4月28日に、共立出版から、「湖の科学」という書籍が出版された。
筆者はカナダ国ラバル大学のWarwick F. Vincent先生で、訳者は東北大学の占部城太郎先生だ。共に湖沼学のエキスパートである。
初めて湖の研究を始める人には、最適な本だ。
ぜひ購入して欲しい。
以下に、序文を転記する。
☆☆☆☆☆
古くて新しい学問 湖の研究に 心を惹かれる 若い人々は幸せだ
この本は、湖を学ぼうとする人々への宝箱である。
ふたを開けると、ほぼ150年前にLimnology(陸水学)という言葉を初めて誕生させたスイスの研究者Francois A. Forel先生への敬慕の情があふれ出てくる。しかも扱っている内容は、Forel先生の基礎研究から最新の科学まで網羅しており、決して古めかしいものではない。むしろ、これほどまでによくコンパクトにまとめたと感心するほどである。
第1章は序文で、「湖やその水面下にある様々な事象や謎についてワクワクした気持ちを持って、もっと学びたいと思ってもらいたい」と語っている。
第2章では湖とは何かについて触れ、第3章で光と湖、波、流れなどの物理現象を記述している。
第4章で湖に住む微小な生物と水中に溶ける気体や化学物質を扱い、第5章で生物生産と食物連鎖が登場する。
第6章は著者が得意とする極地や高地の湖沼の話である。
そして最終の第7章では、「人間と地球環境とは相互依存の関係にあり、生存に不可欠な生態系サービスとそれを支える環境全体を健全な状態で維持していかねばばならない」と結んでいる。
著者Warwick F. Vincent先生は、私の古い友達の一人である。年令が近いこともあり、1991年頃からお付き合いをさせていただいている。1993年の琵琶湖から始まり、2002年にニュージーランドのタウポ湖、2015年にカナダ最北端のワードハント湖の調査をご一緒した。どれも懐かしい思い出であり、その都度、多くのことを教えていただいた。
Vincent先生は博識の人である。しかも深い知識と不断の思考に裏打ちされた誠実な研究姿勢は、本書にもよく表れている。この本は先生の傑作の一つであり、占部城太郎先生の名翻訳によって輝いている。このような手引き書をもとに、陸水学を学べる学生や若い研究者は、幸せである。先生が言うように、陸水学は人間と自然の間に横たわる謎解きの学問でもある。
「ようこそLimnologyの世界へ」、そう言うVincent先生の声が、そしてForel先生の声が聞こえてきそうだ。地球温暖化の進行が止まりそうにない現代だからこそ、本書を読んで地球科学の必要性と可能性を学んで欲しい。すべての国、すべての人種、すべての学問を融合しなければ、今降りかかる困難を克服することはできないのだから。
大本山石山寺のおみくじ売り場に、びわ湖トラストのCF募金箱が設置されました。ぜひ、訪れて募金をお願いします。
【私説石山寺縁起】
石山には、紫式部が源氏物語の構想を練ったと言われる石山寺がある。あくまで言い伝えなので事の真偽は確かではないが、京都や滋賀には紫式部伝説が多い中で、石山寺が世界最古の長編小説とまで言われる源氏物語の誕生地だとすれば、これほど素晴らしいことはない気がする。
話によると、このお寺は硅灰石(けいかいせき)という石灰岩にマグマが侵入してできたという、大変珍しい石の上に立っているのだそうだ。だから石山寺というのか、などと妙に感心してしまう。
石山寺は七四七年に建立されたから、奈良時代の中頃の話である。聖徳太子が持っていた観音菩薩像を祀っているというのだから、一級品のパワースポットと言っていいだろう。観音菩薩というのは、般若心経の初めに出てくる観自在菩薩と同じ意味で、智慧を司る菩薩のことである。ラマ教の教祖であるのダライ・ラマは、この観音菩薩の生まれ変わりと言われている。ちなみに、ダライというのは、『海のように深い知識を持つ人』という意味のモンゴル語なのだそうだ。
石山寺ほど平安時代の女流作家と深い縁があったお寺はない。蜻蛉日記、更級日記、枕草子、源氏物語などを著した当時の著名な女流作家がこのお寺を訪れた記録が残っているらしい。おそらく観音菩薩の導きだろうという話だが、瀬田川に面した景勝の地が、当時の女流作家たちの信仰心をかき立てたのではないだろうか。
「あれ、こんなところに変なおじーさんの像がある」
