キンポウゲ科イチリンソウ属の「シュウメイギク(秋明菊)」。古くに中国から入ってきた帰化植物で本州~九州の山野で見られる。秋に菊のような花を咲かせ果実は直径1センチほどの球形になる。果実は熟すとほぐれて綿毛に包まれた種子が風に吹かれて散布される。
尾根緑道の道端で見られる「フデリンドウ(筆竜胆)」の越冬芽。リンドウ科リンドウ属の越年草もしくは二年草で北海道~九州に分布し陽当たりの良い山野に自生している。3~5月に直径2~2.5センチの筒状の花を数個咲かせる。初夏に果実を稔らせ種子を散布した後は地上部が枯れ晩秋に新しい種子から写真のような越冬芽を出す。
鑓水“絹の道”付近の道端に生えている「コケリンドウ(苔竜胆)」の越冬芽。リンドウ科リンドウ属の越年草もしくは二年草で本州~九州に分布し陽当たりの良い草地に生育している。花期は3~5月で直径5~6ミリの筒状の花を数個咲かせる。夏には地上部が枯れるが晩秋に種が発芽し越冬して翌年の春に開花する。
カタクリやセツブンソウなど春に開花し夏には地上部が消えて後は地下で過ごす多年草は“スプリング・エフェメラル(Spring Ephemeral=春の妖精)”と呼ばれるが、本種やフデリンドウも夏には地上部が消えるので“スプリング・エフェメラル”と生育形態は似ている。ところがカタクリやセツブンソウと違って本種は多年草ではなく生命はリセットされるが、これも“スプリング・エフェメラル”と呼んでも良いだろう。
ハマウツボ科(←ゴマノハグサ科)クチナシグサ属の「クチナシグサ(梔子草)」。イネ科植物から栄養を取る半寄生の越年草で落葉樹林内に生育している。花期は4~5月で果実は夏に熟す。晩秋には地上部が枯れるが、地表に長さ1センチほどの越冬芽が密生して出現する。
高尾山"1号路”浄心門付近の参道脇に生えている「ハダカホオズキ(裸酸漿)」。ナス科ハダカホオズキ属の多年草で8~9月に直径1センチほどの淡黄色の花を下向きに咲かせ果実は晩秋に赤く稔る。同じナス科のホオズキやヤマホオズキは花後に萼片が成長して果実を包むが、本種は果実が剥き出しになるので“裸”の名を付けられている。高尾山系では蛇滝道や4号路など各所で見られるが、ナス科特有の連作障害があり多年草ではあるものの数年経つと消滅してしまう。
ユリ科ホトトギス属の「キイジョウロウホトトギス(紀伊上臈杜鵑草)」。紀伊半島南部に自生する多年草で日本固有種。8~10月に茎が伸びて50~80センチになり葉腋に長さ4~5センチの黄色い筒状の花を咲かせる。果実は3稜のある長さ3~4センチの細長い蒴果になり熟すと上部が3つに割れ中から直径2ミリほどの円盤状の種子を多数零す。これは町田市忠生の簗田寺のもの。
鑓水の竹林に生育している「クロヤツシロラン(黒八代蘭)」。ラン科オニノヤガラ属の多年性菌従属栄養植物で9~10月に地面スレスレに黒褐色の目立たない花を咲かせ果実は晩秋に稔る。花期はやぶ蚊の攻撃もあり小さな花を探すのは大変だが、果実時になると草丈は20~30センチになり、またやぶ蚊もいなくなるので容易に見られる。果実は熟すと縦に割れてラグビーボール状になり中から細かい種子を放出する。
モウセンゴケ科ムジナモ属の「ムジナモ(貉藻)」。1890年(明治23年)に牧野富太郎博士が江戸川河川敷の用水池で発見し『植物学雑誌』でムジナモの名前で発表された。牧野博士による発見からは日本各地で発見されたが開発や台風による水害などで各地の自生種が絶滅し、最後に残った自生地、埼玉県羽生市法蔵寺沼でも台風による水害や流入した農薬の影響で1967年(昭和42年)に絶滅した。
しかし宝蔵寺沼では羽生市や地元の保存会などが15年にわたってムジナモを育て、天敵のウシガエルを駆除するなど環境を整備した結果、このたびその数が110万株を超えるほどに増え自然状態で繁殖していることが確認された。
埼玉県は来年3月に改定するレッドデータブックでムジナモの分類を現在の“野生絶滅(EW)”から1ランク下の“絶滅危惧1A類(CR)”とすることにしたという。環境省によるとこのような改訂は野鳥のトキが野生復帰して以来のようだ。
写真は東京都立大学牧野標本館の水槽で栽培されているものだが、近い将来、東京都の湖沼でも復活することを願っている。
長沼公園“霧降の道”に生えている「シオデ(牛尾菜・四緒手)」。シオデ科(←ユリ科)シオデ属のつる性多年草で雌雄異株。全国各地の山野に分布するつる性多年草で7~8月に淡緑色の花を咲かせ秋に直径1センチほどの球形の果実を稔らせる。果実は液果で中に長さ4~5ミリの種子が数個入っている。
キジカクシ科(←リュウゼツラン科・ユリ科)ギボウシ属の「コバギボウシ(小葉擬宝珠)」。本州~九州の山野の陽当たりの良いやや湿った場所に分布する多年草で草丈は30~40センチ。7~8月に淡紫色~濃紫色の花を横向きに咲かせる。果実は長さ2.5~3センチで中には薄っぺらい長さ1センチほどの種子が多数入っている。これは蓮生寺公園のもの。