出でいなば 主なき宿と なりぬとも 軒端の梅よ 春をわするな 源実朝
崔洋一監督が、27日午前1時、膀胱(ぼうこう)がんで死去。73歳だった。
1949年(昭和24年)7月6日 - 2022年(令和4年)11月27日)
大島渚監督の『愛のコリーダ』などの助監督を経て、1983年、『十階のモスキート』で劇場映画監督としてデビュー。80年代中期は角川映画などで活躍、93年、『月はどっちに出ている』で、多くの映画賞を受賞。2004年公開の「血と骨」では、在日韓国人とその家族の姿を描き、日本アカデミー賞最優秀監督賞などを受賞。その後も、『マークスの山』『豚の報い』『クイール』「カムイ外伝」などの話題作を次々と発表。
また、2004年より2022年6月まで日本映画監督協会理事長を長きに渡り務め映画界へ貢献した。
4月15日~21日までテアトル新宿にて、『松田優作・メモリアル・ライブ』『優作について私が知っている二、三の事柄』の劇場公開と併走し、崔洋一監督自身が一週間毎日登壇し、自身と過ぎ去った時代を振り返り、各日テーマを変えてトークイベントを敢行して話題となった。
https://cinefil.tokyo/_ct/17527907
『十階のモスキート』(1983年)
映画デビュー作品。内田裕也と共同脚本。
The Mosquito on the 10th Floor - 「十階のモスキート」 予告編
youtu.be『いつか誰かが殺される』(1984年)
『いつか誰かが殺される』劇場予告編
youtu.be『友よ、静かに瞑れ』(1985年)
『友よ、静かに瞑れ』劇場予告編
youtu.be『黒いドレスの女』(1987年)
『黒いドレスの女』劇場予告編
youtu.be『Aサインデイズ』(1989年)
Via Okinawa / A Sign Days - Aサインデイズ
youtu.be『月はどっちに出ている』(1993年)
報知映画賞、ブルーリボン賞、毎日映画コンクールほかの各賞、各部門賞受賞のほか53にわたる映画賞を総なめ、第17回日本アカデミー賞最優秀監督賞、最優秀脚本賞にノミネート。
『月はどっちに出ている』予告篇
youtu.be『マークスの山』(1995年)
映画「マークスの山」予告編
youtu.be『刑務所の中』(2002年)
ブルーリボン賞など受賞
日本映画「刑務所の中」予告編
youtu.be『血と骨』(2004年)
第28回日本アカデミー賞最優秀監督賞、最優秀脚本賞を受賞。
Blood and Bones - trailer
youtu.be『ス SOO』(2007年)
崔洋一が韓国で制作した唯一の作品。<宮廷女官チャングムの誓い>チ・ジニが主演。
【予告篇】ス SOO
youtu.be『カムイ外伝』(2009年)
『カムイ外伝』予告編
youtu.beⅭⅩⅥ「のんきな姉さん」を見る聴く、 『エイガニッキ』 SASHI-ハラダ 2022/11/25
夜の闇の中、歩いている主人公、遠くネオンが、花火が上がる、まっすく夜空に上がって、破裂、見つめる主人公、全ては、この一瞬の間の幻想ではないか、オフィスの主人公、一人残業か、雪山を転がりゆく青年、電話、主人公に、どこにいるのと主人公、判っているはずと弟、主人公の婚約者が電話、男の両親に挨拶もないままに、結婚話が進んでいる、オフィスのトイレ、電話している主人公、女性トイレだが、課長が現れて、驚きの主人公、結婚話を聞かれてしまう、こうして、オフィスでの、課長と主人公の語らい、向かい合ってはいない、課長の席に座って居る課長、ショットが変わると、全く違う位置に居る課長、この変幻自在、課長のテーブルの赤い置物が構図のアクセントに、語らい、言葉は何所か空回り、そこに婚約者が現れた、通りでのんきな姉さんの本の広告、買ってきた婚約者、既に、手にしていた主人公、課長も知っている、ここに書かれていることは、何も知らなかったと主人公、馬鹿なと、これはお話よと主人公、今度またお話しましょうと、主人公の部屋のベッド、朝、なんと主人公と弟が同じベッドで寝ている、姉と弟、甘えて、食事を作ってと弟、まるで夫婦、果たして、二人の関係は、食事する弟、見つめる姉、さて絵画のレッスン、裸のモデルの弟、見つめ生徒たち、絵を描いて、このシーンで、聞こえてくるのは、姉と弟の会話、弟の帰り道、生徒の一人が、小学校の同級生だよと、もっと裸を