JR石山駅から京阪石山駅の改札口へ向かうテラスに、杖を持った人の銅像が立っていた。
「松尾芭蕉って書いてある。あの俳句の芭蕉のことかな。たしか五七五の人だよね」
「きっとそーだよ。そう言えば、石坂線の途中に芭蕉の墓があるって聞いたことがある」
「えっ、そんな場所があるの。どこどこ」
「たしか膳所駅と石場駅の間かなー」
「やはりそうだね。大津市馬場一丁目だ。芭蕉は遺言で一六九四年に、義仲寺(ギチュウジ)に埋葬されたらしいよ」
国語の時間に習った芭蕉の俳句を思い出した。
行く春を 近江の人と 惜しみける
芭蕉って、それほどに近江が好きだったのだろうか。この句が作られたのは、一六九〇年らしい。芭蕉は大津にいて、俳句の弟子たちと一緒に、過ぎ行く湖辺の春を惜しんでいたのだ。
「ギチュウジって、漢字では義仲寺って書いてあるね。木曽義仲のお墓もこのお寺にあるのかなー」
「そうだね。木曽義仲の奥さんだった巴御前(ともえごぜん)が、義仲の死後この場所に墓を作って菩提を弔ったようだね。はじめの頃は無名庵(むみょうあん)と言っていたらしいけど、その後、義仲寺と呼ばれたのだって。芭蕉は義仲の熱烈なファンで、たびたびこの場所を訪れて弟子たちと句会を開いていたみたいだね。その頃の義仲寺は琵琶湖に面していて、とても風情があったらしいよ。芭蕉が作ったこんな句もある」
世の夏や 湖水に浮(うか)む 浪の上
この句は、一六八八年に芭蕉が琵琶湖の湖畔で作ったもので、井狩昨卜(いかりさくぼく)という弟子の家に招かれたときの作だ。おそらく、琵琶湖に面した部屋だったのだろう。暑い夏だというのに、浪が打ち寄せ、まるで自分の体が水面に浮かんでいるように涼しく思われる。そんな意味の句なのだろうか。
今でも琵琶湖の湖岸に立つとき、この湖が持つ長い歴史と湖の大きさを感じることがある。
その風情を芭蕉は心から愛したのかもしれない。
知床沖で遊覧船が沈没したというニュースが駆け巡っている。
とても悲しい話だ。
あってはならないことが、また起こった。
1987年4月に、私も同じような経験をした。
琵琶湖で調査に出かけた時のことだった。
当時は自前の調査船がなかったので、漁船をチャーターしていた。
彦根港を出港した時には穏やかだったが、昼過ぎに急に北西の風が強く吹き始めた。
船は大きな風波に翻弄され始めた。
ちょうど多景島と沖の白石の中間、琵琶湖のど真ん中だった。
すぐに調査を中止し、帰港を決めた。
次々と大きな波が来た。
突然、船首が割けた。
漁船はFRPでできている。
板になったところは強いが、貼り合わせたところは弱い。
そこが上下に割け、水が入ってきた。
船首が下へ傾き、前進もできなくなった。
私たちは、持ってきた調査器具を水中に投げ入れた。
少しでも軽くしたかったのだ。
幸運なことに、エンジンは無事だった。
船の隔壁があったおかげで、水はエンジンルームまで来なかったのだ。
そしてさらに幸運なことに、私たちは調査用の水中ポンプを持っていた。
たまった水をポンプで掻い出し、船首を上げた。
そこをブルーシートで囲んで、水が入らないようにした。
そして、ゆっくりと彦根港を目指した。
波よりも遅く、船を走らせた。
そうしないと水をかぶる。
水をかぶるとシートがはがれ、さらに水が入る。
頭の先から足先まで、全身がずぶぬれだった。
港に着いた時は、16時を回っていた。
普段なら1時間のところを、4時間もかかっていた。
大学の先生が1人、学生が2人、私と船頭、計5人は疲れ切っていた。
水温は12℃、本当に死ぬかと思った。
琵琶湖の恐ろしさを初めて感じた瞬間でもあった。
琵琶湖研究所に帰って、副所長に頼み込んだ。
死ぬところでした。
大きくて、安全な船を作ってください、と。
それから5年後、実験調査船「はっけん号」ができた。
この船に、当時考えつくあらゆる安全装置を組み込んだ。
双胴船にしたのもそのひとつだ。
2つの船体があれば、沈むことはない。
またどちらかのエンジンが作動するので、漂流もしない。
3層の隔壁も作った。
アルミ船なので、剝がれることもない。
波に対して安定している。
ただ、その後、琵琶湖には双胴船はない。
はっけん号が唯一の双胴船になってしまった。
単価が高いのと、作るのが面倒だからだ。
速い船は作るが、安全な船は作っていない。
2003年、はっけん号は、ヨット事故の救援に向かった。
