IPCCの結論
大気について述べるならば、過去30年間における10年ごとに計算した平均気温は、1850年以降、はっきりと上昇してきている。1983年から2012年の30年間は、北半球では過去1400年で最も暖かい時期になっているようだ。大陸と海洋の表面温度の全球平均は、1850年から2012年で0.7℃上昇した。一方、上層大気の温度は低下しており、地表面での気温上昇が太陽に起因したものではないと結論づけている。また、世界中の氷河およびグリーンランドや南極の氷床におけて氷が消失する速度が劇的に増加していると報告している。氷河の消失は20%程度だが、氷床の消失は20世紀末の10年と21世紀初頭の10年の間で600%まで増加している。北極における夏季の海氷面積は過去30年の比較で、10年毎に9%から14%まで減少した。このような氷の減少は、過去1450年間に見られなかったレベルである。一方、南極における冬季の海氷はこの10年間で1.5%ほど増えている。これは地球上におけるエネルギーの非平衡に対応して強化された南極海風によって引き起こされているようである。
IPCCのリポートでは、海洋の温暖化が、気候システムにおいて蓄積されるエネルギー増加の多く(1971年から2010年の間に蓄積されたエネルギーの90%以上)を担っていると述べている。また、人間起源である二酸化炭素の累積排出量の30%が海洋に吸収されており、このことによって海洋は酸性化しつつある。
ごく最近になって、IPCCは全体を統合した報告書を出版した。この中で、次のように述べている。「気候システにおける温暖化は明確になってきている。1950年以降、観測された多くの変化は、2010年までの数十年間に予期していなかったものである。大気や海洋は温まっており、雪や氷の量は減少している。そして、海水面は上昇している」。また、「最近の数十年において、気候の変化は全ての大陸と海洋における自然および人間システムに影響を与えてきた。影響というのは、観測された気候の変化によるものであり、その原因が何であるかとは関係なく、気候変化に対して自然や人間のシステムが脆弱であることを示している」と続けている。
気候変動の要因としては、「1951年から2010年までの地表面で観測された平均気温の上昇の半分以上が、人為的に排出された温暖化ガスの増加によるものであり、それ以外についても人間活動に伴う外的な因子が関連している」とIPCCは結論づけた。さらに、「温暖化に対する人間起源の寄与の最も正確な評価としては、現実に観測される温暖化傾向そのものである」と述べている。言い換えれば、1951年以降起こっている全ての温暖化は人間活動によるものであるという証拠を示した。
「今後の温暖化ガスの排出によって、気候システムを決定する全ての成分において、さらなる温暖化や変化が引き起こされるだろう」と結論づけた。気候変動を制御するためには、温暖化ガスの排出量を減らすための多くの持続的な取り組みが必要である。このことは、適合策の実施とともに、気候変動のリスクを抑制する手段だ。