山岳ガイド赤沼千史のブログ

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13黒部川上ノ廊下遡行「祭り」

2013年08月20日 | ツアー日記

 黒部川上ノ廊下は、黒部ダム上流の東沢出会いから上流の薬師沢出会いまでの間を言う。黒部川は日本有数の大河であり、しかも、北アルプス鷲羽岳をその源とし、富山湾に注ぐまでの標高差が大きく流程が短いので日本第一の急流である。この上ノ廊下の遡行は沢屋なら誰でもが憧れる本流遡行の集大成なのだ。僕らが毎年ここを遡行して、いったい何年になるだろう。10数年になるだろうか。ここには数々の思い出と、撤退を含めた苦い体験の場所でもあるのだが、その反面、上ノ廊下は僕らを強く引きつけ捕らえて離さない。季節は夏、何を置いても僕らはここを訪れることを優先させている。謂わば、「ライフワーク」なのだ。そして、今回歩きながらガイド達は考えた。僕らにとってここはいったい何なのか?そして気がついた、それは・・・・・・・「祭り」であると。

黒部側の洗礼 ワッセワッセ言いながら腰を入れて渡渉する

水面を引きずる、それもアリ!

とびこめーー!これもアリ!

ロープで強引に引っ張る、これだってアリ!

大淵の脇を水中ヘツリ

口元のタルゴルジュの弱点を探す小林と西山

口元のタルを引き抜く

 上ノ廊下には口元のタル沢という核心中の核心部がある。ここは200メートル程続くゴルジュ帯であるが、両岸が岸壁に因って狭められ、巨大な淵と大岩が積み重なった白泡の落ち込みが連続し、しかも抜けきるまでいっさい陽が当たらない。ここの突破は容易ではなく、且つ毎年その状況が変化するので、一定のセオリー見たいなものは通用しない場所なのだ。上ノ廊下全体がそうであるのだが、ひとたび大雨によって大激流になると河床は一変し昨日とはまるで違った場所となってしまう。「あれ?こんなとこあったっけ?」それがここの遡行の楽しさであり、何年訪れようが僕らを飽きさせない理由でもあると思う。その、もっともエキサイティングな部分がここ口元のタルで、ここを突破出来るか出来ないかが遡行の可否を決定していると言ってもいいだろう。左岸をへつって激流に飛び込んだり、右岸の壁のバンドを斜上して懸垂下降をしてみたり、その方法は様々だ。だが、大高巻きはなるべくしない。高巻きは体力と時間を消費し、何より墜落など可能性があり非常に危険である。なるべく水線通しに行くことが沢の鉄則である。そうであればただ流されるだけで済む。(笑) 

口元のタルを突破、みんなニッコニコ。 ザックをウキ代わりに、別に泳げなくても大丈夫です、マジで。ガイドが引っ張るんだから。

歓喜!祝福!のシャワー

上ノ黒ビンガ

 今年は一粒の雨に降られることもなく快調に遡行は続いた。だがスクラム渡渉(支え合って対岸に渡る技術)の他にロープを使った泳ぎと渡渉は頻繁で、いったい何度それを使ったのか数えることが出来ないほどだ。近年沢が土砂に因って埋まり気味であったのだが、浅くなっていた淵がここ数年で次第に深くなりつつある様な気がする。河床が安定して、岩盤も現れカチッとした歩行感覚が味わえるが、渡渉自体は深い分難しくなる。でも、そこがこの上ノ廊下の醍醐味だから僕らは楽しくて仕方がない。毎年このお盆頃に登るのも、その水量が目当てで、9月の渇水期などには、スクラムを組むこともなく、ただただ、パシャパシャ歩いて終わってしまう事さえある程だ。そんな上ノ廊下は楽しくないし、僕らは認めない。この時期黒部の水は冷たく重い。他の川では味わえない重量感がある。上ノ廊下は別格なのだ。

対岸から薪を運ぶ

完熟バライチゴ

蕎麦掻き(自家製粉) 美味いぜこれ、酒が進む

西山が釣った黒部岩魚27センチ

皮むきを西山に伝授

 岩魚とアボカド、マヨネーズ、醤油、ワサビ和え

岩魚のなめろう 絶品!