今度は救助する番だった。
残念ながら琵琶湖には、沈んだ船を救助できる船は、はっけん号しかない。
皆さまには、大変お世話になっております。
認定NPO法人びわ湖トラストが実施しております
認定NPO法人びわ湖トラストが実施しております
はっけん号のクラウドファンディングの取り組みが、
中日新聞に掲載されましたので配信いたします。
できましたら、広く配信していただければ幸甚です。
皆さまの応援で、少しずつですが支援の輪が広がっています。
中日新聞に掲載されましたので配信いたします。
できましたら、広く配信していただければ幸甚です。
皆さまの応援で、少しずつですが支援の輪が広がっています。
今後とも暖かいご支援をお願いいたします。
よろしくお願いします。
びわ湖トラスト事務局長
びわ湖トラスト事務局長
熊谷道夫
皆さま
多くの支援に支えられて、私たちのクラウドファンディングも順調に伸びております。
多くの支援に支えられて、私たちのクラウドファンディングも順調に伸びております。
びわ湖トラストが実施していますJSTジュニアドクター育成塾の教育研究活動も今年が5年目です。最終年度ですが、5期生の応募はすでに定員を大きく上回っています。年々、質・量ともに向上し、今年はSIL(国際陸水学会)に10名(口頭2名、e-poster8名)の研究発表を登録できました。この中で、小学生2名も英語で研究発表を行います。高校生となった1期生の中には、今年、日本水大賞で未来開拓賞を受賞した子もいます。
これもひとえに活動を支えていただいている先生方のご指導の賜物であると、深く感謝しています。
これもひとえに活動を支えていただいている先生方のご指導の賜物であると、深く感謝しています。
昨今のウクライナ情勢を見るときに、子供たちを支え・励まし・育てる社会を持てない国家が、いかに悲惨かを身にしみて感じます。私たちは、2008年にNPO法人びわ湖トラストを組織してから、ずっと子供たちの育成に努めてきました。良い土壌(プラットフォーム)で、良い環境で、良い教育をすれば、子供たちはすくすくと育つものだな、と実感します。これまでの皆さまの熱いご支援に深く感謝し、この紙面にて心より御礼申し上げます。
認定NPO法人 事務局長 熊谷道夫 拝
*****
https://readyfor.jp/projects/BiwakoTrust
認定NPO法人 事務局長 熊谷道夫 拝
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https://readyfor.jp/projects/BiwakoTrust
はっけん号を見送る親御さんたちの写真を見ることは、これまでになかった。
いつも自分が、乗船しているからだ。
船が遠ざかるまで、どんな思いをもってこの人々は見送っているのだろうか。
何だか、暖かいような、切ないような気持ちを感じる。
そうなんだろうな。
親というのは、そんな思いで子供を育てているのだろうな。
そういえば、自分も3人の子供たちを育ててきた。
すでに成人して、社会の中枢を担ってる。
今、ウクライナを思うとき、子を思う親はどんなにつらいのだろうか。
送られてくる映像で見る情景は、誠に非条理である。
人の子を預かる身として、こうあってはならないと思う。
だからこそ真剣に、私は己の道を自覚する。
琵琶湖の湖底に新たな突起ができたようだ。
まだ詳細な調査をしていないからはっきりしたことは言えないが、15mくらいの高さがある。
これも琵琶湖の縮小と関係があるかもしれない。
突起の周辺から盛んにガスが噴き出しているのがわかる。
この吹き出しによる物質輸送も無視できないだろう。
急激に変わりつつある琵琶湖。
これも地殻の変化によるのだろうか。
はっけん号による詳細な調査が必要である。
どうか至急支援をください。
今日の琵琶湖は最高でした。
ジュニアドクター育成塾の子供たち12名と一緒に、調査に出かけました。
風もなく穏やかな湖面は、春の息吹を感じさせました。
驚いたことに、湖底に設置したトラップには、ほとんど生き物がいませんでした。3月のロボット調査の結果も同じでした。どうも湖底で何か異変が起こっているようです。十分に気を付けたほうが良いかもしれません。
びわ湖トワ
あなたにとって、びわ湖とは、何ですか?
