おにぎりに潜むリスク!!
新緑がまぶしい季節。海や山、近場の公園へとピクニックシーズンになったが、気温が高くなるこの時期は、お弁当のおにぎり1個でも食中毒の危険がある。「お天気いいし、ちょっと外でも」。手軽にさっと握ったそのおにぎり、大丈夫?
楽しいはずの海水浴がおにぎりで……。実際に起きた事例が、東京都福祉保健局のホームページに紹介されている。7月下旬、海水浴に行った家族5人が、昼食に持参したおにぎりを食べたところ、3人が吐き気や嘔吐(おうと)の症状に苦しみ、保健所の調査で黄色ブドウ球菌による食中毒と断定された。おにぎりは前日に握ったもので、一家は翌日に電車や海水浴場など高温の場所で持ち歩いていた。
同局によると、黄色ブドウ球菌は、人の手や指、鼻の粘膜などにいて、いったん増殖すると「エンテロトキシン」という毒素を作るという。エンテロトキシンは、100度で30分加熱しても壊れないので、「一度(食品などに)ついてしまうと、やっつけることができない」(同局)というやっかいなもの。食品と一緒にエンテロトキシンを食べることで、食中毒が発生する。
このケースでは、調理をした人などからおにぎりに黄色ブドウ球菌がついてしまい、かつ長時間にわたって高温の場所を持ち歩いたことで、菌が増殖してしまった。
おにぎり食中毒予防の要は「温度と時間」だ。前日に握ることはできるだけ避け、握ったらなるべく早めに食べてしまおう。持ち歩く時は、保冷剤などで常時10度以下を保つように。
そして何よりもまず、調理の前にしっかり手を洗うことは鉄則だ。うっかり鼻の周辺をさわったりしなようにしよう。握る時は、できるだけ手袋を使ったり、ラップでくるんだりし、手が食品に直接触れないように心がけたい。
同局によると、炊きたてのご飯をすぐに握ってしまうと、熱が逃げにくくなるので、少し冷ましてから握るとよいという。おにぎりの具も、生ものではなく、加熱したものがベストだ。
黄色ブドウ球菌による食中毒は、おにぎりのほか、仕出し弁当や調理パンなど手作業で製造される幅広い食品で起こり、そのリスクは高いという。症状は、激しい吐き気や嘔吐、下痢で、食後2~6時間、平均すると3時間で発症する。
昨年5月、熊本地震の避難所でおにぎりが原因の集団食中毒が発生した。10月には和歌山の高校の学食で、おにぎりを食べて食中毒症状を示した生徒から黄色ブドウ球菌が検出されている。厚生労働省の昨年の統計によると、ブドウ球菌による食中毒は36件698人で、中でも5~8月は件数も多い。おにぎり食中毒は珍しくない。さわやかな初夏の1日がつらい思い出にならないよう、くれぐれもご注意を。