「ノーチラス号の船殻は宇宙金属スペースチタニウム、
透明部分は結晶構造の硬化テクタイト、
機関部はいっちばん丈夫な超硬ダイヤモンドファイバでできているの」
「すっごーい!」
ふしぎの海のナディア おまけ劇場 その3 にのっている船体構造の解説だ。
ナディアは1889年のパリ万博前後のお話である。
その当時すでにチタンは発見されてはいたが、チタン化合物(たぶん2酸化チタン)からチタンだけを分離して金属にすることはできなかった。
いまとなってはチタン装甲といっても
「うわ、高そう・・・」
というくらいのことでどうってこともないモノだ。
しかしナディアの世界では超ハイテク素材だったのだ。
鉄は強度があるがすごく重い。
アルミは軽いが強度がない。
チタン合金は強度があるうえにそこそこ軽い。
おまけにチタンは海水に対する耐食性が非常に高い。
だから、カネさえゆるせば船の外壁にはもってこいの素材だ。
ちなみにレアメタルだとか書いてあるものもあるが、精錬が難しいから高価なだけで、原材料そのものは純チタンの高価格にふさわしいほどレアではない。
ほとんどは精錬せずに2酸化チタンのまま塗料の原料として使っているくらいなのだ。
はなしを元にもどそう。
じつは驚いているジャンもすごい。
当時はおそらくチタンなんて全く注目されていなかったであろうし、高性能素材かどうかすらわかるすべがなかった。
チタンってなんだい? くらいの回答で十分なはずだが、これがすごいことを理解できるだけでかなりの化学に対する知識がある。
チタンがまともに実用化されるのは1950年代くらいからの話だ。
当時はアルミがハイテク素材だったのがせいぜいだろう。
さきのナディアの解説ではスペースチタニウムとある。
スペースチタニウムという素材は無いと思うが、少し考察してみたい。
チタンは酸素とくっつきやすい。
だから19世紀では2酸化チタンからチタンだけを分離することができなかった。
現代の精錬では酸素とくっつかないように、工程の後半で真空状態にして金属チタンをつくる。
難易度が高くて高価になるのもしかたない。
ここで良く考えてほしい。
地球上で精錬するから真空状態にしなければならないのだ。
宇宙空間で精錬したらもっと簡単ではあるまいか。
ノーチラス号のスペースチタニウムという名前も、きっと生産地を明示的に記した名称なのだろうという仮説もなりたつ。
(ようするに同じ鋼板でも新日鐵製とポスコ(韓国)製では同じあつかいを受けないのと同じことだ。)
もう1つ、材質について重要な手がかりがある。
ナディアの21話をみてほしい。
ガーゴイルの原子振動砲によって、ノーチラス号の装甲はバラバラに破壊されてしまった。
(この攻撃は音波とする説もあるが、エレクトラさんの発言によると「特殊な電波」となっているので音波ではない。)
まず誘導加熱かと考えてみる。
チタンは金属のなかではそこそこ電気抵抗が高いので誘導加熱に向いている。
すなわち、電波を当てて誘導加熱により装甲を破壊するとしたら、アルミ装甲よりもチタン装甲のほうが向いている。
偶然かもしれないが、ガーゴイルもけっこう頭がいい。
ところが!
誘導加熱により装甲を破壊するとしたら、高温で赤熱して溶解して破壊するか、もしくは熱応力の差により亀裂が入り破壊するかのどちらかであろう。
赤熱も溶解もしていないので前者の説はナシだ。
後者の説が正しそうにも思えるがそうでもない。
ノーチラス号の破壊モードを見てみるに、セメントを砕いたかのようにバリバリに破壊されている。
そもそも板金の破壊モードはこうはならないし、チタンは粘りがあるのでなおさらありえない。
後者の説も間違いなような気がしてきた。
じゃあ、つぎに共振周波数の電波を当てて破壊するという仮説を考えてみる。
加熱による破壊か、応力による破壊かはとりあえず置いておく。
チタンは導体だ。だから基本的には材料の形状や境界条件によって電磁気学的な共振周波数が決まるので、外壁装甲のチタンに共振する周波数の電波があるわけではない。
(酸素とかアンモニアとかだったら共振する周波数の電波はあるけどね。)
また、ガーゴイルの原子振動砲はパラボラアンテナにより放射されている。
パラボラアンテナは波長の数10倍以上の寸法を持たないと威力を発揮しない。
だから非常に波長の短い電波を放射していることになる。
ノーチラス号の外壁の板金が共振するような周波数ではない。
これも違う気がしてきた。
じつは!