岩魚の握り なんて素敵な夕食、小林作 豪放にに見えて繊細な男。僕はめんどくさくてここまでしない。

朝の鄙寿司 目に鮮やかな食事は元気の素。うまかった、さあ行くぜ!(海苔忘れた)

お客さんはテント、ガイドは左のタープに潜り込んで寝る

一日目の夜、金作谷

二日目の夜 上の広河原 なんか怪しげだが、和やかな夜。

 沢中第1日目の宿を金作谷出会いに求め、翌日朝一番の大淵に飛び込む。黒部側の川幅はいきなり10メートル程に狭められ、淵の深さも5メートル以上はあるだろう。もちろん陽射しは入らず、全身ずぶ濡れの我々はガタガタと震えロープ渡渉の順番を待つ。早く歩こうよ!しばらく続くこの付近のゴルジュ帯突破は泳ぎ、ロープ渡渉、ヘツリの連続で実に面白かった。抜け出たところで陽の当たる大岩にみんな抱きついて体を温める。お日様って素敵!

黒部の白い石は陽が当たればとても暖かい、あったまろう

ここの水流が一番強烈だった。背の高い僕でいっぱいいっぱい。突破後、ロープを使ってアシストする

降り注ぐ光

簾滝

朝一番で泳ぐ、なんてこたあない、気持ちいい。

金作谷上部ゴルジュ帯の始まり始まりーーー。

ドン深スクラム渡渉

 沢中二日目の宿は立石上部の広河原とした。ここは安定した河原で釣りにも向いている。以前ここで大増水に見舞われたことがあった。夜半から降り始めた雨は早朝、我々のテントサイトを中洲にし始めていた。

「逃げろ!」

テントを丸ごと引きずって慌てて山に退避。お客さんのテントは何とかひと張り張れたが、僕らガイドは激流が直ぐ下にぶち当たる栂の森のちょっとした平地に、タープを張り、ツェルトにくるまってその日を耐えた。雨と川風が吹き付け、全ては濡れ惨めな気分だった。大増水の本流は真っ茶色にうねり、巨大な流木が次々と流れ、河床の巨岩が一日中ゴンゴンと音を立てて転がり、辺りにはきな臭い臭いがたちこめていた。夜中であれば火花が散っているのが見える。そんな時である。今回は訳あって不参加の下條ガイドが一人、火をたき始めた。小林と僕はそんな事はすっかり諦めていたし、「無理だよ下さん」と言ったのだが、下條は諦めない。僕らも手伝って山の斜面の濡れ落ち葉をひっくり返し、その下から少しでも乾いた枯れ葉を見つけ、根気よく火種を大きくし、とうとう濡れ木が燃える程の焚き火をすることが出来たのだ。そして激流を逃れて川岸に避難している岩魚を釣り、天ぷらをした。

 諦めぬ事が、生へ向かうベクトルを明確なものにし、僕らを再生させる。背中を丸め落ち込んでいても、ここから脱出は出来なかったであろう。奇跡としか言いようがないが、翌朝ぼくらは水位が下がった黒部側を渡渉し対岸の斜面を彷徨って高天原峠にエスケープする事が出来た。この時のただ一回の濁流の渡渉の数分後、この河原は高さ1メートルの鉄砲水に襲われた。まさに間一髪。こんな苦い思い出は実はまだまだ沢山ある。

 さて、今回の最終日、僕らは1時間ほど最後のゴルジュ帯を突破して登山道のあるA沢の出会いに達した。見てくださいこの笑顔。達成感、一体感、喜び、感動、全てがあふれ出すこの笑顔。全員が来年の予約。僕は自信を持って思う、そんな登山はそうそうあるものではない。

 最後に、今回体調不良の僕に代わって小林ガイドと西山君には大変お世話になった。ありがとう!西山格好良かったぜ!

 この後我々は灼熱の登山道を喘ぎ喘ぎ歩き、バテバテになるのだった。早くも来年の「祭り」が待ち遠しい。

 

PS:このブログの写真は時系列に沿って掲載されておりません。適当です。これを頼りに黒部川上廊下を遡行するのは危険です。

 

 

 


黒部川上ノ廊下とり急ぎご報告まで

2013年08月19日 | ツアー日記

この黒部川上ノ廊下というところ。

言葉では語り尽くせぬところ。

僕らは毎年ここを訪れる。

失敗してもまた。

何度でも、何度でも。

何故だろう?・・・・・・それは解ってる、最低で最高だからさ。

今日もまた、ぼくのからだにはお前が流れている。

ずっと。

 

