ⅩⅩⅩⅦ 田中泯 2015/12/28 おどりを観る聴く 『エイガニッキ』 SASHI-ハラダ 2016/1/06
黒い幾枚かのカーテンが風に揺れる、靡く、天井から吊られて、閃いているのだ、淡い光の中で、中央のベッドだろうかマットが敷かれ、そこに黒づくめの踊り手が、しかも顔中を布地で覆っている、衣装と同じ黒い布地で、アラブの人、インドの人、アフリカの人、まさにシリアの人、イラクの人では無いのか、しかも黒く焼かれて灰と化した人物、爆撃に依って、座っている、死している、動き出す、錯覚、誰の、存在自身の、観ている私の、待っている踊り手の、亡霊か、焼かれただれた肉塊か、今動き出す、うごめき出す、ゆっくりと揺れながら、手を足を縮め、伸ばし、這いつくばって、横になって、足を振り上げ、足裏を見せて、顔が隠されているのだから、誰とも判明しないが、淡い光と影の中に、多様な人物の顔が見えてくる、悲しんでいる、泣いている、叫んでいる、助けを求めている、楽しんでいる、まさか、判らない、ベッドで四つん這いになって跳ねる、飛ぶ、マットを打つ、収まると、またベッドに横になり、やっとのことで立ち上がり、起き上がり、客席前に詰め寄ってくる、音楽はクラシックのバイオリンが微かに、時に音は大きくも成るが、あくまでも控えめに流れ止まり、また流れ、繰り返される、会場のビルの一階の修理工場の音も響きながら、立ち上がり舞う、リズム、腕、足、腰、頭、この動作のリズムの素晴らしさ、決して一つの動きに捕らえられない、個々の部分の揺れ、関係しながらも、統一されない個々の動きたち、腕、足、腰、頭、手、指先、膝、ロックだね、動きの破壊では無いか、見事としか言い様がない、どのようにも止まらずに飛び出し、戻り、拒み、求め、まさに、待っている、舞っている、苦悩の中、灰と化してもまだまだ舞う、何を期待して、そんな舞手がまたしてもベッドに座り、座像のごとくに座り、ゆっくり顔の巻物を取り払っていく、このサスペンス、何が見いだされる、何が現れる、音楽も緊迫して高鳴る、現れ出た光に晒された舞い手、その顔、髪は銀髪、天使とも、老人とも、女とも男とも、祈り、絶望、希望、ここに出現したのは、田中泯、いや、観ている私、あなた、殺されたシリア人、難民、テロリスト、死んだも者、生きている者、ここに現れた舞い手も取り敢えずの姿、あくまでも、あくまでも、一時の間としての、姿、偶々の姿、ベッドでまた始まりのボーズに座り、前を向き、客席を向き、終わりの挨拶、取り敢えず、田中泯として在る皮の奥には、更に何が現れる、ラストは始まりに過ぎない、次なる現れの始まりとして、これにはまた、あらためて、観ている私の、私自身の皮の奥を見つめ直さなくては、のぞき込まなくては、そして、いかに、どのようにして、何が、現れる、現れ来る、田中泯ならぬ田中泯として、私ならぬ私として、そこに舞い手と私が始まる、新しい関係として、光、影、闇、音楽、音、息づかい、の、中に、中から、巻物が取られた時のライトアップした顔、ここに祈りを観た、祈りとは始まりのこと、これまでの関係の外に、始まれ、