不思議なり生れた家で今日の月 小林一茶

不思議なり生れた家で今日の月　　　　　小林一茶

それぞれに名月置きて枝の露 金原亭世之介

　それぞれに名月置きて枝の露　　　　金原亭世之介

十五から酒を呑出てけふの月 宝井其角

十五から酒を呑出てけふの月　　　　　宝井其角

洋上に月あり何の仕掛けもなく 三好潤子

洋上に月あり何の仕掛けもなく　　　　　三好潤子

月光写真まずたましいの感光せり 折笠美秋

月光写真まずたましいの感光せり　　　　　折笠美秋

月明の毘沙門坂を猪いそぐ 森 慎一

月明の毘沙門坂を猪いそぐ　　　　森　慎一

真っ赤なバラが好きという嘘つきよ 辻村みつ子

真っ赤なバラが好きという嘘つきよ　　　　辻村みつ子

掌へ男がおいたさくらんぼ 辻村みつ子

掌へ男がおいたさくらんぼ 　　　辻村みつ子

小包 信原翠陽

小包            信原翠陽

 

 

 

附録のどっさりついた絵本を入れると

中身の貧しい小包は重たくなって

其処から子供達の歓声が聞える様だ

ただ生きていると云うだけの

只、親で有ると云うだけの自分だけれど

断ち切る事の出来ない骨肉の愛情と

打ち消す事の出来ない望郷の想いを

固く結わえた小包に秘めて送る

雪の故郷奥能登よ

別れて生きる親と子が呼び合うには

余りに大きく引離された間隔でも

盲いた事が悲しい闇の連続でも

私にはまだまだ命を支えるものがある

此の世の何処かに生きている親を信じて

成長して行く子供達のために

永らえる事が残された今の希いが

北陸のきびしい風雪に打たれても

やぶれぬ様に出来上った此の小包を

さあ一日も早く送ろうよ━━

白玉の歯にしみとほる秋の夜の 酒は静かに飲むべかりけり 若山牧水

白玉の歯にしみとほる秋の夜の 酒は静かに飲むべかりけり 　　  　若山牧水