報告は後日、取り急ぎご報告まで。


猛暑お見舞い申し上げます。

2013年08月11日 | 雑感

 本日は全国的に猛暑と言う事で、涼やかな一枚にてお見舞い申し上げます。これは少し前の白馬の田園。20年ほど前にドイツ人の女性を案内した時もこんなだっただろうか。彼女はしきりにドイツ語で「美しい!、素晴らしい!」を連発していた。

 安曇野界隈の夏、熱いのは同じである。しかし午後になると必ずと言っていいほど北風が吹いて、これを家の中に取り込むと室内は一気に涼しくなる。田を渡る風は涼やかなのだ。

 だが、最近の家は北側を忌み嫌い、トイレの窓とか小さな窓しか設けない。冬暖かなことを最優先に作られているのだ。そして夏はクーラーをぶん回す。

「住まいは夏を旨とすべし」

大切な日本人の知恵があるのに、近頃の建築家はバカだなあと思う。

東京ではどうにもならないが。


熊に出会える里

2013年08月08日 | 蝶よ花よ獣たちよ

 赤木沢からの帰り、折立から有峰ハウスに向かって、トロトロ車を走らせていたのだが、視界の隅にちらっと黒い影が見えたのでそちらを見ると、それはなんと熊の親子であった。有峰ハウスの直ぐ近く。慌てて車をバック。そこは、アスファルト道路脇のちょっとした空き地の奥で、熊は我々のことなんか全く意に介せず、地面をゴリゴリ掘っている。なにかの根っこでも掘り出しているんだろうか?その距離は約15メートル。まるで、サファリパーク状態だ。因みに僕はこの有峰湖周辺で車を走らせただけでかなりの確率で熊を目撃している。多分7割以上の確率。

 子熊の方は「おかあさん。なんか来たよ」と藪の中に逃げ込んでしまったが、母親は全く平気だ。小熊が自分のテリトリーの中にいるから、非常に落ち着いている。これが道を挟んで反対側に僕らがいたら、多分車に体当たりをされるだろう。熊の破壊力は尋常ではない。ものすごい腕力だし、その爪はまるで5本のナタを手に装着しているようなもんだ。ブナの木肌によく熊の爪痕を見つける。彼らがブナの実を食べようとブナの木に登っただけで、くっきりとその爪痕が残る位だ。興奮した熊に顔でも殴られたら、その半分はえぐれ無くなってしまうだろう。

 しかし、この熊は全く戦う意志などない。立ち去ろうともせず、かといって僕らの方に顔を向けてくれるわけでもない。もどかしくなった赤沼監督は、決定的写真を撮るべく「ウォー!」と奇声を上げてみた。それに興奮した熊が突進してくるのを撮り逃げしようというのだ。車のギアはドライブに入れたまま。いつでも発進してやるぜ。

 ところが熊たちは、「もう、いいとこだったのに、めんどくさいなあ」という感じで藪の中に消えていってしまった。一番興奮していたのは赤沼監督で、次が後部座席の助監督達(お客さんたち)だったのだ。

解りづらいが左側の黒いものが小熊だ

一心不乱に穴を掘る 無視され続けるのは辛い

おそらく100キロを越える巨体、巴投げなど問題外

 


日本一の美渓流黒部川赤木沢遡行と太郎沢8月4,5,6日

2013年08月07日 | ツアー日記

 今回はいよいよ沢登りの適期を迎えての、黒部川赤木沢の遡行だ。日本一の美渓と言われるこの沢は、黒部川の薬師沢上流にあり、岩盤のナメと滝が連続し、沢は東向きで明るく開放的な沢だ。先ずは折立から太郎平を越えて薬師沢小屋へ入る。

 カベッケヶ原を過ぎると、黒部川の本流の音が近くに聞こえる様になる。足下に美しく澄んだ大淵が見えると今日の宿薬師沢小屋はもうすぐだ。午後2時頃小屋に入って、僕と小林は黒部川上流へ釣りに出かけた。少しだけでも一匹だけでも、黒部川の岩魚に会いたい。ここの釣りが難しいのは解っている。ここ薬師沢周辺は、釣り師ならば誰でも憧れる釣り場で、入渓するものも多く岩魚はスレている。スレるとは毛鉤や餌をよく知っていて簡単には食ってくれないと言う事だ。午前中からの釣りであればまだしも、この日もやはり難しく結果は3匹のみ。だが、その姿はヒレが大きく張って実に美しい。黒部川の激流を泳ぎ切るには大きなヒレが必要だからだ。

黒部岩魚24センチ

岩魚の造り、素晴らしい弾力と甘み

アラや皮までもすべて素揚げにし塩を振る、パリパリ骨煎餅。ビール頂戴!

