GX関連法 60年超の原発議論 関川宗英
20230711
2023年6月28日、北海道電力株主総会で、原発反対の株主から「原子力発電事業停止」などあわせて10件の提案が出された。反対多数ですべて否決された。
北電が原子力推進のよりどころにしたのが、今年2月に閣議決定した政府の「GX実現に向けた基本方針」である。
「GX実現に向けた基本方針」では、原発を再生可能エネルギーとともに脱炭素効果が高い電源として「最大限活用する」と明記している。こうした基本方針から、「カーボンニュートラルの実現に向けて最大限貢献する重要な基幹電源」などと北電は主張した。
GX関連法は、2023年通常国会で可決成立した。
ただ一口に「GX関連法」といっても、その中身は複雑で、脱炭素を進めるための「GX推進法」と電源に関する5つの法案を束ねた「GX脱炭素電源法」の2つがある。どちらの法案も今年2月に閣議決定されたGX基本方針を実現するための枠組みを定めたものだ。
「GX推進法」は、10年間で20兆円のGX経済移行債の発行や、CO2の排出に課金する「カーボンプライシング」をはじめ、150兆円を超える官民のGX投資を促進することなど、基本方針を実現するための経済的な方策について示している。
一方、「GX脱炭素電源法」は原子力基本法、原子炉等規制法、電気事業法、再処理法、再エネ特措法の改正案5つを束ねたものだ。国の責務で原発を活用し、現行の原発の運転期間を原則40年にするという規定を廃し、60年を超えた原発も経済産業省の認可で稼働できることを盛り込んでいる。(https://www.sustainablebrands.jp/article/story/detail/1215252_1534.html)
GX関連法には原発の60年超運転を可能とすることなど大きな問題点を抱えているが、メディア等で取り上げられ、国民的な議論が起きるということはなかった。
3.11福島第一原発の事故が起きた時、首都東京の壊滅、日本が滅んでしまうのではないかと思った人は多くいただろう。あの時、北東から東京方面に風が一日でも吹いていたら、放射能の被害はどれほどのものになっていたか。3.11の直後、アメリカ政府は80キロ圏内からアメリカ人は脱出するよう指示し、ヨーロッパの大使館は一斉に関西に移動した。3.11事故は、世界の緊張を高めたのである。
3.11事故後、日本のすべての原発は止まった。
2023年7月12日現在、再稼働している原発は10基である。そして新規制規準に合格(再稼働待ち)が7基、審査中が10基となっている。この7月中にも40年超の高浜原発の再稼働をしたいと関西電力は発表している。
私たちは3.11の教訓を忘れてしまったのだろうか。
原発ゼロから「60年超」運転の実現まで、原発をめぐる情勢はどう変わってきたのか。
3.11からGX関連法までの流れを、整理しておく。
1 GX関連法、拙速な議論
GXとは、「グリーントランスフォーメーション」の略。脱炭素社会の実現に向けた、経済社会システム全体の変革のことだという。
「産業革命以来の化石燃料中心の経済・社会、産業構造を、クリーンエネルギー中心に移行させ、脱炭素社会の実現を達成するための経済社会システム全体の変革」と内閣官房のHPは解説している。
2022年7月27日、「GX実行会議」初会合が開催された。
岸田首相はその初会合で、「電力・ガスの安定供給に向けた省エネ、再エネ、蓄電池の最大限導入のための制度的支援策や、原発再稼働とその先の具体的方策について、政治の決断が求められる項目を明確に示してもらいたい」と語った。
GX実行推進担当相は萩生田光一。経済産業相と兼務する。岸田政権誕生から9か月、GXという新たなキーワードをもとに、日本のエネルギー政策がスタートした。
12月に「GX実現に向けた基本方針(案)」がまとめられ、2023年2月「GX実現に向けた基本方針」を閣議決定している。
しかしGXに関する法案は束ね法案で、拙速な議論だったと東京新聞は次のような批判の記事を発表している。
原発政策の大転換なのに…拙速な審議、再生エネなど5本の「束ね法案」が衆院で可決
2023年4月28日 東京新聞
◆原発「60年超運転」にも答弁あいまい
焦点となった原発の60年超運転。束ね法案のうち経済産業省が所管する電気事業法で、新たに運転期間の規定を定めた。「原則40年、最長60年」とする枠組みは維持した上で、再稼働審査や行政指導などによる停止期間を運転年数から除外、その期間分について60年を超えて運転ができることになる。どういうケースが除外に該当するのか。衆院経済産業委員会で質問が相次いだが、政府側はあいまいな答弁に終始した。