おまけ劇場 その3 をよくよく見ると、これを解く手がかりが載っていた。
『スペース・チタニウム(5重ハニカム構造)』
という記述がなされているではないか。
チタンはハニカム構造の骨のところだけで、他のところは樹脂だかセラミックだかの金属より軽い材質で充填されていると思われる。
ということは、次のような仮説がなりたつ。
電波をハニカムのセルの1周が1波長になるような周波数にセットする。
ガーゴイルのパラボラアンテナで円偏波の電波を出す。
ハニカムのセルがアンテナになって電波を捉えてしまう。
チタンは導体損が大きいから電波のエネルギーが熱にかわる。
チタンが高温で赤熱して溶解して破壊するか、もしくは熱応力の差により亀裂が入り破壊する。
これならば、アニメにあったようなバラバラになるような破壊モードがなりたつ可能性がある。
ノーチラス号のハニカムがどれぐらいの目の細かさなのか知らんが、まあきっと電波の周波数帯はマイクロ波からサブミリ波くらいだと思われる。
たとえばハニカムのピッチが1cmで充填材がテフロンだとすると共振周波数は約6GHzとなる。
だからパラボラアンテナで放射するのはあながち間違ってはいない。
それにパラボラアンテナは本質的に広帯域なので、ノーチラス号のハニカムのピッチや充填材の材質が変わっていたとしても取り替えなくても対応できるかもしれない。
(ホーンアンテナのほうが良さそうな気もしないでもないが、まあそれはそれで。)
ハニカムは厚み方向の応力には恐ろしく強いが、横方向の強度にはびっくりするほど弱い。
だからガーフィッシュがぶつかってもヘコみもしないくせして、熱応力かなにかで横方向にひっぱる力が働いたらとたんにペキペキに割れてしまうかもしれない。
だからノーチラス号はあんなふうに破壊されたのだ。
まえに昭和飛行機工業のハニカムのサンプルをもらったことがある。
実際に触ってみたら聞きしに勝るすごさで、恐ろしく軽くて硬いのに驚いたし、厚み方向にはすげー硬いのに横方向にはフニャフニャなのにも驚いた。
ノーチラス号の外装のヒミツにせまるのにずいぶん長い考察が必要になってしまった。
ただ、兵器のなまえが原子振動砲になっているのと整合性がとれないのが唯一の矛盾点なんだけど・・・。
これについては、兵器の動作原理を知らない人がテキトーにつけた俗称だというコジツケにしたいのだがどうだろう(笑)。
透明部分は結晶構造の硬化テクタイト、
機関部はいっちばん丈夫な超硬ダイヤモンドファイバでできているの」
「すっごーい!」
ふしぎの海のナディア おまけ劇場 その3 にのっている船体構造の解説だ。
ナディアは1889年のパリ万博前後のお話である。
その当時すでにチタンは発見されてはいたが、チタン化合物(たぶん2酸化チタン)からチタンだけを分離して金属にすることはできなかった。
いまとなってはチタン装甲といっても
「うわ、高そう・・・」
というくらいのことでどうってこともないモノだ。
しかしナディアの世界では超ハイテク素材だったのだ。
鉄は強度があるがすごく重い。
アルミは軽いが強度がない。
チタン合金は強度があるうえにそこそこ軽い。
おまけにチタンは海水に対する耐食性が非常に高い。
だから、カネさえゆるせば船の外壁にはもってこいの素材だ。
ちなみにレアメタルだとか書いてあるものもあるが、精錬が難しいから高価なだけで、原材料そのものは純チタンの高価格にふさわしいほどレアではない。
ほとんどは精錬せずに2酸化チタンのまま塗料の原料として使っているくらいなのだ。
はなしを元にもどそう。
じつは驚いているジャンもすごい。
当時はおそらくチタンなんて全く注目されていなかったであろうし、高性能素材かどうかすらわかるすべがなかった。
チタンってなんだい? くらいの回答で十分なはずだが、これがすごいことを理解できるだけでかなりの化学に対する知識がある。
チタンがまともに実用化されるのは1950年代くらいからの話だ。
当時はアルミがハイテク素材だったのがせいぜいだろう。
さきのナディアの解説ではスペースチタニウムとある。
スペースチタニウムという素材は無いと思うが、少し考察してみたい。
チタンは酸素とくっつきやすい。
だから19世紀では2酸化チタンからチタンだけを分離することができなかった。
現代の精錬では酸素とくっつかないように、工程の後半で真空状態にして金属チタンをつくる。
難易度が高くて高価になるのもしかたない。
ここで良く考えてほしい。
地球上で精錬するから真空状態にしなければならないのだ。
宇宙空間で精錬したらもっと簡単ではあるまいか。
ノーチラス号のスペースチタニウムという名前も、きっと生産地を明示的に記した名称なのだろうという仮説もなりたつ。
(ようするに同じ鋼板でも新日鐵製とポスコ(韓国)製では同じあつかいを受けないのと同じことだ。)
もう1つ、材質について重要な手がかりがある。
ナディアの21話をみてほしい。
ガーゴイルの原子振動砲によって、ノーチラス号の装甲はバラバラに破壊されてしまった。
(この攻撃は音波とする説もあるが、エレクトラさんの発言によると「特殊な電波」となっているので音波ではない。)
まず誘導加熱かと考えてみる。
チタンは金属のなかではそこそこ電気抵抗が高いので誘導加熱に向いている。
すなわち、電波を当てて誘導加熱により装甲を破壊するとしたら、アルミ装甲よりもチタン装甲のほうが向いている。
偶然かもしれないが、ガーゴイルもけっこう頭がいい。
ところが!
