トランプの統治する世界(1)
http://blog.goo.ne.jp/beamtetrode350b/e/7fcebaf6126321b25c577d41cb2de477
・・・つづき
前回はトランプ登場前夜のアメリカの国内情勢についてだった。
では今回はトランプ登場前夜の世界情勢から記ししたい。
現在のアメリカは、イラク戦争の後遺症をひきずっている。
それは兵士の身体的/精神的後遺症の話ではない。
政治的な話である。
もともとアメリカは、湾岸戦争まではベトナム戦争の後遺症をひきずっていた。
それが湾岸戦争賛成で世論が一致したとき、ネオコンは
「ついに我が国はベトナム戦争の後遺症から脱したのだ!」
と喜んだ。
だがけっきょくはイラク戦争により同じ後遺症にまた苦しむのであった。
では、イラク戦争の後遺症とは何か?
他国に軍事介入して足抜けできない泥沼にハマり、兵士の人命と国防費ばかりかかり何の成果もあげられないことである。
・・・ということで、アメリカの世論は、イラク戦争は失敗だったとなっている。
ではなぜ失敗したのか?
旧来の統治機構を完全に破壊し、イラクを直接統治しようとしたからだ。
もともとアメリカはイギリスから派生した国である。
そのイギリスはこれまでどういう外交を行ってきたかご存じだろうか?
イギリスは、対立する2国があるとき、なるべく自分は矢面に立たず、弱いほうに加担し、膠着状態にすることで、漁夫の利を得る。
それを最も得意としてきた。
じつはアメリカもその流れをくむ。
超大国アメリカといえど、世界各地を直接統治するほどの力はない。
そこで、なるべく自分は矢面に立たず、裏で支援して地域の勢力を膠着状態にさせることで、誰かだけが特別強大になってアメリカに歯向かってこないようにする、というのを理想としてきた。
ちなみに韓国はその逆で、より強いほうに加担し、虎の威を借りる狐として跋扈し、ブリカスとは逆にみごと常勝ならぬ常敗を達成しているわけだが、まあそれはおいといて。
でだ。
ベトナム戦争とイラク戦争。
これは両方ともアメリカが矢面に立った戦争である。
イラク戦争は、アメリカが超大国たる自らの力を過信し、ブリカスのお家芸から離れたことをしようとして、失敗するべくして失敗したものだったのだ。
このへんのことは「100年予測」という早川文庫の地政学本に書いてあるので興味があったら読んでみるといい。
上記ブリカスのことは書いてないけど、ブリカスのお家芸については別途「大英帝国衰亡史」というPHP文庫の本を読むといい。
では、その次はどうなる?
アメリカの介入はずっと限定的なものになる。
シリアでも限定的な空爆しかしていない、みたいなやつ。
これはトランプになろうがなるまいがそうなるし、オバマの時点ですでにそうだった。
これは我輩の発案ではなく幾人かの人が言いだしていることなのだが、
ここ最近さらにアメリカの介入が減るであろう新しいことが起きている。
それは何か?
シェールオイルである。
これさえあればアメリカは中東から原油を輸入しなくてよくなる。
したがってアメリカは中東には無関心になり、さらに中東は荒れる。
そして実際そうなりはじめた。
サウジとアメリカは仲良しだったが、いますでに仲たがいしかけている。
アメリカは9.11でサウジが関与したとし、サウジ政府に損害賠償させられる法律を通した。もちろんサウジはブチ切れている。
スンニ派の長たるサウジはシーア派の長たるイランと険悪化しているが、イランが後ろで手をひいているイエメンに軍事介入し、ベトナム戦争なみの泥沼に足を踏み入れた。
いつもはサウジのやることには見て見ぬふりのアメリカ、今回にかぎりなぜかサウジを非難。
しかしなぜかイエメン介入用のサウジへの武器売却は全会一致で可決というブリカスなみの二枚舌の周到さ。
日本ではほとんど報道されていないが、いまイエメンはムチャクチャだし、サウジは太平洋戦争時の大日本帝国のごとく戦費でとてつもない財政赤字でかなりヤバい。
イランは棚ぼたなほどフリーハンドになってきた。
イスラエルもアメリカの関心が低下するであろうし、潜在的にはヤバい。
イスラエルは国家の存続のためならイランの核施設を空爆するくらいふつうにやる(フセイン時代のイラクの核施設を空爆した実績あり)し、
サウジとイランがガチでかまえたらホルムズ海峡は通れなくなり原油は輸送不能。
日本と違って兵器は100%輸入モノのサウジにとって戦費がかかるというのは他の福祉を犠牲にすることであり、すでに国民の生活の質が落ち始めた。
しかし若者の人口は増える一方という。
うぅむ・・・。
つぎは極東の話を。
現在の極東は、我々から見ると単に中国が増長してナメたこと始めだしたようにしか見えないものだ。
だが、いまの中国と日本の関係は、第一次世界大戦前のアメリカとイギリスの関係にとてもよく似ているとわたしは考える。
では、第一次世界大戦前のアメリカとイギリスの関係とは?