 朝起きると天候は小雨、澄み切っていた黒部川は夜中に降った雨の為か番茶の様な色になっていた。昨日に比べ5センチ程水位は上昇している。なんとか本流だけ頑張って赤木沢に入ってしまえば遡行は可能だろうと言う事で、装備を装着し入渓する。股下ぐらいまでの渡渉を数回やって、最後左岸を少し高巻いて赤木沢出会いに到着した。やはり黒部の水は冷たくずっしりと重い。

増水気味の黒部川本流を遡行する

 ここは実に美しい大淵になっていて、これから赤木沢へ入ろうとする者をうっとりとした気分にさせてくれる。赤木沢入り口は両方が岩壁になっていて、まるでぽっかり空いた穴のようだ。そこをへつって(岩伝いにトラバースすること)入って行きしばらくするといきなり空は開け、僕らは黒部本流とはまったく別の赤木沢の世界に引き込まれる。

赤木沢出会いの大淵

さあ、行くぜ!テンション上げ上げ

 ここ赤木沢は岩盤のナメと、滝が連続し両岸は美しい草付きで花が咲き乱れる。今日は日が当たらず残念だが、この沢は東向きで朝一番から朝日が入り、開放的で実に美しい。「日本一の美渓」と言われるのも納得なのである。小雨である今日でさえ充分に美しく、草付きの緑に我々のカラフルな装備が映える。水量はやはり多めで滝は白泡を激しく立て流れ下るから迫力も充分だ。前半は滝と言ってもさほど難しいものはなくて、ゴム底の沢靴がよく効いてくれる。ナメをフリクションを効かせて登るのはとても快適だ。一歩一歩をいとおしむ様に歩く。みんな、きゃっきゃいいながら、満面の笑みで沢を渡り滝を登る。この滝はどっちから攻めようかな?と考えるのも楽しい。時にはわざわざ水流の中を登ってみたり。楽しい以外の言葉がなくてごめんなさいと言いたいぐらいだ。

脇からいくらも登れるのに、ワザワザ水流の中を歓声を上げながら

花と水と少女達

ミヤマアケボノソウ(黒い貴婦人)

 今日は水量が多いので、どうしても水を浴びなければ登れない滝もあって、でもこれがまた楽しい。あ!また言っちまった、楽しいって。だって、楽しいのだ。みんな少なくとも下半身はずぶ濡れだし冷たいのは確実だが、そんな事はどうでもいい。心は一心に楽しむ方向へベクトルは向いている。こうして濡れ鼠で歩いているともう濡れている事なんて全くたいしたことではなくて、むしろ気持ちがいいとさえ思えてくる。これを、多分「達観」というのだ。心のステージが一つ上がった感覚と言おうか、なにも気にしない、全ては自由と快楽の為になんて思えてくる。

 前方に岸壁がそそり立ち、沢が右に屈曲するのが見えるといよいよこの沢のハイライト「赤木沢大滝」だ。この滝は落差30メートル程だろうか。両岸は垂直にそそり立つ岸壁で、その間を水が勢いよく噴き出し唸りを上げている。まさに爆音だ。会話をするのも楽では無い。喧嘩でもないのに大声で話さなくてはならない。ここでは死亡事故も起きている、この左岸側の岸壁をロープを使って慎重によじ登り、滝の落ち口に降りる。上から覗けば滝壺に吸い込まれそうだ。

サンショウウオ(かわゆい)

 大滝を後にしてしばらく行ってから、赤木平方面の草原にむけて右側の支流に入る。この入り口は絶対避けられないシャワーポイントだった。エイヤッ!と水を浴びつつ滝をよじ登る。でも、誰も、悲しくなったり、後ろ向きな気持ちにもならない。歓声とともに登り切ると、満面の笑みがこぼれる。

 次第に沢は急峻になり、水量は減って、いよいよ沢はフィナーレを迎える。若干カンバの木がジャングルジム状態になっているが、藪漕ぎは殆どなく、僕らは赤木平の草原に飛び出した。小さな池塘が点在した、チングルマやミネズオウの無垢なお花畑を踏みながら草付きを登る。これは沢屋だけに許された特権で、誰になんと言われようとそうしないと帰れないので勘弁して下さい。一人一人がばらけた感じで、同じ所を踏まぬように登って、僕らは赤木岳南側の稜線に到達した。ガスって、雨はいっこうに止まないが、快適な草原歩きだ。

