渡辺松男研究2の26(2019年8月実施)
Ⅲ〈行旅死亡人〉『泡宇宙の蛙』(1999年)P125~
参加者:岡東和子、A・K、T・S、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:岡東和子 司会と記録:鹿取未放
192 橋脚にぶちあたりたる凩のきらめくなかに風の歯が見ゆ
(レポート)
凩が吹く日に、作者は橋の近くに来ている。風が橋脚に(ぶちあたる)というのだから相当強い風であることがわかる。しかしその凩を(きらめく)と表現している作者の心には、自然への憧れや畏怖があるのだろう。そしてその凩のなかに(風の歯)が見えたという。ここまできて、(きらめく)の語は(歯)という語の伏線になっていることに気づく。冬には凩が吹き付ける地域に暮らす人の逞しさ、自然への向き合い方に思いを馳せる一首である。(岡東)
(当日意見)
★すごくいいレポートですね。松男さん、群馬だから空っ風の土地ですね。凩をき
らめくって普通形容しませんが独特ですね。それと風の歯というのが抜群。
(鹿取)
★凩が川の波を巻き上げて、その波だったところが歯なのかな。(T・S)
★なるほど、茂吉の逆白波ですね。(鹿取)
★ぶち当たって、きらめいて、そして風の歯ですね、これだけバンバンバンと強く
出ませんね、普通は強弱をつけようとするから。でもこの歌は、強強強、でも説
得力がある。きらめくも風の歯も感覚ですね、こういう時は思い切って自分の感
覚を信じるのですね。風の歯のごとしではなく風の歯が見ゆ、見たっていうので
すから。ここがやっぱり他の歌人とは全然違いますよね。上州ですからかかあ天
下と空っ風っていいますものね。女性が働いて、男性はねんねこ袢纏で子供おん
ぶしているっていうんでしょう、今は違うでしょうけど。とにかく乾燥していて
湿潤とは違う。渡辺さんって体感的な表現をしますよね。風の歯っていうのも自
分の肉体に近い感じですね、身体感覚というのか。(A・K)
Ⅲ〈行旅死亡人〉『泡宇宙の蛙』(1999年)P125~
参加者:岡東和子、A・K、T・S、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:岡東和子 司会と記録:鹿取未放
192 橋脚にぶちあたりたる凩のきらめくなかに風の歯が見ゆ
(レポート)
凩が吹く日に、作者は橋の近くに来ている。風が橋脚に(ぶちあたる)というのだから相当強い風であることがわかる。しかしその凩を(きらめく)と表現している作者の心には、自然への憧れや畏怖があるのだろう。そしてその凩のなかに(風の歯)が見えたという。ここまできて、(きらめく)の語は(歯)という語の伏線になっていることに気づく。冬には凩が吹き付ける地域に暮らす人の逞しさ、自然への向き合い方に思いを馳せる一首である。(岡東)
(当日意見)
★すごくいいレポートですね。松男さん、群馬だから空っ風の土地ですね。凩をき
らめくって普通形容しませんが独特ですね。それと風の歯というのが抜群。
(鹿取)
★凩が川の波を巻き上げて、その波だったところが歯なのかな。(T・S)
★なるほど、茂吉の逆白波ですね。(鹿取)
★ぶち当たって、きらめいて、そして風の歯ですね、これだけバンバンバンと強く
出ませんね、普通は強弱をつけようとするから。でもこの歌は、強強強、でも説
得力がある。きらめくも風の歯も感覚ですね、こういう時は思い切って自分の感
覚を信じるのですね。風の歯のごとしではなく風の歯が見ゆ、見たっていうので
すから。ここがやっぱり他の歌人とは全然違いますよね。上州ですからかかあ天
下と空っ風っていいますものね。女性が働いて、男性はねんねこ袢纏で子供おん
ぶしているっていうんでしょう、今は違うでしょうけど。とにかく乾燥していて
湿潤とは違う。渡辺さんって体感的な表現をしますよね。風の歯っていうのも自
分の肉体に近い感じですね、身体感覚というのか。(A・K)