トランプ政権で大麻が合法に!? 強硬な反対派が司法長官で州法と連邦法に矛盾!?
メーン州、カリフォルニア州、マサチューセッツ州、ネヴァダ州、アリゾナ州では、21歳以上の人が嗜好品として少量の大麻を所持・使用することの是非が問われた。アリゾナ州は反対多数だったが、それ以外の4つの州では賛成多数となった。
アーカンソー州、フロリダ州、モンタナ州、ノースダコタ州では、医療目的に限定した大麻使用の是非が問われ、4州すべてで賛成多数となった。この結果、すでに大麻を合法化していた州を合わせると、全米で半数以上の州と首都ワシントンD.C.で、医療用もしくは娯楽用(もしくは両方)の大麻が合法化されることとなった。
オバマ前政権下では大麻合法化を事実上黙認
現在、連邦政府は大麻をヘロインやコカインと同類のドラッグに分類しており、連邦法では大麻は、医療用・娯楽用とも所持や販売は禁止されている。
大麻は、てんかん、アルツハイマー、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、関節炎、慢性通等に医療的効能があると考えられている。しかし、連邦レベルでは違法なので、大麻を使っての臨床実験は困難で、大麻の長期的医療効果に関する研究成果は少ない。医師は、医療用大麻の推薦書を発行することはできても、処方箋を出すことや患者への投与は禁じられている。
オバマ前政権下では、大麻をアルコールと同様に扱うべきだと考え、司法省は州による大麻合法化を事実上黙認していた。オバマ前大統領は医療大麻合法州が過半数を超えれば、連邦法の修正も検討するという姿勢だった。
アルコールやタバコよりも大麻のほうが危険度が低いという認識
大麻の長期使用者で、依存症状を示すのは約10%。それに対して、アルコールは15%、コカインは17%、タバコは32%と、大麻の依存率は低い。大麻の長期使用と精神病に明確な因果関係はなく、過剰摂取しても致命的というわけでもないという。
2016年10月にギャラップ社が行った世論調査では、大麻合法化に賛成する成人は60%にのぼり、過去最高を記録。アメリカでは、アルコールやタバコよりも大麻のほうが危険度が低いと認識されている。
トランプ大統領は大麻反対派として有名なジェフ・セッションズを司法長官に任命
アメリカの大麻産業は、2021年には210億ドル規模にまで拡大し、2020年までに合法大麻市場で25万件の雇用が創出と予想されている。合法化した各州は、新たな税収源の恩恵を受ける。カリフォルニアでは、2018年の大麻関連税収が7億7700万ドルになると予測されている。
経済最優先のトランプ政権にとって、急成長の大麻ビジネスは否定しがたい魅力がある。トランプ自身も2015年の政治集会で、医療大麻の解禁や大麻の合法化を各州が決定することについて、肯定的な姿勢を見せていた。ちなみに現首相夫人の安倍昭恵さんも、日本での大麻解禁に熱心だと言われている。
ところがトランプ大統領は、大麻使用に対して強硬な反対派として有名なジェフ・セッションズを、司法長官に任命した。セッションズ司法長官は、娯楽用大麻の使用を合法化している州で、連邦の大麻法を行使し始めることを示唆し、2017年3月には大麻に関して適切に法律を適用するとラジオで語った。
司法省はみせしめに、大麻使用を合法化している州の企業を数社、取り締まるかもしれない。そうすることで、他の大麻販売企業に萎縮効果を与えようと考えるかもしれない。しかし、連邦政府は人員不足で、大規模な直接取締ができないというのが実状だ。連邦法があっても、それを実施するマンパワーが欠落しているのである。
大麻をめぐる法律が矛盾した形で共存している状況
アメリカは自由の国であり民主主義の国なので、多数が大麻の合法化を望むのであれば、その方向に進むことを筆者は否定するつもりはない。
しかし、自由と民主主義を守るためには、法治国家を維持することが前提となろう。『日本大百科全書(ニッポニカ)』によると、法治国家とは「政治は法律に基づいて行われるべしという法治主義によって運営される国家」と定義づけられている。
現在は、大麻を合法化した州法と、大麻を禁止する連邦法が、矛盾した形で共存している状況だ。悪法も法なり。大麻の所持や販売を禁止した連邦法があるのであれば、当然それを遵守しなければならない。
きっちりと連邦法を遵守している人に対して公平であるためには、法を破った人間を取り締まらなければならない。そうでなければ、法を破った人が得をし、法を遵守する正直者が損をすることとなり、法治国家は崩壊してしまう。法治主義の精神に則り、自由と民主主義を守るために、決められた手続きにしたがって連邦法を変えることもできる。