 ここまで、休みらしい休みは取っていない。行動を止めてしまえば、とたんに体は冷え、場合によっては低体温症の恐れさえあるのだ。なにしろ全身濡れているのだから。つい先日、中央アルプスでまざまざとその現場に遭遇しているので、あのようなことにならぬよう、僕らは足を止めない。食料はポケットに入れ少しの立ち休みの間に、すかさず採る。そこら辺みなさん、手慣れたもんだ。北ノ股岳のチングルマのお花畑はみごとだった。写真家の岩橋崇至さんが一人撮影をなさっていたので挨拶をした。気合いの入った山岳写真家だ。午後2時、太郎小屋到着。

 最終日は、下山の前にコンパクトに纏まった太郎沢を昼飯前にやっつける。本日も相変わらず雨降りで、稜線縦走だったら気分も晴れないのだが、僕らはその水量の多さを期待してやる気満々であった。よい子はマネしないように。

ノリノリの少女たち 皆さんかっこヨロシ

攀る、小林

派手に水を食らうもなんのその。

痛快至極!!

にっこり 幸せ

イカすぜ、あねご!

 太郎沢は沢の規模は小さいが、急峻で滝の難易度は赤木沢よりむしろ高く楽しい沢だ。小屋からでてワンラウンド3時間ほど。派手にシャワーを浴びながら上り詰めると、辺りは次第に傾斜が緩み、お花畑が現れると、この沢旅も終わりを告げる。

「やだ!もう終わっちゃうの?」

「もっと歩いていたい!」

「ずっと、このままならいいのに」

 寂しさで心が掻きむしられるようだ。まさにそうだ、ずっとこのままならいいのに。僕らは太郎山南側の草原を行く。花が咲き乱れる。

シナノキンバイなど

僕には、若い頃心筋梗塞で一度心停止をした経験を持つ叔父がいる。いわゆる臨死体験者だ。その叔父が言う。自分は病室の空間に浮かんでいて自分を見下ろしている、そしていつの間にか暗いトンネルの中を歩いている。その先には一つの光が見えてそれに向かっていくと、突然草原が広がりこの世のものとは思えないお花畑があって、そこを気持ちよく歩いていると、その先に小川がチョロチョロ流れている。その向こう岸には懐かしい人達がみんな居て、こっちに来るな、帰れと言われ帰って来たと。洋の東西を問わず臨死体験者は概ね同じような体験をするという。

 多分僕らが今歩いている草原はそのお花畑によく似ている。ずっと歩いていたくなるような草原。後ろ髪を引かれる様な気持ちを残して歩く草原。ぼくもいつかかならずその草原を歩くことになるのだ。

薬師岳

太郎平

ゼンテイカと北ノ股岳

 

 

 


最近見た山の花2

2013年08月02日 | 蝶よ花よ獣たちよ

ヤマアジサイ

タマアジサイ(もうすぐ可愛らしい花が咲く)

ノアザミ?

思わずそうめん食べたくなるこの登り旗、華奢な線が粋ってもんでしょう!(わさび平小屋)

これも思わず食べたくなりますねえ。でも、果物は誰かが剥いてくれるなら食べるのですが僕は殆ど食べない。(わさび平小屋)

んーーなんだろ?ごめんなさい。

オオバキスミレ

オオバミゾホウズキ(上のスミレと似てるでしょ?だけど、全くの別種。しかも仲良しで同じような所に生えてる。水の気配がある灌木帯など。ゴマノハグサ科)

ミヤマキンバイ(バラ科)

キヌガサソウ(最初は純白だが次第に色が変化してくる、おなごといっしょ?いや失礼!

ヨツバシオガマ

ムシトリスミレ(その名の通りの食虫植物。四つ葉に粘りがあり羽虫などを捕らえて栄養にしてる。花は噛みついたりしないのでご安心を、タヌキモ科)

コバイケイソウ大群落、7年ぐらいの周期で大開花する、今年はその表年、とにかく凄い。その大きな葉で、他の花を圧倒してしまう。因みに昨年は一つも花が咲かなかった。違う山でも。他の年はまばらに普通に咲く。場所を越えシンクロしてるのだ。不思議。

コバイケイソウと穂高岳

タカネヤハズハハコ

ササユリその1(北アルプスでは個体数は少ないと思う)

ササユリその2

オオヤマレンゲ蕾

オオヤマレンゲ開花(これも個体数は少ない、行きに蕾だったものが二日後には開花していた)