かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

改訂版 渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞  28

2022-04-10 09:54:13 | 短歌の鑑賞
※改訂版を先にアップします。
  既にアップした『泡宇宙の蛙』2の1~2の5までの鑑賞を大幅に変更した歌について、
   改訂版を1首ずつ載せてゆきます。
   この後、本日2回目になる通常の鑑賞を載せます。  


  改訂版 渡辺松男研究2の4(2017年9月実施)
    『泡宇宙の蛙』(1999年)【大雨覆】P24~
     参加者:泉真帆、T・S、曽我亮子、渡部慧子、A・Y、鹿取未放
     レポーター:泉 真帆    司会と記録:鹿取未放
     
28 呼びかけてかならず寒くなるわれに茜の雲よ鳥消えてゆく

      (まとめ)
 26番歌(ひかりより繊きおもいというものを鳥は知りつつ天翔るらん)で見たように、「ひかりより繊きおもい」を持った主体、27番歌(鳥と呼びはてしなき空見上ぐればきらきらと神の 花粉は飛べり)の「神」、そういういわゆる〈超越者〉に対して、人間である〈われ〉は鳥たち ほどその恩寵を素直に感受していない。ここで呼びかける対象は何だろうか。直接には「神の花 粉」である鳥かもしれないが、その背景には〈超越者〉がいる。呼びかけても答えてくれない。だから「かならず寒くなる」。そしてそんな〈われ〉を残して鳥たちは美しい茜色の雲の中に消えてゆく。「鳥雲に入る」という春の季語があって「春になって北に去る渡り鳥が、雲に入るように見える」(広辞苑)ということだが、この歌は季語とは関係がないようだ。(鹿取)



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