かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

清見糺の一首鑑賞  9

2020-05-26 17:02:22 | 短歌の鑑賞
ブログ版清見糺鑑賞 2  ゆるふん  
               かりん鎌倉支部  鹿取未放     


9 燃えるゴミと今はなりたる牡蠣殻の縁にほのかに虹のたつ見ゆ         
                   「かりん」94年4月       

 たかがゴミの歌なのだが、下句に艶な気分が漂っている。「ほのかに」「虹の」などやわらかな言葉つづきのせいでもあろう。もちろん虹は貝殻の内側の七色に輝くさまをいっている。
 ボッティチェリ「ヴィーナスの誕生」で乗っているのは、牡蠣殻ではなく帆立の貝殻だが、わたしはどうしてもあの絵のヴィーナスを連想してしまう。ちなみに漱石の「夢十夜」に、死んだ若い女を埋めるのに牡蠣殻で庭に穴を掘る場面が出てくるが、これも女の美しさを際だたせるための道具立てだろう。

    永訣の朝はぶしつけにやってくる深夜の間違い電話のように

 9番歌と同時期のこの作は、特定の人との永訣を想定しているのだろう。それは偶発的で避けようもないものとして作者の中で恐れられているようだ。


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