広大な宇宙の中を一人ぼっちで孤独にさまよう惑星がある――。浮遊惑星と呼ばれる“自由で孤独”な惑星なのだが、そうであるにせよ何かと奇妙な点が多い星が今、議論の的になっている。
■どこにも属していない謎の天体「CFBDSIR 2149-0403」とは?
2012年に発見された、自由かつ孤独で、しかも奇妙な星が「CFBDSIR 2149-0403」だ。我々の太陽からおよそ100光年離れた宇宙空間を漂っており、木星の4倍から7倍ほどあるとされる大きな惑星である。発見されてしばらくは、母星を持たずに宇宙を漂流している浮遊惑星(rogue planet)だと見なされていた。そしてこれまで発見された浮遊惑星の中で、最も地球から近い天体であることからも専門家から注目を集めることになったのだ。
「CFBDSIR 2149-0403」(中央の暗い青) 画像は「Wwikipedia」より
浮遊惑星、あるいは自由浮遊惑星とは、我々の太陽系のような恒星系からはじき出され、他の天体から重力的な影響を受けないまま宇宙空間を漂って(銀河系規模で公転して)いる天体のことである。
最初は浮遊惑星の扱いを受けていたCFBDSIR 2149-0403だが、これまでに発見されている浮遊惑星との類似点が少ないことがわかってきた。発見されている自由浮遊惑星の多くが数百万年から1000万年程度の年齢の“若い”天体であるのに対し、観測の結果、このCFBDSIR 2149-0403の年齢は5000万年から1億2000万年を数えるものとわかり、ずば抜けて“老齢”な点が新たな疑問を生んでいる。
浮遊惑星のイメージ図 画像は「Wwikipedia」より
こうした経緯もあり発見から数年して、ある研究者が「これは浮遊惑星でなく褐色矮星(brown dwarf star)ではないか」と指摘した。褐色矮星とは、普通の惑星というには巨大でありながらも、質量が小さすぎるために核融合を起こすことができず、太陽のような恒星になることができない天体のことだ。語弊を恐れずに言えば、いわば太陽の成り損ないである。
しかしながら、CFBDSIR 2149-0403は褐色矮星に分類するには小さすぎたようだ。褐色矮星は最低でも木星の13倍以上の質量がなければならないということだ。浮遊惑星でもなく、褐色矮星でもないというCFBDSIR 2149-0403はいったい何者なのか……。
■巨大惑星は“金属製”だった!?
謎の天体と化したCFBDSIR 2149-0403を、フランス・グルノーブル大学の天文学者であるフィリペ・デローム氏は発見後も引き続き観察と分析を続けている。複数の電波望遠鏡を使って観察を重ねるうちに不可解な点がより増えてきたという。
孤独で自由なCFBDSIR 2149-0403であるが、これまで大まかな分類としては「かじき座AB星運動星団(AB Doraduss moving group)」に属していると考えられていた。しかし詳しく観察を続けて動きを分析してみると、CFBDSIR 2149-0403はかじき座AB星運動星団の一員ではないことが判明したのだ。この星の出自と属性について調べれば調べるほどますます謎は深まっていく。
観測と分析を続けるうちにさらに奇妙な点が浮き彫りになった。木星の4倍以上という見た目からすれば、CFBDSIR 2149-0403の重力はきわめて弱く、また惑星を構成している物質に鉄分が占める割合が異様なほど高いこともわかったのだ。もしも鉄分がかなりを占めているとすれば、これまでCFBDSIR 2149-0403の質量を導き出していた計算が不確かなものになる。そこでこれらの分析からCFBDSIR 2149-0403の正体を推測すると2つの仮説が浮上するという。
・木星の13倍以内の質量の(解釈を広げてたとえ1億2000万歳だとしても)“若い”浮遊惑星である。
・木星の40倍以内の質量の“老齢”(20~30億歳)な金属性の褐色矮星である。
どちらにしても前例のない奇妙な天体ということになるのだが、オルタナティブメディアの「Inquisitr」などによれば、第3の可能性もかなり濃厚であるという。それは“人工物である可能性”だ。そして人工物であるとの仮説は金属製であることの良い説明にもなるのである。さらにこの物体こそが進んだ地球外知的文明の存在の証拠になるという声も上がっている。
それにしても木星よりも大きな金属製の構造物を造れるとすれば、人類では足元にも及ばない優れた科学技術を有していることになるだろう。今後さらにCFBDSIR 2149-0403の詳細が明らかになることを期待したい。
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