審査が長期化している原発のほとんどは、電力会社側の説明不足や資料不備が指摘されている。電力会社の能力不足で停止期間が長くなっても、将来的な運転期間が延びるのか。この疑問に、政府側は「具体的な運用は、法改正後に決める」「電力会社からの申請内容を踏まえ、個別に判断する」などと述べるにとどめた。
◆委員会の議論は25時間 課題の掘り下げは…
新制度では、延長運転の可否や期間は経産省が審査し認可するようになる。どのような基準で審査し、その過程は公開されるのかについても「今後の検討」とされた。
束ね法案になったことで再エネや廃炉、放射性廃棄物の最終処分など広い分野で多岐にわたる質問が出たが、経産委での議論は計7日間の25時間余り。一つ一つの課題を掘り下げることはなかった。
今回の「GX」束ね法案は、停止期間除外の基準、再エネ、廃炉、放射性廃棄物の最終処分など、一つひとつ課題が掘り下げられることはなかったと指摘している。
今物議を醸している「マイナンバーカード」に関する法案も今回の国会で決められたが、13本の束ね法案だった。
2015年の安保法制は10本、2016年の「TPP」関連は11本、2018年の働き方改革関連は8本だった。重要法案が束ね法案として提出され、十分な議論がなされていないという批判は毎年のように起きている。
そして2020年国家公務員法改正案は10本だったが、当時安倍政権に近かったとされた黒川弘務・前東京高検検事長の定年延長を決めたこともからんでおり、批判の声は更に大きかった。
2 2023年GX関連法議論の問題点① 「原発の運転期間」
束ね法案であれ議論がしっかりなされているのであれば国民の賛同も得られようが、その議論の中身はとても納得できるものではない。
まず、原発の運転期間についてこれまでの流れを拾ってみる。
3.11以前は、原発の運転期間の規定はなかった。しかし事故後2012年6月、原子炉等規制法が改正されて「原則40年」と定められた。ただし、「例外規定」があった。規制委員会が認可すれば最長20年、1回だけ運転延長が可能になっていた。つまり「60年」運転を可能とする例外規定である。2016年6月、原子力規制委員会は高浜原発1号機が2034年11月まで、2号機が35年11月まで運転可能とする決定を下している。
さらに2016年11月、原子力規制委員会は美浜原発の再稼働を認可する。そして2021年6月、運転開始から44年の美浜原発3号機が10年ぶりに再稼働した。日本の原発史上初めての、40年超原発の運転が実現したのである。
なし崩し的に原発再稼働は推し進められてきた。その勢いはますますパワーアップし、2023年の国会で「60年超」運転にまでなった。
3.11事故後、鈴木宗男はそれまで原発推進派だったが、「官僚にだまされいた」と原発反対を唱えるようになった。
ー自民党時代の鈴木さんは原発推進の立場でした。その原発で事故があったことをどう総括しますか。
鈴木氏:私が(秘書として)お仕えした中川一郎先生も、私も原発を推進していました。それは、安全神話に乗っかっていたからです。
ー官僚や東電にだまされたということですか。
鈴木氏:だまされた。原発は安全だと信じていた。しかも一番コストが安く、長持ちする。そういう説明を中川先生は鵜呑みにしていましたし、私も同じように認識していました。福井県にある高速増殖炉「もんじゅ」の予算を付けたのは中川先生です。1980年、当時の鈴木善幸内閣で科学技術庁長官だった中川先生が「科学技術立国」をうたって予算を付けた。その時も官僚から「30年後には実用化できます」と説明を受けています。しかし、もんじゅはナトリウム漏れ事故を起こした1995年以降は運転をストップしています。その間も安全管理のための莫大なコストがかかっています。「30年後には実用化できる」なんて、ウソっぱちでした。(2019/3/9 日経ビジネス)
鈴木宗男に限らず、小泉純一郎までが原発反対派になった。原発はこりごりだと、多くの人が声を上げた。3.11事故後、すべての原発は止まった。しかし電気が足りないという。電気の使用制限、計画停電が毎日のようにかけられた。そんな中、原発再稼働の声は強くなる。そして、原発「40年」が議論を経て可決された。それが今回「60年超」まで運転が可能となったわけだが、国会の論戦やマスメディアの取り上げ方を見ていると、311当時の議論などまるでなかったかのようだ。