当時イギリスは日の沈まぬ帝国と呼ばれる超大国であった。
世界中にイギリスの軍艦がウロチョロしていた。
対してアメリカ。
アメリカの内部に未開発の広大なエリアがあったため、わざわざ国外に関心を向けなくても何の問題もなかった。
だから当時のアメリカ軍艦をそれほど持っていなかった。
そこでもしイギリスがちょっとホンキだしたらどうなる?
イギリスがアメリカのどこかを占拠するというのは考えにくいにしても、外洋はカンタンに封鎖される。
当時パナマ運河がもうすぐできるという時代であり、今すぐはどうでもいいにしろ、近い将来カリブ海を封鎖されるとダメージでかいという時期が来るのは明白。
そして西海岸はほぼ無防備。
ハワイを誰かに占拠されると太平洋もそいつに牛耳られ、西海岸も脅かされることはほぼ明白。
ではアメリカはどうする?
イギリスの軍艦が近海に来ても退治できるくらいの海軍を用意すべきだろ。
・・・となっていった。
このへんは「マハン海上権力論」を読むとよろし。
制海権についてはじめて体系的に議論した先人マハンというヤツの著した古典である。
地政学の開祖マッキンダーの著作にもイギリスの制海権の話が出てくるが、これはそれよりさらに前に制海権の概念に到達したものだ。
上記この第一次世界大戦前のアメリカとイギリスの関係は、そっくりそのまま今の中国と日本の関係に当てはまる。
先の著作を読めば、いま中国人がなに考えているかがよくわかる。
そういう意味では中国はアメリカより100年遅れていることになるが、まあそれはおいといて。
で、中国はどうする?
極東には実質的には海上自衛隊とアメリカ海軍太平洋艦隊しかない。
お笑い韓国軍やら骨とう品やさんの北朝鮮軍はあるけどさ。
中国は、海上自衛隊とアメリカ海軍太平洋艦隊と戦って勝てるだけの海軍を用意したとき、制海権がとれると思っている。
もしトランプが米軍を引き上げるなら、海上自衛隊と戦って勝てるだけの海軍を用意すればいいだけになり、願ったり叶ったりになるという寸法だ。
「地政学の逆襲」なる本によると、著者が中国の会議に出席したとき、中国人はどいつもこいつもマハンの著作を引用したという。
だから中国がそう考えている確率はほぼ確実といっていい。
アメリカ海軍太平洋艦隊が日本から撤退し、中国の海軍が海上自衛隊に勝ったとき、東シナ海、日本海は中国の内海となり、中国の海軍はハワイ沖までウロチョロしだすことになるだろう。
なら、アメリカ海軍太平洋艦隊は日本から撤退するのか?
