“子ども”を取り巻く諸問題

育児・親子・家族・発達障害・・・気になる情報を書き留めました(本棚4)。

小児肥満に薬物療法?

2024年11月07日 16時11分19秒 | 子どもの心の問題
小児の肥満が増えています。
学校健診でも実感するところです。

日本では肥満+血液検査値異常 → 肥満症として、
治療・管理が必要とされています。

私が担当している学校健診では「肥満度50%」で受診勧奨の通知が渡されます。
しかし、実際に受診する生徒の方が少ないのが現状です。
その理由は、
「本人が今困っていないから」
「家族全員が肥満体なので異常とは思えない」
等々、一言でいうと「病識がない」のですね。

一方、病識のある家庭の生徒は、
あの手この手で改善を試みています。
本日来院したお子さんは、
「どうしようもないので、冷蔵庫につける鍵を買いました」
とお母さんがため息交じりにつぶやきました。

さて、日本より肥満が深刻な欧米では、
薬や手術を行っています。

先日、欧米で小児肥満への投与が認可された薬が誕生しました。
もちろん、日本では未認可です。
それを扱った記事を紹介します。

▢ リラグルチドは小児肥満の治療薬として有効である
 解説:住谷 哲(すみたに さとる)  
 社会福祉法人恩賜財団大阪府済生会泉尾病院 糖尿病・内分泌内科 主任部長
臨床研究適正評価教育機構:2024/11/06)より一部抜粋(下線は私が引きました);
(オリジナルの記事)肥満小児へのリラグルチド、BMIが改善/NEJM(2024/10/08掲載)

 『小児肥満症診療ガイドライン2017』1)によると、小児肥満の定義は
「肥満度が+20%以上、かつ体脂肪率が有意に増加した状態(有意な体脂肪率の増加とは、男児:25%以上、女児:11歳未満は30%以上、11歳以上は35%以上)」
であり、肥満症
「肥満に起因ないし関連する健康障害(医学的異常)を合併するか、その合併が予想される場合で、医学的に肥満を軽減する必要がある状態をいい、疾患単位として取り扱う」とされる。
 ここで肥満度は学校保健安全法に基づき、
肥満度(%)={(実測体重-標準体重)/標準体重}×100
が広く用いられている。
 さらに小児期からの過剰な内臓脂肪蓄積は早期動脈硬化につながることから、小児期メタボリックシンドローム診断基準もすでに作成されている。小児肥満症患者の多くが成人肥満症に移行することから、現在では小児肥満症は成人の非感染性疾患(non-communicable disease:NCD)抑制のための重要な対象疾患と認識されている。

 わが国では肥満と肥満症が区別されているが、欧米では区別されず、ともにobesityである。本試験の対象者も肥満に起因ないし関連する健康障害の有無はinclusion criteriaに含まれておらず、obesity-related complicationsとして耐糖能障害や高血圧などを有する対象者が約半数含まれている。したがって、以下のコメントでは「小児肥満症」ではなく「小児肥満」を使用する。

 成人と同じく小児肥満の治療も食事・運動療法が基本となる。しかし、薬物療法が必要な患者も少なからず存在する。現在のわが国では残念ながら小児肥満に適応のある薬物は存在しない。(商品名:ビクトーザ)はわが国では肥満治療薬として承認されていないが、欧米では高用量(3.0mg/日)が肥満治療薬として承認されている。これまで成人(>18歳)2)、青少年(12~18歳)3)でその有効性が報告され、すでに治療薬として承認されているが、小児(6~12歳)での有効性は不明であった。そこで本試験「SCALE-Kids試験」が実施された。

 対象患者の背景は平均で年齢10歳、身長149cm、体重70kg、腹囲95cm、BMI 31kg/m2である。リラグルチドの投与量は成人、青少年と同量の3.0mg/日であり56週後のBMIの変化率が主要評価項目とされた。その結果は予想どおり、リラグルチド群で有意なBMIの減少を認め、有害事象も許容範囲であった。

 本試験の結果に基づいて、リラグルチドはおそらく小児肥満治療薬として欧米で承認されるだろう。わが国でも肥満の有病率は増加しているが欧米の比ではなく、本年ようやく成人に対してセマグルチド(商品名:ウゴービ)が肥満症治療薬として使用可能となったばかりである。わが国では成人に対してもリラグルチドは肥満治療薬として承認されておらず、小児肥満治療薬としての道のりはまだまだ遠いと思われる。

<参考文献・参考サイト>
1)日本肥満学会編. 小児肥満症診療ガイドライン2017. ライフサイエンス出版;2017.
2)Pi-Sunyer X, et al. N Engl J Med. 2015;373:11-22.
3)Kelly AS, et al. N Engl J Med. 2020;382:2117-2128.


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