私たちのびわ湖は、永遠に続くのでしょうか?
これは、新しい琵琶湖の歌です。
そして、学習船「湖(うみ)の子」の応援歌です。
滋賀県の高校生たちが集まって、筝とピアノと合唱がコラボしました。
小学生や中学生のために作った歌です。
ぜひ、私たちの心の歌を聞いてください。
この湖を守るために
クラウドファンディングを応援してください。
皆さま
桜から新緑へ、湖国もひときわ美しい季節となりました。
きょうは、滋賀県の認定NPO法人「びわ湖トラスト」が開始したクラウドファンディングへのご支援のお願いです。
すでにご寄付をいただいている方には、改めて御礼申し上げます。
びわ湖トラストは2007年に発足して以来、琵琶湖と子どもたちの未来のために環境調査・研究・教育活動を続けています。
桜から新緑へ、湖国もひときわ美しい季節となりました。
きょうは、滋賀県の認定NPO法人「びわ湖トラスト」が開始したクラウドファンディングへのご支援のお願いです。
すでにご寄付をいただいている方には、改めて御礼申し上げます。
びわ湖トラストは2007年に発足して以来、琵琶湖と子どもたちの未来のために環境調査・研究・教育活動を続けています。
それらの活動を支える実験調査船はっけん号のリフォームを目指して、クラウドファンディングを開始いたしました。ぜひ、みなさまのご支援をお願いいたします。
びわ湖トラストは現在、科学技術振興機構「ジュニアドクター育成塾」の指定も受けるなど、小学生から高校までの多くの子どもたちの調査研究をサポートしています。
びわ湖トラストは現在、科学技術振興機構「ジュニアドクター育成塾」の指定も受けるなど、小学生から高校までの多くの子どもたちの調査研究をサポートしています。
その調査母船であり、湖底生物の調査による温暖化の影響や湖のマイクロプラスティックの調査分析を独自に進める上で欠かせない役目を果たし続けているのが「はっけん号」です。
大切にメンテナンスを続けてまいりましたが、築造から30年がたち、「車検」ならぬ本格的な「船検」の時期を迎えて、安全に今後も運航を続けるためには、しっかりとした点検と老朽化した部品のとりかえをする必要が生じています。
トラストの活動自体が、ご賛同いただけるみなさんのご寄付や助成金で成り立っていますが、それはふだんの調査研究教育の諸活動の貴重な資金となっており、本格的な修繕をする費用はそこからは捻出できない状況です。
そこで、広くみなさんからのご寄付をお願いしたいと考え、クラウドファンディングに挑戦しました。
ご支援をぜひよろしくお願いいたします。
また、可能でしたら、お知り合いへリツイートしていただければ本当にありがたく存じます。
目標金額は3000万円で、達しなかった場合は返金いたします。
期間は4月9日(土)から6月7日(火)の59日間です。
びわ湖トラストの総力を挙げて、目標を達成しようと思っております。
重ねてご支援をよろしくお願いします。
びわ湖トラスト
ジュニアドクター育成塾実施主担当
事務局長 熊谷道夫
トラストの活動自体が、ご賛同いただけるみなさんのご寄付や助成金で成り立っていますが、それはふだんの調査研究教育の諸活動の貴重な資金となっており、本格的な修繕をする費用はそこからは捻出できない状況です。
そこで、広くみなさんからのご寄付をお願いしたいと考え、クラウドファンディングに挑戦しました。
ご支援をぜひよろしくお願いいたします。
また、可能でしたら、お知り合いへリツイートしていただければ本当にありがたく存じます。
目標金額は3000万円で、達しなかった場合は返金いたします。
期間は4月9日(土)から6月7日(火)の59日間です。
びわ湖トラストの総力を挙げて、目標を達成しようと思っております。
重ねてご支援をよろしくお願いします。
びわ湖トラスト
ジュニアドクター育成塾実施主担当
事務局長 熊谷道夫
2019年以降、琵琶湖が急速に縮み始めている。
この事実と、最近の地震の発生数の増加に、有意な相関がありそうだ。
面白いことだが、琵琶湖の存在は、地殻の圧縮や膨張を拡大して見せる、アンプのような役割を果たしているのかもしれない。
もしそうだとすると、琵琶湖を注意深く観察すれば、地球の呼吸を知ることができるかもしれない。
興味深い話ではないか。
(熊谷道夫「琵琶湖」を見れば、地球の膨張がわかる。数学教育2022年3月号 58~59ページ)