3 2023年GX関連法議論の問題点② 「原発の規制」
次に、原発の「規制」について整理する。
3.11事故の大きな反省の一つは、原発の「推進」「規制」の機関が経済産業省内に同居していたことだった。そこで、「推進」と「規制」を分離するために、「原子力規制庁」が新たに環境省の外郭団体として設けられた。
ところが今回のGX関連法では、「規制」の一部が経済産業省に戻る結果となっている。運転期間の規定について、原子力規制委員会の事務局である原子力規制庁が所管する原子炉等規制法から、経済産業省所管の電気事業法に移されることになった。つまり、今後は経産相が60年超運転の可否を、規制委が安全性をそれぞれ判断する仕組みになったのである。
3.11事故当時、原発運転について、アクセルとブレーキを一緒に踏んでいるようなものだと批判された。つまり原発を「推進」する機関と、それを「規制」する機関が、同じ官庁にあり、ずぶずぶのなれ合い状態で原発事業が進められてきたという制度的な欠陥が、3.11事故を引き起こしたという反省だった。
今回のGX関連法は、3.11事故の反省の議論を反故にしたものだといえる。
このように原発の規制が経済産業省に戻るという制度的な問題を孕んだGX関連法だったが、国会の実際の議論とはどのようなものだったのだろうか。その一部を引用しておく。「第211回国会 衆議院経済産業委員会 2023年4月26日(水曜日)」の一部である。
○笠井委員 現行の原子炉等規制法では、規制委員会規則で定める基準に適合していることが要件だったわけですが、今度の改定案では、今、松山部長が読み上げられましたけれども、要するに、科学的、技術的な要件はどこにあるのか、ないじゃないかと。つまり、脱炭素、安定供給のために、安全よりも利用が先ということであります。
大臣に伺いますが、現行法による運転期間延長では、四十年の一年前まで、それまでに、事業者が自ら行った特別点検報告書、劣化状況評価書、施設管理方針書を添付して申請をして、規制委員会による科学的、技術的な審査に適合して初めて、一回限り、最大二十年まで延長して、その後には、延長できませんから廃炉、そうでなければ、延長しなければ四十年で廃炉だったわけであります。
ところが、今答弁がありましたが、形式的な書類が整っていれば、今度は経産大臣が認可するということになってしまうんじゃないんですか。
○西村(康)国務大臣 私ども、利用する側の観点から電気事業法でこのような規定を定めておるところでありますが、その上で、原子力規制委員会の適合性基準の認可、これは炉規法の規定によって、三十年、そして、その後十年以内ごとに審査を受けなければなりませんので、その適合性審査に合格をしないと、安全性が確認されないと運転できないという規定は何ら、何らというか、いわば、委員長も言われているように、より厳格化されているというふうに認識をしておりますので、そういう意味で、安全性確保の大前提は変わらないということであります。
○笠井委員 私は電気事業法のことを聞いているんです。
大臣、電気事業法に運転延長の認可の審査基準というのはあるのか、誰が審査するのか、審査は公開されるのか。それは法律のどこに書いてありますか。
○松山政府参考人 お答え申し上げます。
先ほど大臣から御答弁申し上げましたとおり、今回は、安全をめぐる新規制基準に対する適合という原子力規制委員会の話と、それとは別に、それで基準適合が認められたものについて、どういう形で、原子力事業、発電事業としての、エネルギー利用政策として、それをどう使っていくかということを峻別して、その後者について電気事業法で定めるものでございます。
その場合の適合性が、延長の認可につきまして、先ほど申し上げた二十七条の二十九の二第四項として、適合性について判断する事項が列挙されてございます。
第一号として、平和の目的以外に利用されるおそれがないこと、二号として、原子炉等規制法による許可の取消し等の処分がされていないということ、そして三号といたしまして、この運転の延長が、脱炭素社会の実現に向けた利用の促進を図りつつ、電気の安定供給を確保することに資すると認められること、四号として、原子力発電事業者が、法令の規定を遵守して業務を実施するための態勢を整備していること等、継続的に取り組むことが見込まれること、そして五号として、その運転期間が二十年を超える場合にあっては、その期間が、その後、各号列記されている事項を合算した期間以下であること。こういった各号の要件を満たしているかということについて、経済産業大臣が判断して認定することになります。
