春待つや寝ころんで見る犬の顔 土屋耕一
散歩
あんまり淋しかったので、私は一人で散歩に出た。どこをどう歩いたのか分らないうちに、海岸に来ていた。砂浜に腰を下しながら向うの海を見ると、月の光に美しく光っている。私はいつの間にか故里のことを思い浮べていた。今頃母は何をしているだろうかと思うと悲しくなって来る。つぎつぎに懐しい思い出をたどっていると、いつか涙が出る。私はたまらなくなって、「お母さん」と大きな声で呼んでみた。答があろうはずはない。波が静かに寄せる音がするだけだった。私は淋しさをまぎらすために、月見草を摘んでは海に投げた。小石を拾っては投げた。でもさびしさは私の胸ふかくこびりついて、どうにもならない。かえって益々さびしくなるばかりである。漁火もさびしげに揺れていた。月もさびしげに私を照らしているようだった。私はいつまでもいつまでも月を見ていた。
中学1年 平美沙子さん (「愛生」1950年8月5日)
札幌国際芸術祭
札幌市では、文化芸術が市民に親しまれ、心豊かな暮らしを支えるとともに、札幌の歴史・文化、自然環境、IT、デザインなど様々な資源をフルに活かした次代の新たな産業やライフスタイルを創出し、その魅力を世界へ強く発信していくために、「創造都市さっぽろ」の象徴的な事業として、2014年7月~9月に札幌国際芸術祭を開催いたします。
http://www.sapporo-internationalartfestival.jp/about-siaf