それはわからん。
だが来年に完全撤退するとは言わんだろう。
軍の整備はすごく時間がかかる。
日本が国防費をあと5兆円くらい増額し、
増額した予算を使いきれるだけ熟練した兵の増員を確保でき、
アメリカ海軍太平洋艦隊がいなくなっても中国に張り合えるようになったとき、
双方にこやかなまま完全撤退するだろう。
そしてそのとき日本はアメリカから真の意味で独立し、外交面でアメリカのいうことを聞く必要もなくなり、それはそれでこんどは別の外交問題へと発展する。
わたしは前から韓国から米軍が完全撤退したとき日本と韓国が戦争になると言っているが、たぶん中国より先にそっちが問題になるはずだ。
では、いよいよトランプが統治する世界はどうなるかだが・・・。
つづく・・・
トランプの統治する世界(3)
http://blog.goo.ne.jp/beamtetrode350b/e/51ea265d5dbee5e2e304132d719177d6
http://blog.goo.ne.jp/beamtetrode350b/e/7fcebaf6126321b25c577d41cb2de477
・・・つづき
前回はトランプ登場前夜のアメリカの国内情勢についてだった。
では今回はトランプ登場前夜の世界情勢から記ししたい。
現在のアメリカは、イラク戦争の後遺症をひきずっている。
それは兵士の身体的/精神的後遺症の話ではない。
政治的な話である。
もともとアメリカは、湾岸戦争まではベトナム戦争の後遺症をひきずっていた。
それが湾岸戦争賛成で世論が一致したとき、ネオコンは
「ついに我が国はベトナム戦争の後遺症から脱したのだ!」
と喜んだ。
だがけっきょくはイラク戦争により同じ後遺症にまた苦しむのであった。
では、イラク戦争の後遺症とは何か?
他国に軍事介入して足抜けできない泥沼にハマり、兵士の人命と国防費ばかりかかり何の成果もあげられないことである。
・・・ということで、アメリカの世論は、イラク戦争は失敗だったとなっている。
ではなぜ失敗したのか?
旧来の統治機構を完全に破壊し、イラクを直接統治しようとしたからだ。
もともとアメリカはイギリスから派生した国である。
そのイギリスはこれまでどういう外交を行ってきたかご存じだろうか?
イギリスは、対立する2国があるとき、なるべく自分は矢面に立たず、弱いほうに加担し、膠着状態にすることで、漁夫の利を得る。
それを最も得意としてきた。
じつはアメリカもその流れをくむ。
超大国アメリカといえど、世界各地を直接統治するほどの力はない。
そこで、なるべく自分は矢面に立たず、裏で支援して地域の勢力を膠着状態にさせることで、誰かだけが特別強大になってアメリカに歯向かってこないようにする、というのを理想としてきた。
ちなみに韓国はその逆で、より強いほうに加担し、虎の威を借りる狐として跋扈し、ブリカスとは逆にみごと常勝ならぬ常敗を達成しているわけだが、まあそれはおいといて。
でだ。
ベトナム戦争とイラク戦争。
これは両方ともアメリカが矢面に立った戦争である。
イラク戦争は、アメリカが超大国たる自らの力を過信し、ブリカスのお家芸から離れたことをしようとして、失敗するべくして失敗したものだったのだ。
このへんのことは「100年予測」という早川文庫の地政学本に書いてあるので興味があったら読んでみるといい。
上記ブリカスのことは書いてないけど、ブリカスのお家芸については別途「大英帝国衰亡史」というPHP文庫の本を読むといい。
では、その次はどうなる?
アメリカの介入はずっと限定的なものになる。
シリアでも限定的な空爆しかしていない、みたいなやつ。
これはトランプになろうがなるまいがそうなるし、オバマの時点ですでにそうだった。
これは我輩の発案ではなく幾人かの人が言いだしていることなのだが、
ここ最近さらにアメリカの介入が減るであろう新しいことが起きている。
それは何か?
シェールオイルである。
これさえあればアメリカは中東から原油を輸入しなくてよくなる。
したがってアメリカは中東には無関心になり、さらに中東は荒れる。
そして実際そうなりはじめた。
サウジとアメリカは仲良しだったが、いますでに仲たがいしかけている。
アメリカは9.11でサウジが関与したとし、サウジ政府に損害賠償させられる法律を通した。もちろんサウジはブチ切れている。
スンニ派の長たるサウジはシーア派の長たるイランと険悪化しているが、イランが後ろで手をひいているイエメンに軍事介入し、ベトナム戦争なみの泥沼に足を踏み入れた。
いつもはサウジのやることには見て見ぬふりのアメリカ、今回にかぎりなぜかサウジを非難。
しかしなぜかイエメン介入用のサウジへの武器売却は全会一致で可決というブリカスなみの二枚舌の周到さ。
日本ではほとんど報道されていないが、いまイエメンはムチャクチャだし、サウジは太平洋戦争時の大日本帝国のごとく戦費でとてつもない財政赤字でかなりヤバい。
イランは棚ぼたなほどフリーハンドになってきた。
イスラエルもアメリカの関心が低下するであろうし、潜在的にはヤバい。
イスラエルは国家の存続のためならイランの核施設を空爆するくらいふつうにやる(フセイン時代のイラクの核施設を空爆した実績あり)し、
サウジとイランがガチでかまえたらホルムズ海峡は通れなくなり原油は輸送不能。
日本と違って兵器は100%輸入モノのサウジにとって戦費がかかるというのは他の福祉を犠牲にすることであり、すでに国民の生活の質が落ち始めた。
しかし若者の人口は増える一方という。
うぅむ・・・。
つぎは極東の話を。
現在の極東は、我々から見ると単に中国が増長してナメたこと始めだしたようにしか見えないものだ。
だが、いまの中国と日本の関係は、第一次世界大戦前のアメリカとイギリスの関係にとてもよく似ているとわたしは考える。
では、第一次世界大戦前のアメリカとイギリスの関係とは?
