけるだろう。
自分の手は使わずにトルコを手に入れたのだから。
ギリシャの対岸にロシア製のミサイルが配備されたらどうすんのよっと。
実際、ロシアは正攻法によるシリアへの軍事介入を前よりしにくくなっている。
前にシリアに持って行った1隻しかない空母の近代化改修にしくじって事故で再起不能にしてしまった。
これは当blogで紹介したことありますな。
また、ロシアの命綱である原油価格は、もう1ドル70ドルに戻る気配は感じられない。
ロシアは財政が厳しいので、軍事費を削減している。
ということは、ますます大きな声では言えない方法でアメリカと対峙していくということだ。
ロシアはトルコを取ったらどんなメリットがあるか?
もともとロシアはウクライナ経由でガスを送るパイプラインを持っていた。
しかし、どっかの半島の大統領よろしく反露しかしないウルトラ無能な大統領(当時)のせいで、ウクライナのパイプラインは機能しなくなった。
ウクライナは寝てても儲かるパイプラインの通過料と、ガスをチョロまかしても目を瞑ってもらえたロシアの寛大さを失い、経済が崩壊した。
いっぽうロシア。
黒海の東のほうから引っぱってくる輸送方法を失ったガス、これをどうするかというと。
ウクライナを経由せずにトルコを経由してヨーロッパに送るという寸法だ。
だからロシアはトルコを必要とする。
そしてウクライナはロシアからは完全に必要なくなる。
しかもウクライナは欧米からは
「あなたの理念は民主主義に基づいていて大変すばらしい!」
と口先介入だけもらっただけで、反露をしたのに見合う経済的な援助はほとんど何も得られなかった。
ウクライナにはますます未来がなくなる。
ロシアはこのウクライナの反露政権(当時)の樹立は欧米の裏工作によるものと考えている。実際そのフシもある。このあたりは当記事では書くのはやめにしておくが。
まあ、ロシアはトルコを欧米から奪うのはイーブンな貸し借りなしの関係に戻っただけだと考えるだろう。
わたしはもともとシリアが混沌と化したらトルコが増長するだろうと考えていた。
かつて当blogのどこかにもそう書いた気がする。
しかし別の形でトルコが増長する未来が実現してしまった。
トルコのエルドアンは「汎アラブ主義」なるものを掲げている。
これはアラブでいがみ合わないで連帯しようという意味では綺麗な話だが、実はそこにとどまらない。
トルコは、トルコが盟主となって他のアラブが従う形で汎アラブを実現すべきだと言っているに等しい。
そしてイラン。
イランはアラブ各国の少数派であるシーア派に裏から手を回すことでスンニ派政権各国を不安定化させて喜んでいる。
とくにイエメンとか。
そしてアラブが不安定化すればするほどトルコが増長しやすくなるのだ。
ではどうすればよかったか?
ちょっと前と同じく、たいして銭がかからない程度のわずかな人員の米軍だけをシリア北部に駐留させ、未来永劫そのままにしておけば、とりあえず現状維持はできた。
その銭も惜しんだトランプに勝算はあるのだろうか。
トランプはチキンというか、戦争で金を使うのは損、と思っている感じもしますね。
アメリカは任務で死んだ兵士の家族への保障が大変手厚い、ということはアメリカは原子力空母1隻でも沈めてやれば5000人分の戦費になるので、もう財政上の理由から厭戦気分になって戦えんだろう、
なんて言ってるようですわ。
精神論でいうチキンなのか損得勘定からくるチキン風のふるまいなのかは微妙なところではありますが、チキンさをナメられているというのは一定の説得力があるように思います。