奥高尾“もみじ台南巻き道”に生えている「ヌルデ(白膠木)」。ウルシ科ヌルデ属の落葉小高木で雌雄異株。7~8月に枝先に円錐花序を出し直径5ミリほどの小さな花を多数咲かせる。果実は直径4~5ミリでその表面には白いリンゴ酸カルシウムが付いている。これを舐めるととても塩辛くヌルデには“ショッペノキ(塩っぺの木)”“シオノキ(塩の木)”“シオカラノキ(塩辛の木)”などの呼び方もあり野鳥や小動物にとっては貴重な塩分補給食となっている。
高尾登山電鉄・清滝駅前広場で高尾山登山者や行楽客を見守り続けていた「ソメイヨシノ(染井吉野)」は老木化や腐食による倒木の危険性があるため、管理する都多摩環境事務所が今年9月に伐採した。それに先立ち9月2日に高尾山薬王院の佐藤貫主による読経と地元関係者らの焼香による供養が行われた。先日、高尾山口駅を訪れると老木は既に無く2メートルほどの切り株が残っていた。ここからひこばえが生えてまた復活してくれると嬉しい。
奥高尾“一丁平北巻き道”の木陰に咲いている「シラネセンキュウ(白根千きゅう※)」。セリ科シシウド属の多年草で草丈は80~150センチ。9~11月に茎頂や分枝した茎の先端に複散形花序を付ける。小さな花序は直径3~4センチでひとつの小さな花は直径5ミリほど。中国原産の薬用植物である“千きゅう※”に似て日光白根山で発見されたことから名付けられている。三重県鈴鹿山系に多いことから「スズカゼリ(鈴鹿芹)」とも呼ばれる。
※“きゅう”の漢字は草かんむりに弓。
高尾山“いろはの森コース”の木陰に生えている「ミヤマシキミ(深山樒)」。ミカン科ミヤマシキミ属の常緑低木で雌雄異株。花期は3~4月で果実は秋に赤く熟す。シキミの名を持つがマツブサ科のシキミとは違う仲間。果実にはアルカロイド系の毒があり、誤食すると痙攣などの中毒を引き起こす。
奥高尾“日影林道”の林縁で咲き始めた「ナギナタコウジュ(薙刀香じゅ※)。シソ科ナギナタコウジュ属の一年草で草丈は30~60センチ。秋に長さ7~8センチの花穂を出し片側に淡紫色の小花を多数咲かせる。少し反り気味の花穂を薙刀に見立てて名付けられている。全草にシソ科らしい香気がある。
※じゅの漢字は草かんむりに需
高尾山“4号路”で見られる「オクモミジハグマ(奥紅葉白熊)」。キク科モミジハグマ属の多年草で8~10月に直径2センチほどの頭花を穂状に咲かせる。頭花は3個の小花から成っていてひとつの花の花冠は5裂している。葉は茎の下部に付き掌状に浅裂している。
長沼公園“野猿の尾根道”に生えている「ハダカホオズキ(裸酸漿)」。ナス科ハダカホオズキ属の多年草で8~9月に直径1センチほどの淡黄色の花を下向きに咲かせる。同じナス科のホオズキは花後に萼片が成長して果実を包むが本種は萼片が成長せずに果実がむき出しになる。果実は直径8~9ミリの液果で中に長さ2ミリほどの種子が多数入っている。ハダカホオズキは連作障害の性質があり数年経つとその場所から消滅してしまう。
奥高尾“小仏城山巻き道”の陽当たりの良い場所に生育している「ヒキオコシ(引起し)」。シソ科ヤマハッカ属の多年草で草丈は2メートルほどになる。北海道~九州の丘陵や山地に分布し9~10月に茎の上部や葉腋から円錐花序を出し長さ5~6ミリの小花を多数咲かせる。この日は花がほとんど終っていて辛うじて残っていた数個の花を見ることができた。葉を齧ると強い苦味があるが、その昔、弘法大師が山道で倒れていた行者にこの野草を絞った汁を飲ませたところ、すぐに立ち上がったということから“引き起し”という名が付けられたという。この全草を乾燥させたものが生薬の“延命草”で健胃薬として古くから利用されている。
高尾山“4号路”で多く見られる「カシワバハグマ(柏葉白熊)」。キク科コウヤボウキ属の多年草で本州~九州の山地のやや乾燥した木陰に分布している。草丈は30~90センチで9~10月に茎の上部に頭状花序を出し直径2センチほどの頭花を数個咲かせる。葉は長さ10~20センチの長楕円形で縁に粗い鋸歯がある。この様子をカシワの葉に見立てているがそれほど似ているとは思えない。