その際、審査の基準につきましては、具体的な基準につきましては、この法律が成立した暁には基準を定め、公表していくことにしているところでございます。
○笠井委員 いや、私は基準を聞いたんだ。基準はないわけですよ。これからでしょう。さっきずっと何号と言われたやつは、科学的、技術的な審査じゃないですよ。延長に当たって、大体今までだったら、現行法では基準適合があって、それで延長を認可するというわけだった。それが今、三十年から十年の話じゃないんですよ、今度、延長認可は経産大臣がやるというので。その基準については今なくて、これから策定すると。
じゃ、誰が審査するんですか。誰が審査するのか、審査は公開されるのか、その二点だけ答えてください。
○松山政府参考人 お答え申し上げます。
先ほど御答弁申し上げましたけれども、二十七条の二十九の二、四項各号に具体的な考慮しなければならない事項というのが列記されてございます。
安定供給、脱炭素への影響等につきまして基準を定めていくことになりますけれども、法律と、その法律の実施に関してでございますので、法律が成立した暁には、しっかりした形で、手続を経て、これを審査いただくための体制をつくっていくことになりますし、基準についてもそれを踏まえて定めていくことになると認識をしてございます。
○笠井委員 審査する基準とか、それからしっかりした体制、これから考えますと。結局名ばかりの話で、実際それでもう法律を通そうとしている。科学的、技術的な審査もなくて恣意的に決める、経産省と事業者間でブラックボックスで進められていくことになってしまいます。
原発の延長を判断する基準について問われると、「法律が成立した暁には、しっかりした形で、手続を経て、これを審査いただくための体制をつくっていくことになります」という答弁。違う角度から質問しても、同じ答弁を繰り返す。原発の延長を判断する基準そのものが論戦の場にないのだから、原発について、科学的、客観的に考えていく議論などそもそも不可能ということだろう。
このような中身のない、国民を馬鹿にしたような審議に国民の税金は使われ、国の根幹をなすエネルギー計画が決められていく。
しかしどのような審議であろうと、GX関連法は成立した。原発の60年延長が可能となった。
2023年は、原発政策の大きな節目として記憶されるだろう。
4 エネルギー政策をめぐるさまざまなキーワード
そもそも「GX」(グリーントランスフォーメーション)という新しい言葉が胡散臭い。国の根幹であるエネルギー政策が議論されたわけだが、新しい言葉が使われると何か新しくバージョンアップされた、現状の問題点が克服されて新しい制度へ刷新された、といった錯覚に陥ってしまう。しかし、原発を推進するという歴代自民党政権の基本姿勢は変わっていない。
菅義偉が首相になったとき、突然「カーボンニュートラル」と言い出したことを思い出す。ネットで調べてみるとそれは、2020年10月26日に開会した臨時国会の所信表明演説だった。首相就任後初めての所信表明である。国内の温暖化ガスの排出を2050年までに「実質ゼロ」とする方針を表明したのだが、その目玉として使われたキーワードが「2050年カーボンニュートラル宣言」だった。
第2次安倍政権では、「ベストミックス」が多用された。石炭から、再エネ、原発までバランスよく使っていくという電源構成をさす言葉だった。
旧民主党は「30年代原発ゼロ」の方針を掲げたが、第2次安倍政権は発足後にすぐにこれを見直した。2014年4月11日に閣議決定した、中長期のエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」である。
この「エネルギー基本計画」について、当時の議論は勿論伯仲した。各新聞の社説もはっきりと賛否が分かれている。
「安倍政権は、原子力規制委員会が審査を終えた原発の再稼働を急ぐ方針だ。”神話”も、3.11もなかったかのように、である」(東京新聞)、「もう原発に依存できないことは電力会社もわかっているはずだ」「(原発の)新増設より、同じ機能をもつ地熱や水力、高効率の石炭火力などの開発を優先させるのが筋だ」(朝日)という批判に対して、原発が停止し発電量の9割を火力に頼っている現状の中「原発について一定の位置づけを示したのは現実的といえる」(日経)、「民主党政権が掲げた『脱原発路線』に、正式に決別する妥当な内容と言える」「核燃料サイクルの着実な推進への追い風としたい」(読売)といった評価の社説が発表された。
