かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 2の186

2019-08-07 18:15:48 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究2の25(2019年7月実施)
     Ⅲ〈行乞〉『泡宇宙の蛙』(1999年)P120~
     参加者:泉真帆、岡東和子、A・K、T・S、鹿取未放
     レポーター:泉真帆   司会と記録:鹿取未放


186 金(きん)という国ほろびたることなども風透明な日はおもい出ず

     (レポート)
 黄砂やスモッグなどの塵を含まない「透明」な風には人の生活の気配がない。国滅びて山河あり、という感慨を作者はうたっているように私には思える。「金という国ほろびたることなども」という中国の盛衰興亡史への連想は、一首前に詠まれた将軍山古墳の隣りにある稲荷山古墳に出土した国宝「金錯銘鉄剣(きんさくめいてつけん)」などから刺激されたものかもしれない。(真帆)


           (当日意見)  
★「金錯銘鉄剣」は金という国から出たわけではないのですね。(鹿取)
★違います。金色からの連想ですね。(真帆)
★金は真帆さんがおっしゃったように12世紀から13世紀にかけての中国の国の名前ですね。女真
  族が建てた国で中国東北部・内モンゴル・華北を支配したとあります。この歌の初出を調べてないけ
 ど、古墳とか鉄剣とは発想が別個のような気がします。金という国の名前と風透明な日というのと響
 き合って、はろはろとした寂しさを感じて好きな歌です。日本の秋の風が透明な日の感慨なんですね。
 レポーターの「国滅びて山河あり」は本来は「国敗れて」で、金はモンゴル軍に滅ぼされたのですが、
 山河ありという感慨とは違うと思います。(鹿取)
★鹿取さんに同感です。(A・K)

コメント
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