漢方学習ノート

漢方医学の魅力に取りつかれた小児科医です.学会やネットで得た情報や、最近読んだ本の感想を書き留めました(本棚3)。

「中国医学はいかにつくられたか」 by 山田慶兒

2012年02月12日 17時01分08秒 | 漢方
 岩波新書、1999年発行。

 中国医学の古典「傷寒論」「金匱要略」に挑戦する前に、自分の中での位置づけをしておきたいと思い立ち、比較的読みやすそうなこの本を求めて読んでみました。
 著者は医師ではありません。科学史が専門の京都大学教授です。
 新書とは云え、読破するには努力が必要でした。
 中国の歴史に関する記述ですから、とにかく漢字が多い。人物の名前、医学書の名前、医学用語がすべて読めない漢字・・・その割にはふりがなが少なく、音で読もうとするとなかなか前へ進みません。途中から音読のイメージをあきらめて、ただ字面を追うことにしました。
 でも悔しいので、結局難解も読み返すことになりました(苦笑)。
 私の印象に残ったことを挙げてみます;

・中国医学の特殊性は「鍼」を発明したことであり、薬物療法は後から発達した。

・鍼療法の根拠として経絡という概念を作り出した。

・古代中国医学は残されている医学書から推察するに、先人の残した書を検証・改訂して新たに著し、伝統を引き継ぎつつ改変して進歩してきた。一つの概念が、時代により異なる意味づけをされることも茶飯事であった。

・「黄帝内経」は論文集であり、何百年もかけて多数の医師により編纂され、悪く云えばまとまりがない、よく云えば多彩で豊かな内容である。

・「傷寒論」は初めて個人名で編纂された歴史的な医書である。張仲景という人物が残したのは木簡などに書かれたシンプルな指示書であり、当初から系統立てて書かれたわけではない。それを後世の学者達が研究する過程において証と薬が対応する理論が顕在化してきたという希有な例である。
 まるで張仲景が仕込んだミステリーを後の人々が解読したかのよう。
 傷寒論って、偉大なんだなあと再認識した次第です。


 ふと思ったこと。
 「病は気から」という言葉がありますね。
 また、つらい症状があって病院で検査をしても異常が見つからないときに医師の口から漏れる言葉「気のせいじゃないですか?」というのもあります。
 この『気』が気になります。

 中国医学では病態生理の中心がこの『気』なのです。
 気を食物として取り入れて身体を巡らせる、それが滞ったり偏在したりすると病気が生じるという概念。
 そしてその歪み・偏りを元の良いバランスに戻すことが治療です。
 『気』が気になったら日本漢方の出番、とあらためて頷く私でした。

 はじめから心と体が結びつているという中国医学の考え方。
 これは心と体を分離して考えた西洋医学と真逆ですね。

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