当時イギリスは日の沈まぬ帝国と呼ばれる超大国であった。
世界中にイギリスの軍艦がウロチョロしていた。
対してアメリカ。
アメリカの内部に未開発の広大なエリアがあったため、わざわざ国外に関心を向けなくても何の問題もなかった。
だから当時のアメリカ軍艦をそれほど持っていなかった。
そこでもしイギリスがちょっとホンキだしたらどうなる?
イギリスがアメリカのどこかを占拠するというのは考えにくいにしても、外洋はカンタンに封鎖される。
当時パナマ運河がもうすぐできるという時代であり、今すぐはどうでもいいにしろ、近い将来カリブ海を封鎖されるとダメージでかいという時期が来るのは明白。
そして西海岸はほぼ無防備。
ハワイを誰かに占拠されると太平洋もそいつに牛耳られ、西海岸も脅かされることはほぼ明白。
ではアメリカはどうする?
イギリスの軍艦が近海に来ても退治できるくらいの海軍を用意すべきだろ。
・・・となっていった。
このへんは「マハン海上権力論」を読むとよろし。
制海権についてはじめて体系的に議論した先人マハンというヤツの著した古典である。
地政学の開祖マッキンダーの著作にもイギリスの制海権の話が出てくるが、これはそれよりさらに前に制海権の概念に到達したものだ。
上記この第一次世界大戦前のアメリカとイギリスの関係は、そっくりそのまま今の中国と日本の関係に当てはまる。
先の著作を読めば、いま中国人がなに考えているかがよくわかる。
そういう意味では中国はアメリカより100年遅れていることになるが、まあそれはおいといて。
で、中国はどうする?
極東には実質的には海上自衛隊とアメリカ海軍太平洋艦隊しかない。
お笑い韓国軍やら骨とう品やさんの北朝鮮軍はあるけどさ。
中国は、海上自衛隊とアメリカ海軍太平洋艦隊と戦って勝てるだけの海軍を用意したとき、制海権がとれると思っている。
もしトランプが米軍を引き上げるなら、海上自衛隊と戦って勝てるだけの海軍を用意すればいいだけになり、願ったり叶ったりになるという寸法だ。
「地政学の逆襲」なる本によると、著者が中国の会議に出席したとき、中国人はどいつもこいつもマハンの著作を引用したという。
だから中国がそう考えている確率はほぼ確実といっていい。
アメリカ海軍太平洋艦隊が日本から撤退し、中国の海軍が海上自衛隊に勝ったとき、東シナ海、日本海は中国の内海となり、中国の海軍はハワイ沖までウロチョロしだすことになるだろう。
なら、アメリカ海軍太平洋艦隊は日本から撤退するのか?
それはわからん。
だが来年に完全撤退するとは言わんだろう。
軍の整備はすごく時間がかかる。
日本が国防費をあと5兆円くらい増額し、
増額した予算を使いきれるだけ熟練した兵の増員を確保でき、
アメリカ海軍太平洋艦隊がいなくなっても中国に張り合えるようになったとき、
双方にこやかなまま完全撤退するだろう。
そしてそのとき日本はアメリカから真の意味で独立し、外交面でアメリカのいうことを聞く必要もなくなり、それはそれでこんどは別の外交問題へと発展する。
わたしは前から韓国から米軍が完全撤退したとき日本と韓国が戦争になると言っているが、たぶん中国より先にそっちが問題になるはずだ。
では、いよいよトランプが統治する世界はどうなるかだが・・・。
つづく・・・
トランプの統治する世界(3)
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