DALAI_KUMA

いかに楽しく人生を過ごすか、これが生きるうえで、もっとも大切なことです。ただし、人に迷惑をかけないこと。

風(75)

2021-03-11 15:28:06 | 物語

2020年10月
風の強い満月の日に
カイトサーファーと絵描きとシラサギが琵琶湖に集まりました。

カイトサーファーは、日本チャンピオンでした。
絵描きは、曲面絵画の達人でした。
でも、シラサギはただのシラサギでした。

その日、彼らは初対面で、
自分たちのことで手一杯で
お互いに挨拶もしませんでした。

にもかかわらず
彼らの波長は妙に合っていたので
とても楽しい時間を過ごしました。

その日は風が強かったのですが
ちょうど中秋の名月で
空に浮かぶ満月はとても優しい顔をしていました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

風(74)

2021-03-03 10:25:00 | 物語
2011年2月、私は東京にいた。
霞が関で文部科学省の役人に、琵琶湖の湖底で起こっている異変について報告していた。
何かがおかしい。
2009年12月に初めて発見した湖底からの泥水の噴出。
2010年12月には、その水域は大きく広がっていた。
それは湖底が強い力で押されているような光景だった。
おかしいから、注意した方がいい。
そう懸命に役人たちに説明したが、一地方の研究者の声は聞き流された。



2011年3月11日
私は、琵琶湖畔の研究室にいた。
突然襲ってきた大きな揺れ
まずい
きっと琵琶湖に地震が発生したのだ
とっさにそう思ったが
震源地は東北沖だった。
現地の映像がテレビに映る。
それは悪夢のような光景だった。
阿鼻叫喚というのは、このことを言うのだろう。

2011年5月
私は宮城県南三陸沖にいた。
浦先生に頼まれて、水中ロボットを用いた海底探索の手伝いに来ていた。
私たちは懸命に海底のがれきの中を捜索した。
2月の説明の時に、なぜもっと役人を説得できなかったのか。
国レベルでの注意喚起があればよかった。
そのことへの激しい罪滅ぼしの気持ちもあった。
たとえ不十分であっても
おかしいことの警告を発し続けることが
真の自然科学者のとるべき態度だった。

2021年2月、論文を出版した。
やっと過去10年間の心の思いをまとめることができた。
Increasing benthic vent formation: a threat to Japan’s ancient lake
Scientific Reports (nature.com)
3月11日の大地震で亡くなった多くの人々への御供養でもある。
いま、私は小中高の生徒たちを琵琶湖へ案内している。
一緒に琵琶湖の湖底を見て、地球からのメッセージを聞く。
こうして、これから10年後にやってくるだろう
大きな環境異変や地殻活動に今から準備をしている。

私にできることは、それくらいのことしかない。
でも一緒に頑張っている生徒たちが育てば
一人が十人になり、十人が百人になると信じている。
琵琶湖は地球の鏡である。
いろいろな表情を私たち伝えてくれる。
元気ならよし
顔色が悪ければ、みんなに注意を呼び掛ける。
そんな取り組みに、一人でも多くの人が参加して欲しい。

私も年を取ってきた。
いつまでも琵琶湖に出れない。
自分の経験や知識や技術を若者たちに伝え、共に学ぶ。
琵琶湖の湖底を見てごらん。
そこには日本の歴史が埋まっている。
1万年前の縄文土器から近年の活断層の跡まで。
知ることから始めて、動くことを学び、伝えることを身につける。
琵琶湖を守れなかったら、日本を守れない。
日本を守れなかったら、地球を守ることはできない。
かんたんな理屈じゃないか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

風(73)

