(漢方医学新聞第3号:1997)
アトピー性皮膚炎の漢方治療ではすでにカリスマの域に達している二宮文乃(ふみの)先生。
使用している方剤はあまり変わらないのに、彼女の診療は成功率が非常に高くマジックとさえ言われています。
そのエッセンスを学ぼうと彼女の書いた本を読んでも、どうもピンときません。
まあ、私の理解力不足なんでしょうが・・・(^^;)。
約20年前の記事を見つけました。
繰り返し読んで噛みしめ、理解に努めたいと思います。
●アトピー性皮膚炎の特長
(1)消化器系のバリア機能異常が主要因
(2)成人のアトピーは外因子が50%
(3)主に虚証・病期は進んでても陽明期
皮膚、気道粘膜、胃腸粘膜のバリア機能の先天性脆弱が主要因と考えられる、過敏性皮膚炎と合わせ双方で疾患全体の80%を占める。
胃腸が弱いため偏食になりがちで、皮膚炎を助長する傾向に。従来は、大人になって胃腸が丈夫になると自然に治ったが、環境の変化により、一旦治癒したかに見えてたびたび再発する例が顕著。
●漢方による診断のポイント
(1)上部の湿潤に治頭瘡一方+桔梗・石膏
(2)その後、全身の治療を行う
(3)抑肝散でイライラを押さえる
(4)下半身の冷えを暖める
(5)小建中湯で弱った胃腸を回復
アトピー性皮膚炎を治療する場合、標治療を優先させ、その後本治療に取りかかる必要がある。
標治療には漢方薬だけではなく、西洋薬との併用が効果的。
酷いときには精神を安定させて、症状をいくらかでも軽くする。
抑肝散や柴胡剤を使い様子を見て、荊芥連翹湯などを使って全身の症状を軽快させると、本人の気持ちも晴れて協力的になり、以後の治療が進めやすい。
●治癒のポイント
(1)初診時に必ず少しでも改善
(2)皮膚科医と協力して治療
(3)本人の食生活・習慣の改善努力を促す
(4)夏季・冬季の症状の違いに注意
患者は長患いに加えて、それまでの治療でかえって悪化させているケースが多く、極度の医療不審を抱いている場合が少なくない。
少しずつでも症状を改善していけば、患者の治そうという意欲もわく。
また、夏と冬の気候の違いによる病態に注意、冬に効いた処方が夏に効かなくなり途中で投げてしまう例も。
幼児のアトピー性皮膚炎は、ほとんどの場合皮膚、気道、胃腸粘膜の先天的機能障害。小建中湯、黄耆建中湯を投与し、2週間ほどで寛解する例が多い。
より深刻なのは、小児から成人にかけての罹患。長患いにより、様々なアレルギー症状を併発、従来は平気だったものまで、どんどんアレルゲンへと転換する。
一旦軽快したように見えても、何年か経って再発したりする。
内因子、外因子ともに複合、複雑化してくるためで、アレルゲンも多岐にわたってくる。
一つ一つの病態を克服していくことで、徐々に疾患の本体を突き止めていく努力が必要となる。
標治療をしてから、本治療に移るプロセスだ。
治頭瘡一方+石膏桔梗で、上半身、特に首から上の皮膚症状は改善される。
顔を最初に治すのは、毎朝顔を見る度に幻滅し、女性の場合特に外出できず、化粧もできないでイライラが助長させられるため、これを軽快させることで本人の意識を高めるという意味合いもある。
次に、全身の皮膚症状を寛解させる。
ほとんどが虚証で冷える例が多く、下半身の冷えを取る処方をするとほとんどの症例で全体症状が軽快する。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯などで冷えを取る。
物理的に足を暖めるだけで軽くなることさえある。全身が酷いときには白虎加人参湯や、麻黄の入った処方を使うが、2週間程度の様子見にとどめる。
それ以上の強い薬は使わない。
症例の多くで荊芥連翹湯が奏功した。
また、夏の暑い時期に汗をかくと酷くなる例や、冬の乾燥時に悪化することもある。
暑い時期に酷くなる例には桂枝加黄耆湯を、冬の乾燥時には温清飲、当帰飲子などを用いた。
全身の痒みが収まり、酷い痒疹が目に見えて軽快してくると、気分も楽になり、社会生活も復帰できる。 こうなると後は生活習慣の改善も促され、寛解は近い。
【乳児期】
頭部・顔面の湿潤 → 治頭瘡一方
全身の皮膚炎 → 小建中湯、黄耆健中湯、五苓散、抑肝散加陳皮半夏
【幼小児期】
頭部・顔面の湿潤 → 治頭瘡一方
苔癬、乾性皮膚炎 → 補中益気湯、柴胡清肝湯、六味丸、小建中湯、当帰飲子
湿潤と紅斑 → 消風散、桂枝加黄耆湯、黄耆健中湯、抑肝散加陳皮半夏
【思春期・成人期】
顔面紅潮 → 白虎加人参湯、治頭瘡一方加桔梗石膏、黄連解毒湯
紅斑、苔癬、痒疹 → 温清飲、荊芥連翹湯、柴胡桂枝湯、竜胆瀉肝湯、十味敗毒湯
湿潤、糜爛 → 越婢加朮湯、消風散、排膿散及湯、治頭瘡一方、桂枝加黄耆湯
乾性皮膚炎 → 当帰飲子、四物湯
<参考>(大野修嗣先生によるアトピー性皮膚炎に対する漢方治療)
