病気はしても病人になってはいけない

2009-03-20 21:48:12 | こんなンで委員会

先日亡き母のことを書いたので、少し続きの「貧乏話」を書き足そうと思います。

母が働いて、その毎月の給料日が来るといつも奮発して、私をお蕎麦屋さんに連れて行ってくれたものです。その月いっぱい、まともにご飯が食べられるかどうかも分らないのに、私はただその日を楽しみにしていました。

お米が無くなる頃は、顔が映るような汁の多いお粥を食べていましたが。それを特に不幸だとも、惨めだとも思わずに過ごしていました。貧しくとも、親子で仲良く囲む夕餉は、温かく楽しいものでした。

母は時々、切り花を買ってくることがあり、私はすぐに枯れてしまうお花に、なぜお金を使うのだろう?もったいないじゃないか、と思いました。それで、コロッケや天麩羅などの、ご飯のおかずになるお惣菜が買えるからです。

そう母に言うと、母はしばらく黙っていましたが、「卵やコロッケや蒲鉾のおかずは、身の肥やしになるけど、綺麗なお花は心の肥やしになるよ。おまえも私の年頃になったら、そのうち分るさ」と言いました。

そんなものかなぁと思いながら、それでもまだ、もっと現実的な物にお金を使うべきだ、不経済ではないか、などと思っていました。

年の離れた兄に、「おまえは能書きだけは一人前」と言われていて、何かと理屈を捏ねる私ですから、母が言うのは’私の年頃になればイロイロ分ってくるよ’が多かったのです。

「母親というものは、良くも悪くも我が子の本質を見抜いている」とは、私の姑の言葉ですが、確かにな~と思います。いつの間にか当時の母の年齢になると、私もお花などが愛おしくなったものです。ちょっと可笑しくなって、一人で笑ってしまいました。



   


          紅梅


   



さて、つい最近知ったことなのですが。。

評論家の吉武輝子さん(77才)は、「70代、80代は人生の旬」が口癖だそうです。今も年3冊の書き下ろしを自らに課し、呼吸障害を抱えつつ携帯用の酸素ボンベを持って、講演に行かれるようです。

膠原病との付き合いは30年来で、右の肺は自然気泡ですでに無く、左も半分以上が肺気腫。3年前には大腸がんの手術もされたということです。

病と向き合うコツは「病気はするけど、病人にはならないこと」、次の4か条を信条として。

★おしゃれをする ★ハードルが少し高くても新しいことに挑戦して、「自分もまんざらではない」と自信をつける ★医師と信頼関係を結ぶ ★自分が必要とされる場所に進んで出て行き、エネルギーをもらう

年を重ねるということは、社会的制約から解き放たれて得をしていくこと。どんどん楽しくなり、だんだん自分らしくなっていく感じなのです、とおっしゃっていますね。


実は吉武さんには若い頃、一度だけお会いしたことがあります。締め切りの原稿をいただきに伺ったのですが、ご自宅近くの喫茶店を指定されて、ワクワクしながら待っていました。私の憧れの女性だったからです。

当時の吉武さん、40歳代だったでしょうか。さしずめ’向かうところ敵無し’の風情でした。初めて会った私などにも、まるでこの前からの知り合いのように、気軽くお喋りされる方で、へぇ~と驚いたくらいです。

「闘う女」のイメージの彼女は、ヘビースモーカーらしく次から次へと煙草に火をつけ、私はハラハラした記憶があります。彼女が病気をして後、TVのシンポジウムなどで見かけると、かつての「闘う女」は年老いてやつれ、悴んでいるようにも見えました。

「吉武さんどうしたの、あの昔の気合いはもうなくなったの、そんなに大人しくなってしまって。。’らしく’ないわよ」と、TVにツッコミを入れていたものです。

しかし、吉武さんは、私の知らぬ間に’完全復活’をされていました。一人の人間として、真摯に生きてゆく「自己に厳しい」、見事な’復活’でした。



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(※21日の追記・可愛い’ふきのとう’のオミヤゲ)モカさんの心のふぉとより↓半ば強引にお借りしてきましたん♬




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16 コメント

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紅梅 (かずこ)
2009-03-21 21:14:31
青空に咲いている紅梅の何と美しいこと!

今日のお話も心に残る良いお話ね。
私ねこういうお話大好きです。

俳句は難しくって!(ごめんなさい)空見さんが一生懸命書かれていたものを

でも今日の“ふきのとう”に託した若き日の恋の詩は分かりますよ。

そうね~こんな時代もあったでしょうね。
空見さんなら

私が真剣に、片思いをしたのは40代の頃!
熟女になった頃!一番モテタノもこの頃!

今となると懐かしい思い出です。
あっ!!こんな事書いてどうするアハハ!
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こんばんわ (オコジョ)
2009-03-21 22:12:05
私が小学校の時に父が結核2年の入院生活と失業・・・
父が単身東京へ出て、職探し・・・

ようやく、一家で東京に出たものの、6畳一間に家族4人・・・

色々なことがありました。

あのときのことを考えればどうなっても生きていける。

でも、もっと貧しい人もいるのでしょうね。
上を見ればきりはない・・・
下も同じかもしれません。

苦労を知っている空見さんは強いです。

繊細な女性は、同じように感じるようですね。
  
ほろ苦き恋の味なり蕗の薹   杉田久女

杉田久女はこんな句もありましたね。

紫陽花に秋冷いたる信濃かな

おっと、秋の句でしたね。
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すごいなぁ (地理佐渡..)
2009-03-22 00:05:20
こんばんは。

>病気はするけど、病人にはならないこと..