2021-02-25 17:24:17 | 物語


 認定NPO法人びわ湖トラストでは、ジュニアドクター育成塾の4期生を募集しています。このチラシのロゴは、1期生のSSさんが作成してくれました。琵琶湖の固有種が描かれているとても素敵なロゴです。彼女は昨日、京都市立銅駝美術工芸高等学校に合格しました。
 さて、4期生の1次募集の締め切りは3月14日で、3月21日に適性テストをします。参加希望者はびわ湖トラストのホームページから応募してください。http://www.biwako-trust.com/ 参加費は無料です。
 一緒に地球温暖化によって死滅しかかっているビワオオウズムシを助けませんか。琵琶湖から広く地球環境や地球科学を研究する仲間を求めています。このプログラムに参加できるのは、4月から小学5・6年生、中学1・2・3年生になる生徒です。
 また、講談社を通してクラウドファンディングも立ち上げています。皆さんの財政的支援を求めています。https://outreach.bluebacks.jp/project/home/21
 そして、風景画家ブライアン・ウィリアムズさんもこのプロジェクトを応援しています。一人一人の力は小さいけれども、みんなが力を合わせたら何とかなるかもしれません。10年後の琵琶湖を守るため、一緒に参加しませんか?ぜひブライアンさんのメッセージをご覧ください。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

風(71)

2021-02-18 16:14:34 | 物語
日本最大のプラナリアであるビワオオウズムシは
琵琶湖にしかいない。
その生態は謎に包まれているが、貧毛類(ミミズ)などを食べている。
全循環の停止によって、これが壊滅した。
どうも水温と酸素が影響しているようだ。
ビワオオウズムシが好む水温は8℃前後である。
昔、水深30~40mくらいにたくさんいたようだ。
1990年代になって琵琶湖の水が暖まり水深60m~80mへ移動した。
2020年に湖底の水温は9℃を越え
ビワオオウズムシは、高温と極度の酸欠で死んでしまった。
琵琶湖の湖底で起こったささやかだけど深刻な
地球温暖化の犠牲者だ。
こうしている間も、地球の自然は刻々と変わっている。

https://outreach.bluebacks.jp/project/home/21
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

風(70)

2021-02-12 10:59:31 | 物語

https://brianwilliamsart.com/

皆さま

おかげさまで、Brian Williams の絵が売れました。
Brian も、早速 琵琶湖八景の構想にとりかかっています。
できれば四季折々の景色を描いてもらって、
月ごとに掛け替えれるとよいかな、と思っております。

クラウドファンディングも
あと35日を残して
183人から申し出があり
3,922,500円
に達しました。
皆様のご協力のおかげと思っております。
現段階では個人名はわからないのですが、
北から南まで日本全国に広がっています。

それだけ環境問題に関心があるのでしょう。
JSTのジュニアドクター育成塾もあと2年です。
子供たちと一緒に琵琶湖の研究を行って
少しでも良い環境を、次の世代に残したいと思っています。

まずは感謝の気持ちを込めて
心より御礼申し上げます。
ありがとうございました。

熊谷 謝

御礼





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

風(69)

2021-02-10 10:29:59 | 物語

人と自然が
向かい合うとき
侵しがたい
風が吹く

何かに惹かれ
心を籠めるとき
体をゆする
風が吹く

この地に触れ
絵筆を持つとき
震えるような
風が吹く

人と自然を
風がつなぐ
つないだ風が
宙を舞う

ブライアン・ウィリアムズのサイトに
紹介のりました
グラシアス
アミーゴ

クリーンエネルギーで琵琶湖の危機を救う!琵琶湖の深呼吸「全循環」の復活を目指して | ブライアン・ウィリアムズ | Brian Wiliams WEBSITE (brianwilliamsart.com)





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

風(68)

2021-02-08 17:32:01 | 物語


2012年まではたくさんいることが確認されたビワオオウズムシだが
全循環が止まった2019年以降
極端にその数が減少してしまった。

気候変動の被害者だと言えばそれまでだが
身近な琵琶湖の固有種が
こういう形で姿を消すのは残念なことだ。

ジュニアドクター育成塾の
佐藤さん姉妹によれば
プラナリアと同様に細分しても復活するのだそうだ。

再生能力が非常に高いビワオオウズムシだが
どうも高温には弱いようだ
無酸素もダメなんだろう。

どの程度の酸素や水温が最適なのか
彼女たちは
調べるプロジェクトを立ち上げた。

普段は見向きもしない生物だが
社会がこんなにも分断化されると
妙に不憫になるのも彼女たちだけだろうか。

https://outreach.bluebacks.jp/project/home/21

https://brianwilliamsart.com/


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

風(64)