見たいかと弟、何よと娘、こうして二人は主人公の部屋に、姉は会社と思っている弟、が、玄関が開いている、不審、部屋の中、抱きつく娘、恋、オフでは、二人の絡みの音、二人は、人の気配、気付いて振り返る、姉が起きだしたのだ、姉は出かけていなくて、部屋にいた、苦笑いの弟、娘、挨拶する娘、お茶を飲む二人、タバコの二人、むせて、吐く主人公、妊娠ではと娘、驚きの弟、帰った方がいいか娘、そうしてと弟、弟は己の子と思っているのだ、娘との語らいで、学校でアルコールランプで、燃やしてしまったことを覚えているかと、過去シーンだろうか、なんと家が炎上しているのだ、これもまた、誰かの幻想、果たして、かくて、オフィスの主人公の世界と、主人公の部屋での弟の世界、電話の青年、それは雪山の弟、これらが、絡まりあって、どこまでが、現実世界、どこからが、小説の世界、いや、誰かの幻想世界、全てが小説世界とも、妊娠のことを問いただす弟、馬鹿ねと、あなたの子ではないと、でも、あなたの子ではないと云うことは、二人はやはりセックスしていたのだ、愛し合っていたのだ、主人公は覚悟を決めて出ていくことに、そこに婚約者の男が、一緒に墓参りにと、弟は、姉に出ていかせたくなくて、二人に絡むのだが、結局、車で両親の墓に、車の中、弟のアップ、素晴らしい、都心の川縁の弟と男、いたわる男、優しく抱きよせるように、何所か厭らしい手つき、その男がオフィスに、弟はどこだと、弟に何をしたと、あなたはと課長、弟の父だと、養子にしたのだと、聴いてないと主人公、プレゼントのごとく男が持ってきた箱の中にはライフルが、主人公を脅す、止めに入る課長、撃たれる課長、この世界もまた、どこの世界、小説の中、弟の夢世界、姉の幻想、車から降り立つ、三人、トンネルの向こうに墓が、墓の前で手を合わせる三人、弟が、語りだす、姉と愛し合っているのだと、何を言うのだと主人公、問い質す婚約者、逃げ去る主人公を追う男、こうして、弟と主人公の道行き、川縁、車の中で、両親のことが語られた、借金に追われての家の炎上、事故とも、自殺も、だが、主人公と弟の語りや姿を見ていると、そして、小屋が炎上しているシーンに弟が居る、見つめている、佇んでいる、二人が殺したのではなかったか、駄目両親を撃った、いや、撃つ前に、死なれてしまった、この炎上ゆえの、二人の恋、二人が、残された、二人が、抱き合い求めて、生き延びてきた、これまでの、何所かコミカルな世界から、位置関係の曖昧なショットたちゆえの、課長、弟の父、婚約者らの、オフィスでの位置、構図、言葉、空回り、すれ違い、夜の闇の中、始まりのシーン、にまいもどったか、花火が上がる、破裂、見つめる主人公、だが、道行の二人は雪山に、その二人が聞く花火の破裂音、あの始まりとその前の破裂音の反復か、二人は歩いていく、そして、主人公は弟を送りだす、その空に花火が上がる、いくつもの花火が、祝福か、課長が語っていた、主人公に、大丈夫と、同じことは起こらないと、二人は、それぞれに、自立して、やっていけるか、孤児の二人が、こうして生き延びるしかなかった地獄から、今、だが、これもまた、小説世界に過ぎないのではないか、弟の小説、いや、二人の小説、弟ばかりが、主人公の結婚に食って掛かっているが、弟の恋と絡みのシーンで、姉が現れた、弟は玄関で、姉が居ることを察していて見せつけようとしていなかったか、姉が、二人の恋を阻んだのだとも、まさか、ラストの花火を、祝いと思う愚か者もあるまい、優しい課長の言葉を真実とも思うまい、殺し屋のライフルの炸裂も真とは思うまい、地獄の中、一人通りを歩む上がった花火に託された幻想の中、地獄は続くのだ、のんきな姉さん、そして、のんきな私たち、
ⅭⅩⅤ「化粧雪」を見る聴く、 『エイガニッキ』 SASHI-ハラダ 2022/11/24
