昔からあるNHKの子育て番組。
数年ごとに番組名は変わりますが、歴史があります。
興味があるテーマをみかけると、ときどき視聴してます。
自分の子育て時代からですから、もう30年近くなりますね。
その中で特に記憶に残っている番組は、
「発見!世界の子育て」(NHK-BSで2001年に放送)
です。
子育て中の問題を1回に1テーマを選んで取り上げ、
インターネットで世界各国の専門家が解説する、異色の内容でした。
しかし、答えがひとつに収束しないところが興味深い。
国により、視点により、いろんな意見があり、
「子育てに正解はないんだなあ」
と感じたことを覚えています。
さて、過去も今も保護者の方々は悩んでおり、
診療や検診の場で以下の相談を受けます;
・夜泣き
・かんしゃく
・偏食
知識は蓄積されているはずなのに、
質問されても即答できません。
私は小児科医ですが漢方薬も使うので、
夜泣きとかんしゃくについては、
一般育児書に書いてあることを一通り行っても解決しない場合は、
漢方薬をお勧めしています。
そのお薬は500年前から使われてきた、祖先お墨付きのもの。
ところが先日、「すくすく子育て」を見ていて、
「これは新しい考え方だ!」
という寝かしつけ法を知りました。
黒田公美(理化学研究所・脳科学総合研究センター 脳神経科学)氏による、
「“輸送反応”を利用すると子どもは寝ます」
というアドバイス。
“輸送反応”とは?
→ “ほ乳動物において親が子どもを運ぶ際、子どもがおとなしくしている現象”
だそうです。
子どもを輸送する理由は、大抵危険が迫っている状況なので、
子どもが泣きわめくと見つかってしまうから、との理由付け。
な、なるほど。
ちなみに、動物の赤ちゃんには夜泣きやぐずりはなく、親もあやしたりしません。
そう言えば、ネコが「ニャー」と泣くのは人間に対してだけ、
と「チコちゃんに叱られる」でも紹介していましたね。
これを人間の子育て中の悩みのひとつである“寝かしつけ”に応用すべく、
NHKが番組の中で実験してみました。
お父さんが赤ちゃんを抱っこして5分間歩き続ける実験。
ここでポイントとなるのは、
・赤ちゃんの胸とお腹と親の体を密着させる
・揺らしたりあやしたりしない
・寝ているかどうか止まって途中で確認しない
こと。
実際に2名のお父さんにやっていただくと、
ホントに5分後には寝ていて、スタジオ騒然&驚嘆の声!
ただ、“ベッドおろし”の儀式の際に2人とも起きてしまいましたが。
この“ベッドおろし”にもテクニックがあり、
頭がぐらぐらした状態で下ろそうとすると、
子どもは不安になり目覚めてしまうそうです。
また、背中がベッドに付く前に胸とお腹が親の体から離れてしまうと、
「落ちていく〜」
と本能が反応して不安になり泣いてしまう。
ポイントは、
・まずお尻を下ろす
・体は親に密着したままベッドにゆっくり下ろす
・体が離れたら手が中に泳ぎ不安になるので優しく手を添える
だそうです。
哺乳類の赤ちゃんは「輸送反応」という反応を生まれつき備えています。
「輸送反応」とは、哺乳類の子どもが親に運ばれるときに、泣きやんでおとなしくなる反応です。
動物は移動のとき、敵に見つからないように注意しなくてはいけないため、
動物は移動のとき、敵に見つからないように注意しなくてはいけないため、
生き延びるための子どもの本能として、親に協力しておとなしくします。
この本能が、人間にも備わっていると考えられています。
実際の実験でも、だっこして移動を始めると泣いている赤ちゃんの心拍数が下がり、おとなしくなりました。
「輸送反応」は、「泣いている赤ちゃんを泣きやませる」のに即効性があります。
「輸送反応」は、「泣いている赤ちゃんを泣きやませる」のに即効性があります。
また、「寝かしつけ」や、「赤ちゃんが眠りやすい状態までもっていき、
赤ちゃんを落ち着ける」ということにも効果がありますよ。
【対象年齢】
効果が出やすいのは生後1~8か月ごろまでです。
それ以上大きい赤ちゃんの場合、体が重くてしんどいです。
効果が出やすいのは生後1~8か月ごろまでです。
それ以上大きい赤ちゃんの場合、体が重くてしんどいです。
また、赤ちゃん自身の眠るリズムが大切になってくるので、
眠くないときにやっても、うまくいかなくなります。
【注意事項】
(1)決めた時間よりも、時間を延長しないでください。
10分歩いてもダメな場合は、一度お休みをしてください。
(1)決めた時間よりも、時間を延長しないでください。
10分歩いてもダメな場合は、一度お休みをしてください。
(2)赤ちゃんによって個人差があるので、好みに合わせて調節してください。
歩いている途中で寝てしまう子もいれば、
歩いている途中で寝てしまう子もいれば、
刺激がないのが好きな子などで座ったときにはじめて寝られる子もいます。
また、抱き方も横抱きが好きな子、縦抱きが好きな子と、
赤ちゃんによって好みがあります。
好みに合わせて調節してあげてください。
(3)筋力が弱いなど体の心配がある赤ちゃんには、行わないでください。
(4)首がすわっていない赤ちゃんの場合は、しっかりと支えてください。
(5)部屋の中で行う場合、だっこしている人がつまずかないよう部屋の中の物を片づけ、安全確保をしてください。
★ポイント
(1)寝かしつけようと思って歩くのではなく、「用事があって移動する」という気持ちで5分間歩いてください。
寝かしつけようと思って歩くと、ゆっくりになりがちです。
(1)寝かしつけようと思って歩くのではなく、「用事があって移動する」という気持ちで5分間歩いてください。
寝かしつけようと思って歩くと、ゆっくりになりがちです。
5分間と決めたら、その間はできるだけ止まらないように歩いてください。
(2)だっこしている人の体に赤ちゃんのおなかと胸をピッタリくっつけ、グラグラさせないでください。
だっこしている人の体に赤ちゃんの体がピッタリくっついていれば、
だっこしている人の体に赤ちゃんの体がピッタリくっついていれば、
だっこでも、だっこひもを使ってもかまいません。
また、おんぶでも大丈夫です。
これはパパにもオススメの方法ですよ。
<参考>
▢ 赤ちゃんの寝かしつけと夜泣き(すくすく子育て)
▢ 寝かしつけ大作戦(すくすく子育て)
▢ 抱っこして歩くと赤ちゃんがリラックスする仕組みの一端を解明(動画あり)
-経験則を科学的に証明、子育ての新たな指針に-
(2013年4月19日:理化学研究所)より;
・・・生後6カ月以内のヒトの赤ちゃんとその母親12組の協力を得て、母親に赤ちゃんを腕に抱いた状態で約30秒ごとに「座る・立って歩く」という動作を繰り返してもらいました。その結果、母親が歩いている時は、座っている時に比べて赤ちゃんの泣く量が約10分の1に、自発的な動きが約5分の1に、心拍数が歩き始めて約3秒程度で顕著に低下することを見いだし、赤ちゃんがリラックスすることを科学的に証明しました。
→ この現象、私は日々実感しています。予防接種の際、泣いていた生後数ヶ月の赤ちゃんは、母親が抱いた状態で立ち上がるとすぐに泣き止むことが多いのです。まだ「注射が怖い」という感覚があるとは思えない月齢でのこの現象は“輸送反応”で説明ができますね。
理研:黒田 公美(くろだ くみ) 親和性社会行動研究チーム