2021-02-02 15:04:43 | 物語


おかげさまで、1月18日から実施していましたクラウドファンディングが、本日、目標金額の100万円に達しました。
皆様のご協力を心から感謝します。

https://outreach.bluebacks.jp/project/home/21

ただ、ブライアン・ウィリアムズの絵画購入が全くありません。
クラウドファンディング終了までにあと45日あります。

もしお知り合いの方で、絵画に関心のある方がいらっしゃれば、ぜひお声がけをお願いします。
ブライアンがこのファンドのために描きおろしす琶湖湖八景ですので、きっと貴重な作品になると思います。

コロナ禍ですが、よろしくお願いします。
8枚の絵画を、季節ごとに掛け替えるのも日本的で粋ではありませんか。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

風(57)

2020-12-05 21:59:29 | 物語
琵琶湖湖底(90m)における水温と溶存酸素濃度のデータを送ります。
まだ水温は上昇を続けていますし、酸素は回復していません。
ビワオオウズムシやアナンデール・ヨコエビは採取できませんでした。
ただ水中ビデオカメラの映像では、スジエビが写っていました。
今ころから、スジエビが岸から湖底へ移動します。
少しずつですが、再び環境が回復するのでしょう。
ガンバレ、琵琶湖とそこにすむ生物たち。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

道(55)

2016-04-24 22:18:37 | 物語


とうとうモンゴルからオソフ君とハドバータルさんが日本にやってきた。

本当は先週の日曜日に来るはずだったのに、突然の悪天候で一週間延びた。

見た感じは元気そうなオソフ君も、なんだかとても疲れているようだった。

明日はゆっくり休んで、火曜日(26日)に京都大学病院で診察を受ける。

その結果をみて今後のことを決めたいと思う。

そして、4月28日の夜に報告会&歓送会を大津で開きたい。

これまで支援していただいた人、これから支援しようと思っている人、ぜひ参加してほしい。

希望者は返事を、mkumagai@mwc.biglobe.ne.jpまでお願いしたい。

私にとっては、モンゴルとの20年間にわたった付き合いの一つの出力形だ。

初めてモンゴルの片田舎からやってきたオソフ君。

緊張の連続かもしれないが、1週間の滞在がプラスになることを心から祈っている。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

道(48)

2016-03-14 17:11:01 | 物語


古い友人であるBrian Bundyが亡くなってから1年余りが過ぎた。

2015年2月24日だ。

荷物を整理していたら、懐かしい写真が出てきた。

日付は1999年8月7日だ。

左に奥さんのMagaret、真ん中に長男のMark、そして右端がBrianだ。

脳こうそくで不自由になった右手を添えて、左手を高く上げている。

撮った場所は良く分からないが、彼の家の近くなのだろう。

ひょっとしたら駅だったかもしれない。

ちょうど高校生だった長男と二人でサウサンプトンを訪ねた時のことだ。

このころはBrianもまだ元気だった。

そして翌年の2000年10月にMarkが結婚した。

今では私の長男も結婚して、孫もできた。

年を取るわけだ。

*****(Wikipediaより)

否認(denial)とは、不安や苦痛を生み出すようなある出来事から目をそらし、認めないこと。
「抑圧」はその出来事を無意識的に追い払うものだが、「否認」は出来事自体が存在しないかのような言動をとる。

*****

ダン・ブラウンのインフェルの中に次のような記述がある。

すぐれた知性を持つユーザーでさえ、否認を本能的に行う傾向があることだ。
大学生の大半は、北極の氷が減少しているとか、動植物が絶滅しているといった憂鬱な記事をクリックしても、短時間でそのページを閉じ、恐怖心を追い払ってくれるくだらない内容のページへ移ったという。
人気が高かったのは、スポーツ特集や、笑える猫の動画とか、有名人のゴシップだった。