寄席を経営する娘、主人公、父は病に臥せって、夢見がち、昔の客の沢山出入りの頃、育てた芸人が人気を博していた頃を懐かしんで、今や、客はからっきし、通りの向かいのラジオから流れる漫才に人気をさらわれて、今日も早慶戦の漫才で賑わっている、この屋敷の長男は、だらしない男で、大学を出たが、満足に働きもせずに、後も継がずに、飛び出して、長女がかくて寄席を仕切っている、夫婦者の二人が、世話役で、その下には娘が働いている、今日も客は僅か、冴えない芸、そんな通りに長男が戻ってきた、世話役の男が呼ばれて、後で話がと長男、夜、近所の酒場で飲み交わす二人、長男は金が要るのだと、こんな寄席の様子ゆえに、娘には縁談が前からあるのだが、そのままに、嫁に行ったら寄席は遣っていけない、父が何とか、元気を取り戻すまではと主人公、下の息子は学校に行っていることに、だが、寄席がままならずに、工場で働いているのだ、下の息子は何とか大学に行かせてくれと、建築技師に成りたいのだと、だが、今は無理と主人公、借金取りがやってきた、父親にはごまかして、借金を払うか、寄席を売るかどちらか考えてと、曖昧にごまかすしかない主人公、世話役の男は、いいなずけの旦那から借りればと、そうねと主人公、その最中に、長男に呼ばれての居酒屋、主人公に金を借りてもらえないかと、困惑の世話役、聴いては見ますがねと、かくて、翌日に、戻っている長男のことを話し出す世話役、金など貸せないとしっかり拒む主人公、父の病、主人公の三味線、久しぶりに聞きほれて、笑みの父親、父親は何も知らずに、のんきな病人、主人公はいいなずけに呼ばれて、京橋界隈で話する主人公、結局、結婚の話は、どこまでも、いつまでも、曖昧に、相手も、こういつまでも、曖昧ではと、その翌日か、番頭がやってくる、いいなずけの旦那は中国に行くのだとも云っていたが、長男が尋ねたらしい、これを渡してくれと頼まれたと、金を差し出す、その代わり、これまでの話は全てご和算にと、いいなずけの旦那には、他に結婚話もあるらしい、判りましたと主人公、金もまた受け取れないと、番頭は困り果てて帰っていく、世話役の男は昔の芸人らに声を掛けて、今は寄席は主人公一人で困り果てているのだと、それは知らなかった、何とか皆で出ますよと,笑みの世話役、こうして、張り紙を書き変える世話役、大文字で、チンドン屋も出て、盛り上がり、そんなさなかの夜、長男は、下の息子に、実印を持って来いと、大学にも行けると、そのままに、深夜、部屋に忍んで実印を手にする下の息子、主人公が気づいて、問いただす、涙の下の息子、長男は借金取りだろう、実印は持ってくるのでしょうねと問いただす、闇の中、大丈夫と長男、寄席には、昔なじみの有名芸人が大挙して押し寄せて、満員御礼、それでも、更に押し寄せて、芸が始まる、だが、父はそんな最中危篤に、医師が呼ばれて、下の息子は当然に、兄のところに行くはずもなく、長男は、寄席に走る、賑わいの最中、長男がやってきた、だが、父の死を聞かされて、愕然、主人公は、これで、何の思い残すことは無い、父が生きているさなかに、売ることなど出来なかったと、主人公は兄に、実印を差し出すのだ、あなたが決めてくださいと、主人公は、下の息子とともに、私たちも、何とか頑張ってやっていきましょうと、笑みで、覚悟の二人、こんな二人を呆然と見つめるしかない長男、ここでもまた、長男が駄目なのだが、これは経済とも、政治とも、軍事とも、許嫁の旦那も、中国に行くなどと云っていた、男たちは、皆、夢見がち、これが近代日本なのだ、富国強兵といいながら、、そこそこ、やって来た日本、だが、現実は、人々は、いまだ、圧倒的に、貧しいのだ、一部、財閥ばかりの発展で、人々は、貧しさの中、帝国主義に振り回されて、父の死した、芸人の集まった、客の殺到した、その後の、寄席の外では、雪が舞う、芸人たちは、もっと早くに云ってくれればと、世話役は、主人公に、いろいろ当たってみていると語っていたが、旦那が危篤とは、ここまで寂れているとは、結局、過去に世話になった芸人たちも、何も出来なかったのだ、誰もが主人公を助けられずに、さて、主人公は自ら、弟と共に、いかに、どこに、路地の、通りの、居酒屋の、寄席の、空間の場、間、こんな時空の語らいを聴け、
帰途 田村隆一
言葉なんかおぼえるんじゃなかった
言葉のない世界
意味が意味にならない世界に生きてたら
どんなによかったか
あなたが美しい言葉に復讐されても
そいつは ぼくとは無関係だ
きみが静かな意味に血を流したところで
そいつも無関係だ
あなたのやさしい眼のなかにある涙
きみの沈黙の舌からおちてくる痛苦
ぼくたちの世界にもし言葉がなかったら
ぼくはただそれを眺めて立ち去るだろう
あなたの涙に 果実の核ほどの意味があるか
きみの一滴の血に この世界の夕暮れの
ふるえるような夕焼けのひびきがあるか
言葉なんかおぼえるんじゃなかった
日本語とほんのすこしの外国語をおぼえたおかげで
ぼくはあなたの涙のなかに立ちどまる
ぼくはきみの血のなかにたったひとりで掃ってくる