誘導加熱により装甲を破壊するとしたら、高温で赤熱して溶解して破壊するか、もしくは熱応力の差により亀裂が入り破壊するかのどちらかであろう。
赤熱も溶解もしていないので前者の説はナシだ。
後者の説が正しそうにも思えるがそうでもない。
ノーチラス号の破壊モードを見てみるに、セメントを砕いたかのようにバリバリに破壊されている。
そもそも板金の破壊モードはこうはならないし、チタンは粘りがあるのでなおさらありえない。
後者の説も間違いなような気がしてきた。
じゃあ、つぎに共振周波数の電波を当てて破壊するという仮説を考えてみる。
加熱による破壊か、応力による破壊かはとりあえず置いておく。
チタンは導体だ。だから基本的には材料の形状や境界条件によって電磁気学的な共振周波数が決まるので、外壁装甲のチタンに共振する周波数の電波があるわけではない。
(酸素とかアンモニアとかだったら共振する周波数の電波はあるけどね。)
また、ガーゴイルの原子振動砲はパラボラアンテナにより放射されている。
パラボラアンテナは波長の数10倍以上の寸法を持たないと威力を発揮しない。
だから非常に波長の短い電波を放射していることになる。
ノーチラス号の外壁の板金が共振するような周波数ではない。
これも違う気がしてきた。
じつは!
おまけ劇場 その3 をよくよく見ると、これを解く手がかりが載っていた。
『スペース・チタニウム(5重ハニカム構造)』
という記述がなされているではないか。
チタンはハニカム構造の骨のところだけで、他のところは樹脂だかセラミックだかの金属より軽い材質で充填されていると思われる。
ということは、次のような仮説がなりたつ。
電波をハニカムのセルの1周が1波長になるような周波数にセットする。
ガーゴイルのパラボラアンテナで円偏波の電波を出す。
ハニカムのセルがアンテナになって電波を捉えてしまう。
チタンは導体損が大きいから電波のエネルギーが熱にかわる。
チタンが高温で赤熱して溶解して破壊するか、もしくは熱応力の差により亀裂が入り破壊する。
これならば、アニメにあったようなバラバラになるような破壊モードがなりたつ可能性がある。
ノーチラス号のハニカムがどれぐらいの目の細かさなのか知らんが、まあきっと電波の周波数帯はマイクロ波からサブミリ波くらいだと思われる。
たとえばハニカムのピッチが1cmで充填材がテフロンだとすると共振周波数は約6GHzとなる。
だからパラボラアンテナで放射するのはあながち間違ってはいない。
それにパラボラアンテナは本質的に広帯域なので、ノーチラス号のハニカムのピッチや充填材の材質が変わっていたとしても取り替えなくても対応できるかもしれない。
(ホーンアンテナのほうが良さそうな気もしないでもないが、まあそれはそれで。)
ハニカムは厚み方向の応力には恐ろしく強いが、横方向の強度にはびっくりするほど弱い。
だからガーフィッシュがぶつかってもヘコみもしないくせして、熱応力かなにかで横方向にひっぱる力が働いたらとたんにペキペキに割れてしまうかもしれない。
だからノーチラス号はあんなふうに破壊されたのだ。
まえに昭和飛行機工業のハニカムのサンプルをもらったことがある。
実際に触ってみたら聞きしに勝るすごさで、恐ろしく軽くて硬いのに驚いたし、厚み方向にはすげー硬いのに横方向にはフニャフニャなのにも驚いた。
ノーチラス号の外装のヒミツにせまるのにずいぶん長い考察が必要になってしまった。
ただ、兵器のなまえが原子振動砲になっているのと整合性がとれないのが唯一の矛盾点なんだけど・・・。
これについては、兵器の動作原理を知らない人がテキトーにつけた俗称だというコジツケにしたいのだがどうだろう(笑)。
それだけ思ってくだされば書いたかいもあったというもんです。
というか貴方も調査内容からしてかなりのガチ勢なのでは…?