古代の神話では、否認する主人公は過信と傲慢の象徴だ。
自分だけは世界の危機から免れると信じているのは、誰よりも傲慢だ。
ダンテも明らかに同意見で、傲慢を七つの大罪のなかでも最悪の罪だと弾劾している、
裏切りを犯す傲慢な者は、地獄の最下層で罰せられる人だ。

*****

さてこれからどうやって生きて行けばよいのだろうか。

否認したい気もするが、いずれにしても現実と正面から向かい合うことが大切な気がする。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

道(44)

2016-02-22 13:00:23 | 物語


子供のころガリバー旅行記を読んだことがある。

正式には、以下の長いタイトルがついている。

Travels into Several Remote Nations of the World, in Four Parts. By Lemuel Gulliver, First a Surgeon, and then a Captain of several Ships

船医から始まり後に複数の船の船長となったレミュエル・ガリヴァーによる世界の諸僻地への旅行記四篇

ウィキペディアによると

「原版の内容が大衆の怒りを買うことを恐れた出版社により、大きな改変を加えられた初版が1726年に出版され、1735年に完全な版が出版された」

とある。

この本の中に、ガリバーがラグナグという国に立ち寄る話がある。

***

ストラルドブラッグを見たことがあるか、と聞かれた。

その人の話によると、極めてまれではあるが、時として額にそれも左の眉毛のすぐ上に、赤くて丸い斑紋を持った子供が生まれることがある。

その斑紋をもつ子どもこそストラルドブラッグであり、絶対に死なないという正真正銘の印である。

赤い斑紋は12歳では緑色になり、そのまま25歳まで続き、そして青色に変わり、さらに45歳になると黒い色になり、その後は変化しない。

ガリバーは感激して、死に怯えずに暮らせれば、長寿によって得られた豊かな経験で人間はもっと幸福になれる、と思った。

しかし、不死ではあっても不老ではない。

ラグナグ国では、ストラルドブラッグが生まれると大いに悲しんだという。

なぜなら、莫大な国費を使って彼らを養わなければならなかったからだ。

ストラルドブラッグは経済活動や政治活動をする権利を取り上げられていた。

年を重ねれば思慮深くなり、叡智が増すというのは嘘だ。

人間は老いれば老いるほど独善的で貪欲になっていく。

そして既得権益を手放さなくなる。

世代交代はなく社会は停滞する。

だから不死人間ストラルドブラッグには決して国を掌握させてはならない、という決まりがあった。

こうしてストラルドブラッグは、死ぬことも働くこともできず、孤独にさいなまれながら、果てしなく長い時間を生きねばならない。

(朱野帰子の「超聴覚者 七川小春」の一節から)



***

なるほどな、と思う。

スウィフトによって、18世紀初頭にこのような本が書かれた。

英国の社会を皮肉った本だ。

いかにして「足るを知る」か、ということが大切な気がする。

ただ、今の世の中は、じっとしていたら落ちていく世界になっている。

浮かび上がろうと足をばたつかせないと、沈んでしまう。

一方で、永遠に泳ぎ続けることはできない。

あえて立ち止まって、ゆっくり考える時間が必要な気がする。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

道(17)

