chuo1976

心のたねを言の葉として

「こんこんこな雪ふる朝に」  三好達治

2013-01-31 06:51:55 | 文学
 「こんこんこな雪ふる朝に」  三好達治



こんこんこな雪ふる朝に
梅がいちりんさきました
また水仙もさきました
海にむかってさきました
海はどんどと冬のこえ
空より青い沖のいろ
沖にうかんだはなれ島
島では梅がさきました
また水仙もさきました
赤いつばきもさきました
三つの花は三つのいろ
三つの顔でさきました
一つ小島にさきました
一つ畑にさきました
れんれんれんげはまだおきぬ
たんたんたんぽぽねむってる
島いちばんにさきました
ひよどり小鳥のよぶこえに
こんこんこな雪ふる朝に
島いちばんにさきました
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手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が 河野裕子

2013-01-30 04:31:02 | 文学
河野裕子


死がそこに待つてゐるならもう少し茗荷の花も食べてよかつた 

あなたらの気持ちがこんなにわかるのに言ひ残すことの何ぞ少なき

さみしくてあたたかかりきこの世にて会ひ得しことを幸せと思ふ

八月に私は死ぬのか朝夕のわかちもわかぬ蝉の声降る

手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が
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「それでも花は咲いている」   新川和江

2013-01-28 06:09:11 | 文学
「それでも花は咲いている」   新川和江



  故郷の川は汚れて
  魚はみんな死んだのに
  それでも花は咲いている
  水辺のむらさきつぼすみれ
  いのちのひみつをおしえておくれ
  花よ 花よ 花よ

  この街の空も汚れて
  小鳥の影は絶えたのに
  それでも花は咲いている
  舗道のわれ目のはこべぐさ
  いのちのつよさをわたしにおくれ
  花よ 花よ 花よ

  家々の窓は閉ざされ
  こどもはのどが痛いのに
  それでも花は咲いている
  小さな日溜り花サフラン
  いのちのあかりを灯しておくれ
  花よ 花よ 花よ
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「いっしょうけんめい」   新川和江

2013-01-27 03:39:31 | 文学
  「いっしょうけんめい」   新川和江



  いっしょうけんめい泳いだら
  いつか 魚になれますか
  尾ひれが生えて すいすいと
  沖まで泳いで ゆけますか

  いっしょうけんめい はばたいたら
  いつか 小鳥に なれますか
  つばさが生えて ゆうゆうと
  広いお空が とべますか

  いっしょうけんめい 背のびをしたら
  いつか ポプラに なれますか
  みどりの葉っぱを そよがせて
  風とおはなし できますか

  いっしょうけんめい 咲こうとしたら
  いつか お花に なれますか
  ひかりと水に 愛されて
  わたしもきれいに さけますか
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「わたしを束ねないで」   新川和江

2013-01-26 05:23:41 | 文学
「わたしを束ねないで」   新川和江




わたしを束ねない./あらせいとうの花のように/白い葱のように
束ねないでください わたしは稲穂/秋 大地が胸を焦がす
見渡すかぎりの金色の稲穂

わたしを止めないで/標本箱の昆虫のように/高原からきた絵葉書のように
止めないでください わたしは羽撃き/こやみなく空のひろさをかいさぐっている
目には見えないつばさの音

わたしを注がないで/日常性に薄められた牛乳のようにぬるい酒のように
注がないでください わたしは海/夜 とほうもなく満ちてくる
苦い潮 ふちのない水

わたしを名付けないで/娘という名 妻という名/重々しい母という名でしつらえた座に
坐りきりにさせないでください わたしは風/りんごの木と
泉のありかを知っている風

わたしを区切らないで/, や . いくつかの段落/
そしておしまいに「さようなら」があったりする手紙のようには/
こまめにけりをつけないでください わたしは終りのない文章
川と同じに/はてしなく流れていく 拡がっていく 一行の詩
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あめふり  あめつぶじゅんこ     工藤直子

2013-01-25 05:28:00 | 文学
あめふり  あめつぶじゅんこ     工藤直子





ようい どん と

くもから とびおりました

あめつぶみんなが はしると

それに たくさんの

あめつぶのせんが できました

  あめつぶ ひとつぶ あめ いっぽん

  あめつぶ ふたつぶ あめ にほん
  
  あめつぶ ひゃくつぶ あめ ひゃっぽん

あめつぶみんなが  はしると

かぜが おっとっと と

でんぐりがえりしました

ことりが うひゃひゃ と

くすぐったがりました

  あめつぶ ひとつぶ あめ いっぽん

  あめつぶ ふたつぶ あめ にほん
  
  あめつぶ ひゃくつぶ あめ ひゃっぽん

きょう そらは あめつぶで いっぱい
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 「あいたくて」   工藤直子

2013-01-20 06:17:28 | 文学
      「あいたくて」   工藤直子



             だれかに あいたくて
             なにかに あいたくて
             生まれてきたーーーーー
             そんな気がするのだけれど

             それが だれなのか なになのか
             あえるのは いつなのかーーーーー
             おつかいの とちゅうで
             迷ってしまった子どもみたい
             とほうに くれている

             それでも 手のなかに
             みえないことづけを
             にぎりしめているような気がするから
             それを手わたさなくちゃ
             だから

             あいたくて
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「あいさつ」   へびいちのすけ   工藤直子

2013-01-19 06:38:44 | 文学
     「あいさつ」   へびいちのすけ   工藤直子

                         さんぽを しながら 
                          ぼくは しっぽに よびかける
                          「おおい げんきかあ」
                          すると むこうの くさむらから
                          しっぽが ハキハキ へんじをする
                          「げんき ぴんぴん!」
                          ぼくは あんしんして
                          さんぽをつづける
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「もらいなき」   あじさいみき   工藤直子

