2017年10月10日 西表島二日目
今日は、一度は行ってみたいと思っていた「秘境ナーラの滝(カヌー&トレッキング)」へ行く。
長時間シーカヤックを漕いで、さらに山道・沢道をかき分けてやっとたどり着く、秘境中の秘境と言われている。
ガイドは、昨夜のナイトツアーと同じカヌーツアー・ショップ「オハナアウトフィッターズ(OHANA OUTFITTERS)」の國見氏。今年立ち上げたばかりの新しいショップだが、オーナーガイドの國見氏は西表ではベテランガイド。

実は、ナーラの滝に行くのは半ば諦めていた。
私の場合、西表島へはいつも一人旅なので、長距離のシーカヤックを漕ぐということになると、シングル艇を一人で漕ぐか、タンデム艇(二人乗り)に他の人と相乗りと言うことになる。年齢を考えると、シングル艇では体力に問題があり、相乗りだと気ままに写真などを撮るのも気が引ける。
私が西表に来始めたころは、ナーラの滝に行けるのは、シーカヤックのベテランか体力に自信のある若者だけ、とされていた。そのため、二回断念している。

今回は、年齢的にもこれが最後のチャンスと判断。
西表の知人に紹介されて國見氏に電話を入れたら、こちらの希望(タンデム艇でガイドの前に乗せてもい、時々写真撮影)を快諾していただいた。
泊っているホテルでも「秘境ナーラの滝」ツアーを催行しているが、片道はエンジン付きの遊覧船を使うので、エコツアーとしては「邪道」と判断。往復ともシーカヤックのツアーを選択した。

赤い線がナーラの滝へのツアーコース 国土地理院

9:30 ホテルのロビーで國見氏と合流。さっそく車でシーカヤックの出発点、白浜港へ向かう。

≪白浜港≫
10:10 白浜港脇のカヌー乗り場を出発。たった一艘でナーラの滝を目指す。
他のツアーショップより随分と遅い船出だが、國見氏がいろいろ考えて時間を設定してくれた。
≪仲良川河口部起点付近≫
波の穏やかな湾内を500mほど漕ぎ、左手に「二級河川 仲良川基点」の道標を見ながら、いよいよ仲良(ナカラ)川に入る。
ここからは、マングローブの川を約14km遡る。

この「ナーラの滝」ツアーを催行するショップは、どこも「秘境」探検を売り物にしているようだ。
仲良川は、ここに至る道路もなければ当然、橋も架かっていない。両岸は見渡す限り鬱蒼としたジャングルだ。
太古の昔から続く大自然のような雰囲気だが、調べてみると実は少し違うようだ。
ガイドの國見氏の説明でも、河岸の林の奥には田んぼの痕跡があるようだ。
西表島の歴史が書かれた文献を見ると、以前は仲良川に沿ってかなり奥まで田んぼが続いていたらしい。西表島は水量が豊富なので、八重山諸島では数少ないコメが採れる島だった。奥には段々畑もあったようで、ミカン畑の跡も見られるようだ。
さらに、周辺には炭鉱もかなりあったようで、右岸の山の反対側の木炭浜というところで、私も炭鉱の入口を見たことがある。

≪木炭浜と炭鉱跡 2011年撮影≫
また、建材用の木材の切り出しも盛んだったようで、今はジャングルに覆われた西表島だが、ほとんど大木・老木を見ることがない。
これらの作業船や運搬船、釣り船やイノシシ狩りの船などで、昔の仲良川はかなり賑わっていたと思われるが、今は川岸に残る桟橋の残骸などからしか、当時を思い起こすことはできない。
西表島では、他の川沿いにも田んぼや炭鉱の痕跡を見ることができるが、今はほとんどが廃墟となりジャングルに覆われている。

≪ウタラ川沿いの炭鉱跡 2010年撮影≫
西表島は大自然が残る島ではなく、マラリアの蔓延など、暗い歴史が大自然に戻した島なのだろうと思う。(あくまでも個人の意見です)