2015-11-22 21:00:26 | 物語


JRの駅を降りると屋台が並んでいた。

「みなくさまつり」と書いてある。

フーム、何かにおうような名前だ。

ふらふらと通りを歩く。

そうか、南草津だからか。

ここは立命館大学ができてから新たに設置された駅だ。

略して「みなくさ」と呼ぶ。

それにしても結構な人出だ。

大学の屋台も出ている。

よいかな、よいかな。

市民も、学生も、みんな元気だ。

新しい街で、新しい社会ができる。

学生のパワーを感じる。

いい気持で歩道を歩く。



ふと道端を見る。

たくさんのドングリが落ちていた。

あらら、舗装道路に落ちたって、育つわけがない。

どうすんだ。

木の実は、落ちた時の環境を予想することができない。

だからたくさんの実を落とす。

どれかが育つことを期待するのだろうか。

環境はドンドン変わっていく。

雨が降り、風が吹けば、別の場所に移動することだってある。

***

人生は紙飛行機
願い乗せて 飛んでゆこう
風の中を力の限り
さあ心のままに365日

飛んでゆけ 飛んでみよう
飛んでゆけ 飛んでみよう

***


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

生きる(68)

2015-07-07 21:01:17 | 物語


堀江正治は面白い事を言っている。

***

琵琶湖中の生物中に、海産起源の種が含まれ、しかもそれが日本海と関連を有するらしい事実がある(中略)。

近江盆地、伊賀盆地一帯を踏査した限りでは、古琵琶湖と海洋との連絡は地形的に見て現在の琵琶湖北部以外には考えられない。

***

もしこのことが正しいとすると、琵琶湖は日本海から来たことになり、琵琶湖が伊賀上野にあった古琵琶湖から移動してきたという定説は否定されるのかもしれない。

いずれにしても、琵琶湖が地球規模の地殻変動によって形成されたことは確かである。

そういう意味で、琵琶湖の湖底には地球の古い時代のメッセージが眠っている。

古陸水学は、その歴史を紐解く学問である。

もうひとつ興味深いのは、琵琶湖に形成される地衡流渦である。

琵琶湖では「環流」と呼んでいるのだが、これには地球の自転が深く関わっている。

つまり、地球の自転が止まったら、環流は形成されないのである。

このように、地球の自転の影響が無視できない水の流れを研究する学問を、地球流体力学と呼んでいる。

水の流れは環境の変化に伴って時々刻々と変化するので、地球流体力学は現代気象学や海洋学、陸水学の中枢を占めている。

かくして、琵琶湖と地球は切っても切れない関係にある。

したがって、「琵琶湖は地球の鏡である」と言える。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

生きる(25)

2015-04-28 04:49:38 | 物語


4月26日の日曜日、私たちはびわ湖にささやかなプレゼントをした。

沖島の漂着ゴミの清掃だ。

この島は、我が国の湖で唯一、人々が生活をしている島だ。

昨年、離島指定を受けている。

八幡浜に集合した私たちは漁船に分乗し、沖島の集落から離れた湖岸に向かった。

びわ湖トラストでは、毎年1回、このような取り組みを行っている。

思う心と行いを一致させること。

陽明学の教えだ。

老若男女100名が集まった。



中でも驚いたのは、中国湖南省からの留学生が20人も集まったことだ。

みんな非常に熱心で積極的だった。

中国では、ごみのポイ捨てがひどい。

この若者たちが帰国して、かの地の環境保全に少しでも貢献してくれれば、と心から願った。



誰かが言った。

中国の若い人はこんなに積極的なのに、日本の若者はどうして消極的なのだろうか。

もちろんすべてがそうだとは言わない。

しかし、確かに、この国の若者たちの社会に対する無関心ぶりは、将来への不安さえ感じさせる。

「日本の人たちに望むことはありますか」

そう問いかけると

「もっと日本の人たちと触れ合いたい」

という答えが返ってきた。

ゴミ拾いをきっかけとしたささやかな日中交流。

期待を持って日本へやってきた中国の若い留学生たちは、日本人とどうやって付き合ってよいのか、戸惑っている。

少しでもびわ湖の恵みに感謝しようと思って始めたゴミ拾いだが、思いがけない成果もあった。

日常の生活からはわからなかった、ふれあいの欠如に気がついた。



参加者たちへの、びわ湖神様からのささやかなプレゼント。

晴れ渡った青空と、澄んだ空気と、小さな幸福感だった。

http://wwcf.blue/?page_id=41
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする