渡辺松男研究2の25(2019年7月実施)
Ⅲ〈行乞〉『泡宇宙の蛙』(1999年)P120~
参加者:泉真帆、岡東和子、A・K、T・S、鹿取未放
レポーター:泉真帆 司会と記録:鹿取未放
190 人参の地中に奪う朱のいろにおもいおよびてぞくぞくとせり
(レポート)
人参が朱色に育ってゆくのは、地中にある朱色から奪っているからかもしれない、そう思うと、ぞくぞくとするという。「人参」の語感にはニンジン(人間)も感じられるし、朱色は血の色のようにも感じられる。地中に生きている生物たち、あるいは死者たちの骸の血を吸って朱色になっている人参だと思い至ったとき、背中に悪寒がはしったのだろう。おもしろくて怖い一首だ。いや、怖くて面白い一首だった。(真帆)
(当日意見)
★「ぞくぞく」はひたすら面白くてぞくぞくと思いました。私はネパールのリン
ゴを詠ったんですけど、見渡す限りがれきの大地なんですね、そこに近藤亨さ
んって人が果樹園を作る指導をしていてリンゴが赤く実っている。このリンゴ
の赤ってどこから来ているんだろう、不思議だなと思いました。後から、松男
さんのこの歌と同じだなと思いましたが、頭のどこかにこの歌があって作った
のかもしれません。死者達の血の色っていうのはそれはそれで面白い解釈で、
なるほど怖いですよね。(鹿取)
★「朱を奪うもの」って映画があったのでアレッと思ったのですけど。発想のオ
リジナリティがすごいですね。人参がきれいな色だとは思っても、地中からそ
の色を奪ったとは普通思わないですものね。常識からたいていの人は出られな
いけど、こう思えるというのが素晴らしいですね。(A・K)
★「朱を奪うもの」は円地文子さんの小説ですね。(真帆)
★お百姓のお祖父さんをよく詠っているので、人参なんかも畑に育っているとこ
ろを見てきた経験があるんでしょうね。朱の色の感動はそんな生活の実感から
も出ているように思います。(鹿取)
★二首目(土を食う蚯蚓(みみず)の思いかろからず行(ぎよう)乞(こつ)をするお
もいなるらめ)の土が出てきた時、お祖父さんの汗のしみこんだ土かなと私も思
いましたね。 (真帆)
★お祖父さんから蚯蚓はこうして良い土を作っているんだよと教わったのか
もしれませんね。(T・S)
(後日意見)
鹿取発言のリンゴの歌は次のもの。(鹿取)
見渡すかぎり砂礫のいづこゆ汲み上げてりんごは色を得るにやあらむ
『かもめ』
Ⅲ〈行乞〉『泡宇宙の蛙』(1999年)P120~
参加者:泉真帆、岡東和子、A・K、T・S、鹿取未放
レポーター:泉真帆 司会と記録:鹿取未放
190 人参の地中に奪う朱のいろにおもいおよびてぞくぞくとせり
(レポート)
人参が朱色に育ってゆくのは、地中にある朱色から奪っているからかもしれない、そう思うと、ぞくぞくとするという。「人参」の語感にはニンジン(人間)も感じられるし、朱色は血の色のようにも感じられる。地中に生きている生物たち、あるいは死者たちの骸の血を吸って朱色になっている人参だと思い至ったとき、背中に悪寒がはしったのだろう。おもしろくて怖い一首だ。いや、怖くて面白い一首だった。(真帆)
(当日意見)
★「ぞくぞく」はひたすら面白くてぞくぞくと思いました。私はネパールのリン
ゴを詠ったんですけど、見渡す限りがれきの大地なんですね、そこに近藤亨さ
んって人が果樹園を作る指導をしていてリンゴが赤く実っている。このリンゴ
の赤ってどこから来ているんだろう、不思議だなと思いました。後から、松男
さんのこの歌と同じだなと思いましたが、頭のどこかにこの歌があって作った
のかもしれません。死者達の血の色っていうのはそれはそれで面白い解釈で、
なるほど怖いですよね。(鹿取)
★「朱を奪うもの」って映画があったのでアレッと思ったのですけど。発想のオ
リジナリティがすごいですね。人参がきれいな色だとは思っても、地中からそ
の色を奪ったとは普通思わないですものね。常識からたいていの人は出られな
いけど、こう思えるというのが素晴らしいですね。(A・K)
★「朱を奪うもの」は円地文子さんの小説ですね。(真帆)
★お百姓のお祖父さんをよく詠っているので、人参なんかも畑に育っているとこ
ろを見てきた経験があるんでしょうね。朱の色の感動はそんな生活の実感から
も出ているように思います。(鹿取)
★二首目(土を食う蚯蚓(みみず)の思いかろからず行(ぎよう)乞(こつ)をするお
もいなるらめ)の土が出てきた時、お祖父さんの汗のしみこんだ土かなと私も思
いましたね。 (真帆)
★お祖父さんから蚯蚓はこうして良い土を作っているんだよと教わったのか
もしれませんね。(T・S)
(後日意見)
鹿取発言のリンゴの歌は次のもの。(鹿取)
見渡すかぎり砂礫のいづこゆ汲み上げてりんごは色を得るにやあらむ
『かもめ』