2013-01-18 06:35:14 | 文学
        「もらいなき」   あじさいみき   工藤直子



         そらが さびしがって なきだすと         
         あじさいも「もらいなき」します
         そらのくもに むかって ただ
         「さびしくないよ」 と いいたいだけなのに
         「わたしがいるよ」 と いいたいだけなのに
         なぜか わたしまで ないちゃいます
         なくたびに はなびらのいろが かわります
         --- そうです
         さびしいいろも うれしいいろも
         みんなわたし
         どうか わたしのぜんぶをみてね
         そして きれいだね と いってね
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(入門講座)テレビドキュメンタリーの巨匠(3)大島渚~戦争と革命~

2013-01-17 06:45:26 | 映画
(入門講座)テレビドキュメンタリーの巨匠(3)大島渚~戦争と革命~

体験者の真実の声に肉薄 浜崎好治



2012/12/20  日本経済新聞





 1960年代に入ると、テレビは急速に普及する。62年、NHKのテレビ受信契約数は1千万台を超え、反比例するように映画の興行収益は減少。映画業界は、会社専属の役者のテレビ出演を禁じるなど対策を取るが、観客数の減少を止めることはできなかった。



 同時に「松竹ヌーベルバーグ」が象徴するように、新しい表現、主題を追い求める監督が次々と登場するが、映画会社に企画が受け入れられず、独立する動きが広がる。そうした中から、新たな活躍の場をテレビに求める監督も現れた。



松竹を辞め独立



 その先駆者とも言えるのが大島渚だ。54年に松竹に入社した大島は、強烈な自己主張を持って、政治色の強い映画を生み出していく。しかし、その姿勢は会社との間に軋轢(あつれき)を生む。60年安保を総括した「日本の夜と霧」(60年)は、封切りから4日後、上映中止となる。会社側は理由を「不入り」としたが、左翼的な政治闘争の映画として危険視したからではないかと考えた大島は猛抗議し、61年、29歳で松竹を辞め、創造社を結成する。

 同じころ、日本テレビの牛山純一はドラマ性のある人間中心のドキュメンタリー作品を模索していた。大島の強い作家性にひかれた牛山は、フリーになった大島に制作を依頼した。企画、撮影方法、編集などすべてを任せた。

 完成したのが大島のテレビドキュメンタリー第1作となる「映画詩 氷の中の青春」(62年)だ。「ノンフィクション劇場」の枠で制作された約25分の番組。舞台は白鳥で有名な厳冬の北海道、根室半島、風連湖(ふうれんこ)。現代における労働とは何かを問う意図から、電話も電報も通じない極寒の地で、コマイという魚を捕る若者の姿をありのまま撮影した。

 作品に筋はなく、遠景に働く若者たちを眺めるショットに音楽だけがつけられた。そして最後に大島自身の短いナレーションが入る。「人間には翼がない。ここに留まって生きねばならない」「労働とは何か。生活とは何か。若者たちは氷を砕く。氷の中の若者たちは氷を砕く」。画で状況を語らせる手法は、過剰に説明をつけるテレビ番組とは異質のものだった。

 これまで20本余りのドキュメンタリーを作った大島。その多くは、62年~77年の牛山とのコンビから生まれた。主なテーマは戦争だ。敗戦を13歳で経験した大島は、「なぜ日本は戦争をしたのか」という問いを持ち続けた。過去や現在の戦争を記録し、残すことが映画監督の使命だとの思いがあった。

 「忘れられた皇軍」(63年)は、元日本軍の韓国傷病軍人の姿を通し「手足なし、職なし、補償なし」を、日本国に訴える姿と苦悩をとらえる。「私たちは、この人たちに何もしていない。日本人たちよ。私たちよ。これでよいのだろうか」と問いただした。



永久に残る記録



 64年の「青春の碑」では、韓国を訪れ、独裁政権打倒のため、民衆デモに参加し、片腕を失って売春婦になった少女を取材。奴隷的な屈従と虚勢の姿を映しだした。地理的、政治的に日本と関係の深いアジアを通し、日本人に過去の戦争について問いかけた。

 72年には牛山の「すばらしい世界旅行」に協力し、パキスタンから独立1年後のバングラデシュ人民共和国に行く。「ジョイ!バングラ」は、独立記念祭の一方で政府軍の制圧で犠牲となった人々や難民の暮らしぶり、未来をになう子どもを凝視し、疎外されてきた民族の歴史を憂う。

 大島は当事者を主人公に置くことを重視し、まるで対決するかのように、取材対象に迫った。熊本県阿蘇郡小国町の松原・下筌(しもうけ)ダム建設に反対する住民の記録「反骨の砦(とりで)」(64年)では、国を相手に頑固に抵抗する老人を撮影。老人は大島が向けたカメラに叫ぶ。「ドキュメンタリーとして記録に残るんだよ。永久に記録に残るんだよ」

 あえてカメラで撮ることを相手に意識させ、内面から絞りだされる声にじっくり耳を傾ける。大島の作品には隠されていた真実が記録されている。

(川崎市市民ミュージアム学芸員)

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札幌国際芸術祭

 札幌市では、文化芸術が市民に親しまれ、心豊かな暮らしを支えるとともに、札幌の歴史・文化、自然環境、IT、デザインなど様々な資源をフルに活かした次代の新たな産業やライフスタイルを創出し、その魅力を世界へ強く発信していくために、「創造都市さっぽろ」の象徴的な事業として、2014年7月~9月に札幌国際芸術祭を開催いたします。 http://www.sapporo-internationalartfestival.jp/about-siaf