2015年12月、パリ協定が採択された。1997年に採択された京都議定書以来、18年ぶりとなる気候変動に関する国際的枠組みである。脱炭素が世界的な潮流となった。
2015年11月30日、COP 21首脳会合における安倍総理大臣スピーチには次のような文言が見える。
日本は、「美しい星への行動 2.0」、略して「ACE(エース) 2.0」を発表しました。2013年の「ACE(エース)」で示した気候変動対策への日本の取り組みを一段と強化したものです。(外務省HP)
「美しい星への行動 2.0」とは全く聞いた覚えのない言葉だ。安倍首相のスピーチで使われていたことを今回初めて知った。
エネルギー政策についてそれぞれの政権が様々なキーワードを使ってきた。しかし看板の言葉は変わっても、自民党政権の原発推進の基本政策は変わっておらず、原発を推し進めるその声はますます赤裸々に、そしてそのボルテージはますます大きくなっている。
中曽根康弘以来、自民党の原発政策は着実に進歩してきたと認めざるを得ない。
<まとめ>
2023年2月、朝日新聞社が全国世論調査(電話)を実施し、原子力発電所についての意識を尋ねた。この調査で、初めて運転再開について「賛成」(51%)が、「反対」(42%)を上回ったそうだ。
原発の運転再開に対する賛否は、東日本大震災の後、おおむね「賛成」が3割前後、「反対」が5~6割で推移してきた。2012年3月ごろの世論調査を見ると、国民の7割を超える人々が原発再開に反対を示している。
世論の変化は事実だが、原発の危険性が軽減したわけではない。
3.11から10年余りの日本に、電気が足りなくて困ったという事態があっただろうか。電気は余っているのである。
原発が動けば電気代が下がる……、おざなりな世論操作に溜息が出るばかりだ。
2012年、「40年」の運転期間延長の議論は野田政権下だった。細野国務大臣(当時)は次のように答えている。
この運転制限の期間につきましては、原則として 40 年以上の原子炉の運転はしないということにいたしまして、経年劣化の状況を踏まえまして、延長する期間において安全性が確保されれば例外的に運転を継続をするという形にしておりますが、そこは、科学的にしっかりと確認をした上で、申請に基づいてやるということでありますので、極めて限定的なケースになるというふうに考えております。
なぜ 20 年なのかということにつきましては、これまで、高経年化の技術評価で、運転開始後 60 年を見通した経年劣化の評価を行ってきていること、これは一つの材料としてはございます。米国においても、運転許可の更新を 20 年を超えない期間としていることも、これも参考とはいたしました。
(第 180 回国会 衆議院環境委員会第4号8頁 2012年6月5日)
「40年から60年」の延長は、例外的なものであり、極めて限定的なケースになると述べている。
この言葉に従うなら、「60年超」にはいかなる枕の言葉が可能なのか。
「40年から60年」を例外的に、極めて限定的なケースとして決めてから11年後、「60年超」が決められた。
言葉遊びのような中身のない議論にだまされてはいけない。
2023年の国会では、西村大臣は「60年超」について、安全性が確認されないと運転できないという規定はより厳格化されている、と述べている。
原発再稼働の規定がいくら厳しいものになっても、核融合炉の鉄が強くなるわけではない。経年劣化の状況を止めることはできない。原発の金属疲労は今も進行している。
次の事故が起きれば、それこそ国の存亡にかかわる事態が出来するかもしれない。
しかし原発は止められる。
日本の未来をつくるその鍵は、まだ私たちの手の中にある。
GX(グリーントランスフォーメーション)
~排出削減と産業競争力の向上の実現に向けた、経済社会システム全体の変革
GX~Green Transformation
trans- 【連結】 越えて、横切って、超越して 向こう側へ、別の状態へ、
英語圏では接頭辞の「Trans」を「X」と書く慣習がある
◎GX実行会議有識者メンバー(五十音順)
淡路睦 千葉銀行取締役常務執行役員
伊藤元重 東大名誉教授
岡藤裕治 三菱商事エナジーソリューションズ社長
勝野哲 中部電力会長
河野康子 日本消費者協会理事
小林健 日本商工会議所特別顧問、三菱商事相談役