これはすごい。ではけがの場合はどうでしょう。
つい数日前に交通事故に遭い、今頭部に絆創膏。
けがの部分はホチキス留めされています。
24日にとれるそうです。ということで、けが人
ですが、らしくない日々を送っています。
ただ、困るのはこの方洗髪ができないことです(笑)。

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いいお話です。 (モカ)
2009-03-22 00:08:28
空見ちゃん、こんばんは~~♪

いいお話を読ませていただきました。
>「卵やコロッケや蒲鉾のおかずは、身の肥やしになるけど、綺麗なお花は心の肥やしになるよ。
>おまえも私の年頃になったら、そのうち分るさ」と言いました
素晴らしいお母様ですね~。
なるほどです。今の空見ちゃんの感性はそのようにして育てられたのですね。
そう、気がつかないうちに意外と母親と同じことをしているのですよね~。
行動はもちろん、考えや仕草など。。。
特に、子供への叱り方など、そのままでドキッとします。
お話にピッタリの紅梅が眩しかったです。

吉武さんのこと・・・やはりその関係のお仕事をされていらしたのですね。
復活に年齢制限のないこと、素晴らしいお話でした。
空見ちゃんの心に響く言葉に引き込まれ、最後にはいつも癒やされているのです~。

フキノトウの画像が一段と綺麗に見えました。不思議な気持ちですぅ。
エッセイへと部門を変えましても3位です。素晴らしいです。応援しております。
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じみじみと読ませて頂きました (なかぱ)
2009-03-22 08:27:23
じみじみと読ませて頂きました。貧しくても心の
豊かさを求める素敵なお母様と思います。
昔を思い出すと、貧しさに負けて、心まで貧しく
なる人の方が多かったと思います。
そのような社会的背景の中では、なかなか実行できる
ものではありません。

吉武輝子さんとの出会いのエピソードも興味深く読ませて
頂きました。

>年を重ねるということは、社会的制約から
>解き放たれて得をしていくこと。どんどん楽しく
>なり、だんだん自分らしくなっていく感じなのです、
>とおっしゃっていますね。

このことについては、同感です。 私もまったく
同じ印象をもっています。
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かずこさんへ (空見)
2009-03-22 09:52:57
おはようございます

>“ふきのとう”に託した若き日の恋の詩
(≧∇≦)/ ハハ、恋には無縁の空見でございます。
想像だけで、ありもしない恋の俳句も作りますよんf(^ー^;

かずこさんは、40代の時に一番モテたッ!・・別嬪さんは辛いね~*^^*でも40代は、私も人生の中で一番悩み続けた年代でした。この先もこのままでいいのかな?って。リセットするのなら、ここが最後のチャンスかと・・。結局ずっと無難にそのままですけど(笑)

’重い’話にお付き合いしてくださって、ありがとう~
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オコジョさんへ (空見)
2009-03-22 10:06:40
おはようございます

>ほろ苦き恋の味なり蕗の薹   杉田久女

はい、そうなのです~。モカさんにコメント入れてから、このフレーズでは’類句’がタンとあるだろうなぁ、と思いました。でも、ネットで類句を調べることもせずに、ズボラを決め込んで。。(笑)

それより、「彼岸」の句ですが、昨夜から今朝まで悩み続けましてね。結局はじめに作った「彼岸あり」に落ち着きました。
あっちの岸とこっちの岸で、妣と語らうのですから、写真とも合うかなと思いました。ご存知でしょうけれど、’妣(はは)’は亡くなった母親のことを指すそうです。
お忙しい中、いろいろとありがとうございました
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地理佐渡..さんへ (空見)
2009-03-22 10:16:38
おはようございます

黄砂か花粉かが、今雨に濡れて漂っています(笑)

エッ、どなたが頭にホチキスを!?
地理佐渡..さんか、お子さんか、でも大事無いようで不幸中の幸いでしたね。洗髪できないと可哀想です~、熱い濡れタオルで、そっと周囲だけ、少し拭いてあげると良いかも。

病気や怪我は誰にもあること。でも、気持ちまで負けてはいけない、と吉武さんは言っているのではないでしょうか。不思議なもので、病院に行っただけで、何か’病人・怪我人’になった気持ちになりますものね。どうぞお大事に~
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モカさんへ (空見)
2009-03-22 10:26:01
おはようございます

>そう、気がつかないうちに意外と母親と同じことをしているのですよね~。行動はもちろん、考えや仕草など。。。
>特に、子供への叱り方など、そのままでドキッとします。

本当に、年をとると親によく似てきますね、驚くほど。ホント不思議ですね~(笑)

’ふきのとう’をさらって来てしまって、申し訳ありません。おかげさまで、暗いブログが明るくなりました(='m')ウフ
モカさんのお写真が、句ゴコロ?を誘うと言うのか、何か言いたくなってきて困ります。マグノリアの花にも、一句浮んでいます。う~ん、自重次長、花鳥課長(爆)
いつもお世話になってばかりで、感謝します!!
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なかぱさんへ (空見)
2009-03-22 10:38:55
おはようございます

お忙しいのに、来ていただけたのですか、ありがとうございます(^人^)

子供と言うのは無邪気なもので、家が’貧乏’なのにあまり気付いていないのですね。母がちょっと’奇想天外’というか’ぶっ飛んだ’人で、まぁまぁそれなりに楽しかったです(笑)
後年、兄がシミジミ言いましたもの。「俺たちさぁ・・よく(あの母の元で)今まで生きてこれたよなぁ」って。

「年を重ねる」ことも、あながちマイナスばかりではないですね。滋味が出てきて面白くなるのかも。80才になっても、骨や脳細胞は増やすことができるらしいですもの、なかぱさんも空見もガンバですよ~!

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