潮が満ちてマングローブの頭だけが出ている水域を進む。この辺りのマングローブは、台風でなぎ倒された後に復活した場所だということで、周辺の若木はどれもまだ背が低く、満潮時の今はかなり水没していた。(たぶんヤエヤマヒルギ)
今日は気温が32度ほどありかなり蒸し暑いが、川面を渡る風が心地よくてあまり汗もかかない。やはり10月に来てヨカッタ。

マングローブの流域を過ぎると、川は急激に幅が狭くなる。


季節外れの「サガリバナ」もけっこう浮かんでいて、これから咲くツボミも見られた。

12:17 カヤックの終点に到着。休まず漕いできて、ここまで2時間余り。
12:25 これから先は、カヤックを置いてトレッキングとなる。

上陸してすぐに、「サキシマカナヘビ」を発見。ジッとこちらを見つめてなかなか可愛い。

キノボリトカゲをからかったり、花を眺めたりしながら山道を進む。すでに帰り道の、他のツアー3組とすれ違う。


沢渡りなどもあって・・・。

前方に、滝が見えて来た。

13:05 念願かなって、秘境ナーラの滝に到着。
動植物のレクチャーや他のツアーとのすれ違い待機などもあって、40分ほどのトレッキングだった。
滝周辺には、すでに誰もいない。

≪ナーラの滝(仲良川の滝)≫
独占状態で滝を満喫。滝は雄大だが、水量はイマイチか・・・。
一眼レフカメラとミニ三脚を担いできたので、一応スローシャッターで撮影。
前回の「ユツン三段の滝」の時も、滝をスローシャッターで撮影してみたが、やはり南の島では高速シャッターが合う様だ。

ガイドの國見氏の奥さん手作りのお弁当をいただいた後、コーヒーや果物で癒されつつ、ノンビリ滝を眺めて過ごす。

14:35 滝を出発。もう少しマッタリしていたいが、明るい内に白浜港に戻るにはもう時間的に限界。再びジャングル・トレッキング。

15:05 ナーラの滝から復路は30分ほどで船着き場に到着。白浜港へ向けて漕ぎ出す。

下りはシラサギが数羽現れて、カヤックを先導。
下流域になると、小さな鳥たちもカヤックの周辺を飛び回る。干潮になって、餌を採りやすくなったようだ。望遠レンズを持って来ていないので撮影は無理。


16:40 干潮でできた干潟に上陸して、ビーチコーミング。

ヒルギの落ち葉が突き立っているのは、シオマネキ(カニ)の巣穴か・・・。

トントンミー(トビハゼ)もウジャウジャ歩き回っている。

夕陽が眩しい広大な干潟。往路では、完全に水没していたのだが・・・。

再び漕ぎ出し白浜港に近づいてきたら、無事帰還を祝福するように、山の向こうに虹が出現。
虹は次第に近づいてきて、白浜小学校の屋根から立ち上がるようになった。このまま我々の頭上を越えて行ってしまうのではないかと錯覚するが、そんなことはあり得ない。
どうも、正面の黒い雲が小雨を降らせながら、どんどんこちらに近づいて来ているかららしい。パラパラと雨粒も落ちて来た。

17:30 白浜港に到着。予報では傘マークも出ていたが、幸い天気にも恵まれ、念願だった「秘境ナーラの滝」は、達成感のある楽しいツアーでした。
オジサンの希望を叶えてくれた、オハナアウトフィッターズのガイド國見氏に感謝。

20:30 ホテル近くの「キッチン イナバ」に飛び込みで入り、生ビールをグビグビ。西表名物イノシシ汁を食べたが、隣の席の人が食べていたガザミパスタにすれば良かったと、反省。イノシシ狩りの解禁は、来月11月からでした。
明日は、鍾乳洞撮影に挑戦する。