かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 2の187

2019-08-08 21:33:50 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究2の25(2019年7月実施)
     Ⅲ〈行乞〉『泡宇宙の蛙』(1999年)P120~
     参加者:泉真帆、岡東和子、A・K、T・S、鹿取未放
     レポーター:泉真帆   司会と記録:鹿取未放


187 たとえば武甲山の削られつづくるは単純明快にして痛々し

      (レポート)
 武甲山は秩父市の南部にある岩山で、古くから信仰の山とされてきた。北斜面には石灰岩の岩層が露出しており、大正期から石灰岩やセメントの原料として採掘されてきた。そのせいで標高が低くなったほどだ。一方、この北斜面の標高八百メートル付近にはチチブイワザクラ、ミヤマスカシユリなどの貴重な好石灰岩植物も生育する。このような山が削られつづけていることは「単純明快にして痛々し」と端的に詠む。詠い起こしを「たとえば」ともってきたことにより、一首は武甲山に限ったことではなく、もっと広く、人間の商業的な営みが大自然を損ねてゆくことを憂う大きな歌となっている。(真帆)


            (当日意見)
★何度も行ったことのある山ですが、周囲の山からすると確かに違和感があります。「つづく
 る」というのが効いていると思います。下の句が端的でいいですね。
★痛痛しが実感ですね。この歌、ものすごい破調で散文的なんですが、土屋文明的ですね。 
 即物的で、こういう歌はガーと押して詠われるんだなあと。対象ごとに歌い方を変えら 
 れてすごいですね。単純明快なんって四文字熟語ふつうは歌えないけどうまく収まって 
 いるし、漢字も多いけど。(A・K)
★光るのこぎりの続きにこういう歌もあるというのが面白いですね。そして、このぶっき
 らぼうな感じの歌い方でほんとうに痛みを感じているってことが伝わってきますね。(鹿取)

コメント
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