闘え!文庫魂

空手を愛する熱い仲間たち
金沢文庫木元道場生におくるメッセージ

JFKO第7回全日本フルコンタクト空手道選手権大会(その2)

2022年06月04日 | 道場日記
 第2グループは男子軽中量級で手島一翔選手が出場します。手島選手は今まで60キロ未満の軽量級で戦ってきましたが、すでに代表権を得ている第7回世界ウェイト制大会の軽量級が65キロ未満であることを受け、今回は70キロ未満の軽中量級へのエントリーとなりました。パワーアップ、バルクアップを含めた体重の増量と、4月より新たにスタートした新社会人としての生活リズムをつかみながらの稽古は大変だったと思います。それでも強い意志と使命感、職場やご家族の理解を得て可能な限り時間を作り激しい稽古行いました。強敵揃いの大会ですが特に今回は厳しいトーナメントとなり、初戦から去年の3回戦進出者、それ以降は全てベストエイト以上の実績を持つ選手との戦いが続きます。いつもは決勝に至るまでの予想される対戦相手の対策を練るのですが、余りに強敵揃いの為、稽古の焦点を絞る為、具体的な対策は初日に絞って稽古を行わざるを得ない程でした。
 初戦の相手も強豪ですが、対策通り相手の攻撃が出しにくい形を作り、こちらからは強い突きを集めて判定勝ちを収めます。そして2回戦の相手、呉屋選手は昨年のベスト8です。しかも、負けた試合も最終延長2:3という僅差ですし、過去に他の体重別全日本大会の優勝経験者でもあります。速い突きの連打から膝蹴りや前蹴りが襲ってきます。手島選手がインファイトから突破口を見出そうとしますが、上手にいなされます。そして本戦判定負けを喫します。残念な結果ですが、止まっているわけにはいきません。4ヶ月後には世界の強豪と戦うのです。直ぐに稽古スケジュールを立て直し、上向きのリズムを作らねばなりません。私も受け入れの時間の幅を広げて稽古時間の確保の一助となります。
 第3グループは男子中量級で木内滉人選手が新高校生として、初めて一般の試合に挑戦します。木内選手は渡辺愛梨選手と同様、高校受験と稽古を両立させて、この舞台に立つ事を選んでくれました。80kg未満の中量級になりますと、体格も大きく、背の高い選手も多く見られます。無差別の全日本で活躍している選手などもいますので、アップ場や試合場でも迫力のある動きが増えていきます。
木内選手の初戦の相手はなんと塚本師範の息子さんの塚本慶次郎選手です。右脇腹への突き、膝、そして上段膝蹴りをクリーンヒットされないように気をつけながら、近間で突き、下段を出そうという作戦でした。そして試合開始15秒、警戒していた突きから中段膝、頭が下がったところに上段膝を顎にもらい一本負けでした。
 木内選手は決して弱くありません、塚本選手が強いのです。なぜ15秒で試合が終わったのでしょうか。それは相手を倒しに行ったからです。倒されない事だけを考えて動けば2分間戦い切る事も可能です。でもそれではいつまでも勝つ事はありません。稽古から逃げず、試合から逃げず、戦うことから逃げなかったからこその15秒と言う時間なのです 。そのことを選手の皆の前で話した時、共に戦う仲間達は深く感じ入り、涙を流す者もありました。懸命に己と戦って時間を過ごしたからこそ、そんな時間を共有したからこそ通ずる心の絆です。そして渡辺愛梨選手共々、引き続き挑戦を続けてくれることを約束してくれました。ここで改めて申し上げます。強いから試合に出るのでは無く、試合に出て強くなるのです。たとえ今日破れても、来るべき勝利に向かい歩き続けるならば今日の敗戦も自分にとって大きな価値のあるものになります。先生も、事務長も、道場も、仲間たちも君達と共に歩きます。一緒に前に進んでいきましょう。

大会の模様は
BS Jスポーツ3にて
6月5日(日) 21:00〜24:00に放映されます。
スカパー未加入の方もご覧いただけますので是非ご覧に下さい。

(その3)へ続きます。


JFKO第7回全日本フルコンタクト空手道選手権大会(その1)

