椿より小さき鳥の来てをりぬ
高橋雅世
日暮れより春めいてゆく家路かな
大島英昭
書道部が墨擦つてゐる雨水かな 大串 章
春寒やしり尾かれたる干鰈 村野四郎
しつけ絲ぬく指さきの余寒かな 奥野信太郎
「古里ってなんだろう」
朴湘錫
お地蔵さま
あなたは俺を知っているか
思い出してほしい
五十数年も遠いむかし
朝夕
この峠を通っていた村の子供たち
小石のだんごを差し上げ
あなたにたわむれた
なかのひとりを
ふるさとってなんだろう
俺には
ふるさとを語る何もない
というのに
妙に恋しがり
妙に懐しがる
待つ人もないふるさと
きっと
私はまたやってくるだろう
ちぐはぐな挨拶かはし浅き春 藤田久美子
早春や目つむりゐても水光り 越後貫登志子
春立つやあかつきの闇ほぐれつつ
久保田万太郎
雪すべてやみて宙より一二片 山口誓子
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