漁獲が回復しつつあるアユ。生態系の異変を懸念する漁業者関係者は多い
琵琶湖のアユ漁に変調が見られている。今季はベテラン漁師も経験したことがない不漁に見舞われた。漁獲量は回復の兆しをみせているものの、不漁の原因は分からず、再び漁獲が止まる懸念もくすぶっている。滋賀県の漁業を支え続けてきたアユが消える。そんな事態が現実味を帯びた今年、漁業関係者の間では、琵琶湖の生態系に重大な異変が起こっているのではないかという不安が静かに広がっている。
■回復兆しも漁業者・県戸惑い
「やっぱり細かい(小さい)な」。15日の早朝。大津市和邇今宿沖のエリで、網をたぐり寄せた漁師の三田村進さん(64)はつぶやいた。この日の漁獲は25キロ。100キロを超える日もあった去年と比べると格段に少ない。ただ、その表情には笑顔ものぞいた。今季の不漁では、200グラムしか捕れない日もあった。「まだまだ満足できないが、全体的に戻ってきた」。三田村さんの願いは少しでも長く漁獲が続くことだ。
県漁業協同組合連合会によると、今年1月から4月27日までの活アユの漁獲量(エリ)は、琵琶湖全体でわずか2トン。平年並みだった前年の14分の1にとどまっていた。ところが、28日から南湖を中心に漁獲量が急回復。県内で1日に1トンを超える日も増え、年初からの累計(15日現在)は前年の3分の1程度にまで差が縮まってきた。
ただ、「いつまで続くか、楽観はできない」(県漁連)との懸念は根強い。昨年5月下旬には漁獲が急に途絶えた例もある。「不漁になった原因も、回復してきた原因も分からない」(志賀町漁協)という現状がさらに漁業者の不安を募らせている。
滋賀県は、昨年秋の産卵のピークが例年よりずれ込んだためにアユの成長が遅れ、沖合からエリがある沿岸に移動する時期も遅れたと推測している。ただ、4月の魚群調査では、魚影が3月の252群から102群に減っていたほか、アユの体長も例年4月は5~6センチのところ、4センチ程度と小ぶりだったことなど説明しきれない疑問は多い。県は原因究明に力を注ぐが、職員は「これまでの常識と違っている」と戸惑いを隠せないでいる。
一方、漁業関係者の中には、琵琶湖の生態系がいよいよ狂い始めたと感じる人も多い。琵琶湖総合開発による水位調整や護岸整備による砂浜やヨシの減少、外来魚の増加などで環境が徐々に変化し、これまで多くの在来種が数を減らしてきた。それでもアユだけは、人工河川に親魚を放流する増殖事業まで行ってきた。「アユだけは大丈夫とたかをくくっていた面もあった」(ある漁業関係者)だけに、不漁のショックは大きかった。
琵琶湖の漁獲量の半分を占めるアユの不漁は、漁師だけでなく、卸や加工、養殖業者など影響する範囲も広い。全国へ出荷してきた放流用アユのシェアが他産地に奪われる恐れもある。「来年も同じ状態なら、琵琶湖の漁業は壊滅的な打撃を受ける」。県漁連の鳥塚五十三会長はそう危機感をにじませ、原因の究明と放流量の増強を県に求めた。
■回復兆しも漁業者・県戸惑い
「やっぱり細かい(小さい)な」。15日の早朝。大津市和邇今宿沖のエリで、網をたぐり寄せた漁師の三田村進さん(64)はつぶやいた。この日の漁獲は25キロ。100キロを超える日もあった去年と比べると格段に少ない。ただ、その表情には笑顔ものぞいた。今季の不漁では、200グラムしか捕れない日もあった。「まだまだ満足できないが、全体的に戻ってきた」。三田村さんの願いは少しでも長く漁獲が続くことだ。
県漁業協同組合連合会によると、今年1月から4月27日までの活アユの漁獲量(エリ)は、琵琶湖全体でわずか2トン。平年並みだった前年の14分の1にとどまっていた。ところが、28日から南湖を中心に漁獲量が急回復。県内で1日に1トンを超える日も増え、年初からの累計(15日現在)は前年の3分の1程度にまで差が縮まってきた。
ただ、「いつまで続くか、楽観はできない」(県漁連)との懸念は根強い。昨年5月下旬には漁獲が急に途絶えた例もある。「不漁になった原因も、回復してきた原因も分からない」(志賀町漁協)という現状がさらに漁業者の不安を募らせている。
滋賀県は、昨年秋の産卵のピークが例年よりずれ込んだためにアユの成長が遅れ、沖合からエリがある沿岸に移動する時期も遅れたと推測している。ただ、4月の魚群調査では、魚影が3月の252群から102群に減っていたほか、アユの体長も例年4月は5~6センチのところ、4センチ程度と小ぶりだったことなど説明しきれない疑問は多い。県は原因究明に力を注ぐが、職員は「これまでの常識と違っている」と戸惑いを隠せないでいる。
一方、漁業関係者の中には、琵琶湖の生態系がいよいよ狂い始めたと感じる人も多い。琵琶湖総合開発による水位調整や護岸整備による砂浜やヨシの減少、外来魚の増加などで環境が徐々に変化し、これまで多くの在来種が数を減らしてきた。それでもアユだけは、人工河川に親魚を放流する増殖事業まで行ってきた。「アユだけは大丈夫とたかをくくっていた面もあった」(ある漁業関係者)だけに、不漁のショックは大きかった。
琵琶湖の漁獲量の半分を占めるアユの不漁は、漁師だけでなく、卸や加工、養殖業者など影響する範囲も広い。全国へ出荷してきた放流用アユのシェアが他産地に奪われる恐れもある。「来年も同じ状態なら、琵琶湖の漁業は壊滅的な打撃を受ける」。県漁連の鳥塚五十三会長はそう危機感をにじませ、原因の究明と放流量の増強を県に求めた。




