chuo1976

心のたねを言の葉として

「はじまり」   工藤直子

2012-09-20 06:05:40 | 文学
「はじまり」   工藤直子


畠があり川があり
また畠があり森などもあって
ついには地平線がある

背中をのばして地平を見つめ
地平の奥の雲を見つめ
雲のむこうの青さをみつめ
青さのなかの見えない星を見つめ・・・・・
おお 目が痛くなるのだが
何もないあそこから
何かが始まっているようだ

光が駆け抜けた!
風が追い抜いた!
・・・・・・
空はいま
いまのいま 突き抜けた!


忘れたいことがあり
忘れたくないことがあり
判りたいことがあり
判りたくないことがあり・・・・
でも しかし・・・・
だが しかし・・・・
そんなことどもは まるで
どうでもいいようなふうに

ごうごうと地球はまわりつづけ・・・・
あらゆる生き物の鼓動をのせて
ごうごうと地球はまわりつづけ・・・・

目まいしたわたしの前に
相変わらず畠があり川がある

光が また駆け抜けた!
風が また追い抜いた!

空はいま
いまのいま 突き抜けた!

何もないあそこから
確かに何かが始まっているようだ
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「こころ」   工藤直子

2012-09-19 05:46:00 | 文学
   「こころ」   工藤直子




 「こころが くだける」というのは
 たとえばなしだと思っていた ゆうべまで
 今朝 こころはくだけていた ほんとうに

 ひとつひとつ かけらをひろう
 涙がでるのは
 かけらに日が射して まぶしいから

 くだけても これはわたしの こころ
 ていねいに ひろう
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「うみの むかしばなし」   工藤直子

2012-09-18 03:36:43 | 文学
   「うみの むかしばなし」   工藤直子


         くらげはるお


 むかしむかし おおむかし
 せかいは もんもこ してたとさ
 もんもこしてた そのときに
 ちらっと なにかが ゆれたとさ

 ゆれた はずみに こりゃどうだ
 いきもの ぽちんと うまれたよ
 それから どんどん ふえつづけ
 とんだり はねたり うたったり
 いろんな かたちに なったとさ

 だけど くらげの ごせんぞは
 もんもこ・きぶんが さいこう! と
 もんもこすがたの ままだった

 もんもこ もんもこ おくまんねん
 くらげは きょうも うみをいく
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「ぼくは ぼく」   工藤直子

2012-09-17 02:50:27 | 文学
  「ぼくは ぼく」   工藤直子


        からすえいぞう

 ときどき ぼくは
 ほんのすこし
 いろつきの はねが ほしいな と
 おもったりする

 ほんのすこし
 いいこえで うたえたらな と
 おもったりもする
 でも
 これが ぼくだ と
 とんでいく
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「満月の夜の猫の歌」  工藤 直子

2012-09-15 06:29:22 | 文学
「満月の夜の猫の歌」  工藤 直子



月が 花のようにひらいて満開になると
猫は 背のびして 弓にばける
ーー地平線で大男が 雲をこねているよ
   満月の祭りの 準備だよ
猫は仲間に会うために 矢になって飛びだす
ーー仲間を みつけたいときにぁ
   かんじんなのはカラッポってこと
   カラッポのコップのように響けば
   すずしい心が そそがれる


月が 花のようにひらいて満開になると
猫は あくびして ひげを光らせる
ーー大男がたちあがり 空で雲の旗をふるよ
   満月の祭りの合図だよ
猫は仲間と遊ぶため 光になって走る
ーー仲間を みつけたいときにゃ
   かんじんなのはカラッポってこと
   カラッポのコップのように響けば
   にぎやかな心が そそがれる
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「あめふり」  工藤直子

2012-09-14 04:18:35 | 文学
「あめふり」  工藤直子




       あめつぶじゅんこ

ようい どん と

くもから とびおりました

あめつぶみんなが はしると

それに たくさんの

あめつぶのせんが できました

  あめつぶ ひとつぶ あめ いっぽん

  あめつぶ ふたつぶ あめ にほん

  

  あめつぶ ひゃくつぶ あめ ひゃっぽん

あめつぶみんなが  はしると

かぜが おっとっと と

でんぐりがえりしました

ことりが うひゃひゃ と

くすぐったがりました

  あめつぶ ひとつぶ あめ いっぽん

  あめつぶ ふたつぶ あめ にほん

  

  あめつぶ ひゃくつぶ あめ ひゃっぽん

きょう そらは あめつぶで いっぱい

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「目ざめ」   工藤直子

2012-09-13 05:31:21 | 文学
「目ざめ」   工藤直子




朝のしらせは まず

おまえの耳もとに くるのだろうか

まだねむっていたいのか

耳が 朝をふりはらって うごく


それとも ひげのさきにくるのだろうか

ひげが いっせいに起きあがり

ひっぱられて ちいさな口があき


おまえは

花のように あくびする
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「冬の祭り」   工藤直子

2012-09-12 03:59:16 | 文学
「冬の祭り」   工藤直子




葉がおちた はだかの冬の木の

枝のさきは 寒くて淋しいか?

いいえ はればれ笑っています

枝先に 春夏秋が あつまって

出番をまって 遊んでいるから
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「やまぶどうの夢」  工藤直子

2012-09-11 05:47:27 | 文学
「やまぶどうの夢」  工藤直子




里へおりてきた 赤とんぼが

山のうわさを 聞かせてくれた

赤や黄色の 葉のかげで

やまぶどうの ぼうずたちが

はなしあっていたんだと

――オオキクナッタラ ナニニナル?


マスカットねえさんや

巨峰にいさんのように なりたいものや

ビーダマになりたい 遊びずきなど

いろいろいて 話ははずんだが

なかで一つぶ いせいよく叫んだ

――オオキクナッタラ満月ニナル!


それいらい 山のみんなは

満月の夜を たのしみにしているんだと

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「日記」   工藤直子

2012-09-10 05:41:43 | 文学
「日記」   工藤直子





ゆうがたの海は 太陽の日記帳です

雲や風と 出会ったことや

カニやカモメと 遊んだことを

光の文字で 海に書きます

海にうかぶ ちいさな島々は

あれは 句読点です


書きおとしはないかと

太陽は もういちど海を照らし

ぱたりと「今日」のページを閉じます
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札幌国際芸術祭

 札幌市では、文化芸術が市民に親しまれ、心豊かな暮らしを支えるとともに、札幌の歴史・文化、自然環境、IT、デザインなど様々な資源をフルに活かした次代の新たな産業やライフスタイルを創出し、その魅力を世界へ強く発信していくために、「創造都市さっぽろ」の象徴的な事業として、2014年7月~9月に札幌国際芸術祭を開催いたします。 http://www.sapporo-internationalartfestival.jp/about-siaf