かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 2の185

2019-08-06 17:56:49 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究2の25(2019年7月実施)
     Ⅲ〈行乞〉『泡宇宙の蛙』(1999年)P120~
     参加者:泉真帆、岡東和子、A・K、T・S、鹿取未放
     レポーター:泉真帆   司会と記録:鹿取未放


185 将軍山古墳というを見ておればめぐりに湧きて埴輪が増ゆる

     (レポート)
 「将軍山古墳」とよばれている古墳をみていたら、古墳を縁取るようにむくむくと埴輪が湧いてきて、埴輪はどんどん増えて行った、という一首だろう。「将軍山古墳」は埼玉県行田市の埼玉(さきたま)古墳群の、九つある古墳のうちの一つで、前方後円墳。稲荷山古墳の隣りにあり大きさは八番目という。(古墳のそばには将軍山古墳展示館もある)将軍山古墳の写真をみると、埴輪が古墳を守るように等間隔に並んで取り囲んでいるのがわかる。動詞「湧き」の斡旋が効いており、作者のイメージ世界が動画で伝わってくる。「湧き」によって埴輪は何かの精霊のようにも感じられ、一首に物語性も生まれている。(真帆)
 

           (当日意見)
★将軍山古墳を見ていたら作者のイメージの中で、埴輪が湧き出てきてどんどん増えていくと
 いう楽しい歌かと思っていたら、古墳の周りに実際に埴輪が並んで立っているのですね。
     (鹿取)
★私も将軍山という名前から埴輪のイメージが引き出されたのかと思っていました。渡辺
 さんは原始的なイメージを飛ばすことができる人なんですかね。(A・K)
★そう思います。松男さんって他の人と全く違う歌だから、何かこう新しい人のように思
 っていたけど、むしろ古代的な感性の人なんですね。それは巷で言われているアニミズ
 ムとはだいぶ違うと思いますが。感性が新しいのではなく古いんです。さっき言った評
 論、茂吉と馬場と松男さんの挽歌を読み比べるっていうのを書いていて、ああこの人は
 人麻呂なんかよりもっと古代的な感覚を保持している人なんだって思いました。(鹿取)
★古墳なんだけど、見る、湧く、増ゆるって動詞が出てきて動きがあるんですね、死んで
 ない。さっき鹿取さんが楽しい歌とおっしゃったけど、こういう動きからきているんで
 しょうね。(A・K)
★不可思議さとファンタジーが同居している感じですね。(鹿取)

コメント
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