2022年06月04日 | 道場日記
 5月21 日(土)22日(日)、大阪エディオンアリーナ(大阪府立体育館)においてJFKO第7回全日本フルコンタクト空手道選手権大会が開催されました。
例年通り前日の夕方、選手と待ち合わせて体育館の前に集合します。その日は体重測定と抗原検査が行われます。この2つをクリアしないと試合に出場できないので、充分な準備と対策を取ったとは言え、一種の緊張感を伴った時間です。会場には入れませんので入り口の外で選手の保護者の方とお話をしながら選手たちが出てくるのを待ちます。今回から女子の階級分けに変更があった為、体重調整が必要な選手がいましたが、全員体重測定と抗原検査をクリアすることができました。集合時間の早い第1グループの女子3名と待ち合わせ時間を決めその日は解散します。
 5月21日(土)、第1グループの女子3名の選手と会場前に集合します。女子軽量級手島海咲初段、女子軽中量級梅澤彩音初段、女子軽重量級渡辺愛梨1級の3名です。例年通り試合前のアップは選手の希望に沿った形でおこないました。
 今年は昨年と違い、試合は有観客での開催となりました。選手達の稽古の成果を、闘う姿を保護者、関係者を含め、多くの方に直接の見ていただけるのはやはり嬉しいものです。選手もより高いモチベーションを持って戦えると思います。今年もアリーナインは自分の試合の5試合前からです。
 新高校生の渡辺愛梨1級の対戦相手は他流の黒帯の選手でした。突き、下段にとどまらず上段の足技、フットワークのある選手でしたので、顔面をガードしながら間合いを詰めて自分の技をしっかり当てていく作戦でした。しかし、この試合は足を止め正面でから激しい打ち合う展開でした。残念ながら本戦の判定負けでした。今まで様々な大会を戦い経験を積んできた渡辺選手は攻撃が止まったり下がらされたりする事無くしっかり戦いました。渡辺選手の攻撃は決して弱い方ではありません。それでも全日本で戦って勝つためにはもっと攻撃の強さが必要です。女の子らしい計画的な時間の使い方で受験や試験勉強と空手を両立するスケジューリングで稽古に出席してくれています。渡辺選手の戦いは始まったばかりです。これからもっともっと伸びてくれると信じています。
 梅澤彩音初段は初戦、他流の実力者に得意の突きで判定勝ち収めます。そして今大会の大きなポイントになるであろうと、対策に多くの時間を使った小嶋夏鈴選手との対戦を迎えます。この小嶋選手とは第52回全日本の1回戦で対戦していますが、その時は試合終盤サイドステップを織り混ぜた突きと下段で崩されて判定負けを喫しています。動きにバネがあり、突きと蹴りにスピードど威力が有ります。近間からの上段への中足の蹴り等、上手に混ぜてきます。梅澤選手はこの試合に向けて「相手に崩されない事。自ら崩れない事。相手を崩す事。」に必要な能力の習得を目指しました。そして本戦2:0、延長4:1で見事判定勝ちを収めました。
 入賞ラインのベスト4をかけた戦いの対戦相手は予想していた宇都宮美咲選手を破って上がってきた渡部はるあ選手でした。必勝を期して臨んだ戦いでしたが、密着に近い間合いで戦う相手選手に梅澤選手の攻撃が良い形で当たりません。それでも徐々に攻撃が当たり始め残り15秒、相手の正拳突きが梅澤選手の顔に当たり試合が止まり相手選手に注意が与えられます。そして試合終了。残念ながら本戦で相手に3本の旗が上がり、梅澤選手の準々決勝敗退が決まります。
 怪我を考慮に入れた稽古方針の転換により梅澤選手はとても良い動きを手に入れました。しかし、指導者としてその判断をもっと早くしてあげるべきであったと反省しています。
「人生で一番悔しい日です。」と述べながらも
「後一歩、二歩を乗り越える覚悟を決めました。」
と前を向いてくれました。
胸を張って、顔を上げて、目を見開いて歩く梅澤選手には素晴らしい未来があると信じています。
 手島海咲選手は前年度優勝者として同階級のすべての選手の目標となります。手島選手の得意な攻撃を避け、得意な動きを封じ、弱点となる部分を研究し攻めてきます。実際に初日に当たった2人の選手は過去に対戦経験のある選手でしたが、前回の対戦に比べ手島選手に強い攻撃を的確に当ててきました。無論、手島選手もそれを予想し、今までにない攻撃を習得し、封じてくるであろう動きを上回る動きで、弱点を克服した状態で試合に臨み戦います。
手島選手は初日を勝ち抜き、ベスト4を決め、入賞ラインを超えると同時に、翌日の決勝日に進みます。
(その2)に続きます。