ⅩⅩⅩⅩ「不安が不安 Angst vor der Angst 」を観る聴く 『エイガニッキ』 SASHI-ハラダ 2016/4/18
穏やかな住宅街のアパート、光、ケーキを作る主人公、未だ幼い少女、画面が揺らぐ、誰の視線が揺れているのだろうか、主人公か、監督か、映画自体か、鑑賞している私か、不安が通り過ぎる、部屋々々の出入り口は開かれている、自由に行き来が、鏡が至る所に、映し出される主人公、母で在り、妻で在り、娘である少女には出来ないとケーキ作りをさせないままに、夫が戻り、当たり前の家族、生活、日常、何の問題も無い様にしか見えない、欲望なのだろうか、誰の、判らない、何が介在しているのだろうか、判らない、夫はくつろいでいる、書斎で数学の勉強をしている、この日は少女にケーキを作らせる、いつもと違う母、昨日も作ったばかりのケーキ、子供は卵を溶いていてカップを落としてしまう、叱らない母、病なのだろうか、同じアパートの夫の母と義理の妹が現れる、不可思議そうに見つめる、この視線たち、それぞれの視線たち、義理の母の、義理の妹の、不満、嫉妬、また、主人公も彼らを観ている、病院に出かける主人公、窓から見つめる義理の妹、視線たち、窓ガラスの影、上からの俯瞰で通りを歩く主人公の姿が、こんどは下から、この覗く義理の妹の様子を捕らえるカメラ、が、このカメラは誰の視点、そして、不気味な一人の男の視線、この男は何もの、近所の人、過去の人、判らないままに、医師の判断、健康だと、が、薬を出してくれる、少女の幼稚園、迎えに、二人の後を見つめ、付ける男、あの通り佇んでいた男、少女の不審、あの人誰と、ハッキリ語らない母、主人公のアップ、輝く目、白い肌、綺麗な髪、それでいて何を見ているのだろうか、判明しない、曖昧な視線、さて、薬が無くなって近所の薬局に、薬局の医師に相談、簡単には出せない薬、だが、どこか主人公に惹かれているのだろうか、誘う部屋、奥の部屋、薬局の店員の娘、客の夫人、二人を見詰める、窓から伺う義理の妹、立ち止まって観ている男、なんとも不気味な視線たち、男たちは主人公を求めているのだろうか、主人公もまた己の美貌に酔いしれているのだろうか、衣装、部屋の中の色彩、素晴らしいです、結局、薬局の医師と関係は、判らない、そうさ、立ち止まっている男との関係は、夫は何も出来ない、何も理解しない、義理の妹の夫、プールで出会う男、運動が健康と関係が、一人泳ぎ続ける主人公、見つめる男、この男が義理の妹の夫なのだが、プールのシーンでは判明していない、一人ヘッドホーンで音楽を聴き部屋で横になっている主人公、玄関でのノックも聞こえない、義理の母らがやってくる、狂気としか理解しない彼ら、薬局の窓から見つめる医師、通りの主人公、義理の妹の視線、相変わらずの現実、それでいて、義理の妹の夫が尋ねる、花束まで持って、義理の妹の嫉妬、この義理の弟はやはり主人公に惹かれているのだろうか、鏡に乱反射する者たち、どこに実態が、揺れる画面同様に、揺らいでいる、実態はどこに、曖昧に、ドラッグに、嵌まり、酒に嵌まり、何かが無いと不安で、この酒浸りで音楽に、薬局の男に誘われて飲まされて、以来、これに安堵を求めて、これもまた曖昧で、根拠は何も無い、立ち止まって観ていた男だろうか、自殺、窓から覗く主人公の視線、通りを棺が運ばれていく、その後を何事も無かったごとくによその人々が通り過ぎる通り、映画がここに在る、映画に出会うとはこのこと、だが、この棺はその死した男の棺だろうか、あの揺れる画面は、主人公ばかりでは無い、皆が同様の揺らぎの中に、暫く揺らぎが消える後半部分、が、しかし、結局ラストにはまた揺らぎの画面で終わっていく、映画自体の揺らぎとして、監督の視線の揺らめきとして、アップ、表情、癒やされる、抱擁も、癒やされる関係も、無い、どこまでも、不安の中に、メロドラマの果てに、俯瞰の通りを歩き去る主人公の姿が焼き付いて、離れない、その姿と、見つめる視線と、共にあるのだ、主人公もまた己で己を観ていないか、あの姿は己だ、私だ、義理の妹だ、男だ、薬局の男だ、私だ、当てなく、どこに、歩き去る、立ってみている、映し出されている、揺れている、誰が、私が、私たちが、