かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 2の196

2019-08-17 18:32:49 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究2の26(2019年8月実施)
     Ⅲ〈行旅死亡人〉『泡宇宙の蛙』(1999年)P125~
     参加者:岡東和子、A・K、T・S、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:岡東和子    司会と記録:鹿取未放


196 車庫のなかしずまりかえりいたりけり死にたる牛のように自動車

     (レポート)
 車庫の中に、じっと置かれている自動車。「しずまりかえりいたりけり」は、車庫の中の様子でもあり、自動車のたたずまいでもあろう。「り」の音を4回くりかえすことで、静けさを一層確かなものにしている。そして、そこに置かれた自動車は、死んだ牛のように動かないという。「自動車」と、体言止めにすることで、死んでしまった牛のように、もう使われないままの不本意な存在になってしまった自動車が強調されている。(岡東)


     (当日意見)
★岡東さん、まだ歌を始められて日が浅いのですけど、そして初心の人は鑑賞して
 も意味しか論じないというのが大方だけど、このレポートは韻律にも体言止めに
 も目配りしていて、すごいですね。死んで生まれた牛が湯気を立てているのをト
 ラックが運んでいったという歌もあって、牛っていうものが松男さんにはとって
 も身近なものだったんですね。農業をしていたお祖父さんと身近に接していた体
 験が底にあるのでしょう。生ま生まとしていますね、自動車なのに。(鹿取)
★これも無機的なものが有機的なものになっていますね。自動車を牛って。きっと
 こうしてやろうではなく、直感的なんでしょうね。作り物じゃないから説得力が
 あるんです。レポーターが「り」の繰り返しということをおっしゃったけど、耳
 から聴いた感じも捕らえていていいレポートですね。(A・K)


     (後日意見)
 鹿取発言中の牛が死んで運ばれていく歌は次のもの。(鹿取)
牛の子の死にて生まれて湯気あぐるをトラクター来て運びてゆけり
      『泡宇宙の蛙』P103


コメント
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