2017年12月14日、実験調査船はっけん号で、琵琶湖葛籠尾崎地先へと向かった。
この地は、湖底遺跡があることで知られている。
古いものでは8000年前の縄文時代の土器が見つけられている。
現地で船を係留し、最新型の水中ロボットを投入した。
思ったより湖底堆積物が多い。
水中を浮遊する粒子の数も多そうだ。
この場所は、塩津湾から吹く風と菅浦から吹く風が左右に交互で卓越するので、船の固定が難しい。
おまけにロボットのケーブルは150mしかなかった。
ゆっくりと濁りの中を進む水中ロボットのカメラが、何かを捉えた。
「壺だ!」
歓声が上がる。
その場でロボットを着底させ、水が澄むのを待つ。
現れたのは、なめらかな曲線を持つ土器だった。
どこにも傷のない完全な形の土器だ。
少しずつ前方に回り込もうとするが、ケーブルの長さが足りない。
その時、神風が吹いた。
風向が変わって、はっけん号が土器の方向にゆっくりと動き始めたのだ。
「やった!」
ついに壺の口を拝むことができた。
一緒に参加した水中考古学者が、「7世紀ころの土器かな」とつぶやいた。
600年代というのは、大津京の前あたりか?
琵琶湖の湖底には歴史のロマンがある。
かれこれ30年近く琵琶湖の湖底を研究してきたが、こんなに美しい遺物は初めて見た。
いつの日か、この壺を採取したい。
そんなことを思った。