アトピー性皮膚炎の漢方治療ではすでにカリスマの域に達している二宮文乃(ふみの)先生。
使用している方剤はあまり変わらないのに、彼女の診療は成功率が非常に高くマジックとさえ言われています。
そのエッセンスを学ぼうと彼女の書いた本を読んでも、どうもピンときません。
まあ、私の理解力不足なんでしょうが・・・(^^;)。
約20年前の記事を見つけました。
繰り返し読んで噛みしめ、理解に努めたいと思います。
●アトピー性皮膚炎の特長
(1)消化器系のバリア機能異常が主要因
(2)成人のアトピーは外因子が50%
(3)主に虚証・病期は進んでても陽明期
皮膚、気道粘膜、胃腸粘膜のバリア機能の先天性脆弱が主要因と考えられる、過敏性皮膚炎と合わせ双方で疾患全体の80%を占める。
胃腸が弱いため偏食になりがちで、皮膚炎を助長する傾向に。従来は、大人になって胃腸が丈夫になると自然に治ったが、環境の変化により、一旦治癒したかに見えてたびたび再発する例が顕著。
●漢方による診断のポイント
(1)上部の湿潤に治頭瘡一方+桔梗・石膏
(2)その後、全身の治療を行う
(3)抑肝散でイライラを押さえる
(4)下半身の冷えを暖める
(5)小建中湯で弱った胃腸を回復
アトピー性皮膚炎を治療する場合、標治療を優先させ、その後本治療に取りかかる必要がある。
標治療には漢方薬だけではなく、西洋薬との併用が効果的。
酷いときには精神を安定させて、症状をいくらかでも軽くする。
抑肝散や柴胡剤を使い様子を見て、荊芥連翹湯などを使って全身の症状を軽快させると、本人の気持ちも晴れて協力的になり、以後の治療が進めやすい。
●治癒のポイント
(1)初診時に必ず少しでも改善
(2)皮膚科医と協力して治療
(3)本人の食生活・習慣の改善努力を促す
(4)夏季・冬季の症状の違いに注意
患者は長患いに加えて、それまでの治療でかえって悪化させているケースが多く、極度の医療不審を抱いている場合が少なくない。
少しずつでも症状を改善していけば、患者の治そうという意欲もわく。
また、夏と冬の気候の違いによる病態に注意、冬に効いた処方が夏に効かなくなり途中で投げてしまう例も。
幼児のアトピー性皮膚炎は、ほとんどの場合皮膚、気道、胃腸粘膜の先天的機能障害。小建中湯、黄耆建中湯を投与し、2週間ほどで寛解する例が多い。
より深刻なのは、小児から成人にかけての罹患。長患いにより、様々なアレルギー症状を併発、従来は平気だったものまで、どんどんアレルゲンへと転換する。
一旦軽快したように見えても、何年か経って再発したりする。
内因子、外因子ともに複合、複雑化してくるためで、アレルゲンも多岐にわたってくる。
一つ一つの病態を克服していくことで、徐々に疾患の本体を突き止めていく努力が必要となる。
標治療をしてから、本治療に移るプロセスだ。
治頭瘡一方+石膏桔梗で、上半身、特に首から上の皮膚症状は改善される。
顔を最初に治すのは、毎朝顔を見る度に幻滅し、女性の場合特に外出できず、化粧もできないでイライラが助長させられるため、これを軽快させることで本人の意識を高めるという意味合いもある。
次に、全身の皮膚症状を寛解させる。
ほとんどが虚証で冷える例が多く、下半身の冷えを取る処方をするとほとんどの症例で全体症状が軽快する。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯などで冷えを取る。
物理的に足を暖めるだけで軽くなることさえある。全身が酷いときには白虎加人参湯や、麻黄の入った処方を使うが、2週間程度の様子見にとどめる。
それ以上の強い薬は使わない。
症例の多くで荊芥連翹湯が奏功した。
また、夏の暑い時期に汗をかくと酷くなる例や、冬の乾燥時に悪化することもある。
暑い時期に酷くなる例には桂枝加黄耆湯を、冬の乾燥時には温清飲、当帰飲子などを用いた。
全身の痒みが収まり、酷い痒疹が目に見えて軽快してくると、気分も楽になり、社会生活も復帰できる。 こうなると後は生活習慣の改善も促され、寛解は近い。
【乳児期】
頭部・顔面の湿潤 → 治頭瘡一方
全身の皮膚炎 → 小建中湯、黄耆健中湯、五苓散、抑肝散加陳皮半夏
【幼小児期】
頭部・顔面の湿潤 → 治頭瘡一方
苔癬、乾性皮膚炎 → 補中益気湯、柴胡清肝湯、六味丸、小建中湯、当帰飲子
湿潤と紅斑 → 消風散、桂枝加黄耆湯、黄耆健中湯、抑肝散加陳皮半夏
【思春期・成人期】
顔面紅潮 → 白虎加人参湯、治頭瘡一方加桔梗石膏、黄連解毒湯
紅斑、苔癬、痒疹 → 温清飲、荊芥連翹湯、柴胡桂枝湯、竜胆瀉肝湯、十味敗毒湯
湿潤、糜爛 → 越婢加朮湯、消風散、排膿散及湯、治頭瘡一方、桂枝加黄耆湯
乾性皮膚炎 → 当帰飲子、四物湯
<参考>(大野修嗣先生によるアトピー性皮膚炎に対する漢方治療)