「つづく」の文字に、寸止め的ストレス(笑)を若干感じていらっしゃる(らしい?)方が、約2名ほどいらっしゃる(ような?)可能性があるため・・とうとう、この話を完結させる時が来たことを、決意したこの私。
ただし、「明日への夢と希望」とは、まったく繋がらない話なので、読まれる方には、ある種の「覚悟」をしてもらわなければなりません。(←え?あざとい?)いえ、それほどの話でもないのですが、いちおうの念押しデス(笑)
18日記事の最後の行から、始めます。
彼と彼女が暮らした「愛の巣」、の残骸を見学するため、大学生本人と待ち合わせて、○福町のアパートを訪問した。外見は何の変哲もない、普通のアパートである。なかは小奇麗にしているが、殺風景な部屋だった。
彼が説明する。ここに机を二つ並べて、いつも二人で勉強していたんだよ!そこの窓から、彼女の母親が、バカみたいに様子を窺っていたんだぜ~!と。
ほぅ、なるほど。この窓からですか?カーテン越しですか?。。。私は、事件の現場検証に立ち会う女性刑事、のようなものだった。まぁ、この辺は、茶化していますが、流れ的には、こんな感じでした。
物件をひと通り見てまわり、ブックシェルフも点検した。それなりに、経済学部の学生が読むだろう、おカタイ本が並んでいる。私ならば、ゼッタイに読まないような…。
その中には「ケインズの経済学」の本があった。ふ~ん、なるほど、これは素晴らしいや、と思ったくらい。思想的、あるいは何らかの宗教的な本は、見当たらなかったと思う。
彼女の荷物は?と聞けば、何から何までダンボールにつめて、送ってやった、という。この部屋に、女性がいたような形跡は、皆無だった。
学生結婚が、彼の妄想かも知れないことを、私はほんの少し疑っていた。たとえば正式な結婚ではなく、一時的な同棲ではなかったのか。
結婚式や披露宴は、一流ホテルで、政財界から千人規模でご招待しなくてはいけない、という向こうの一方的な要求を、ボクは蹴ってやったんだ、と彼は言った。彼女は、ボクの意見を聞いて、「それでいいヨ」って味方してくれたんだ。
楽しく、ここで二人で暮らしていたのに、彼女は親に説得されて、親に寝返った。きっと、莫大な財産を捨てきれなかったんだろ、くそっ!そんなお金のためにボクを…ボクを裏切りやがって!
彼のモノローグは、ますますエスカレートしていった。私は、彼の怒りの激しさがピークをむかえ、それがやがてクールダウンするまで、黙って聞いているより仕方がなかった。
この男の、どこが魅力的だろう。私には分からない。お嬢様の彼女が、彼のどこに魅かれたのか。私には、これといって特徴のない、平凡な大学生にしか見えない。それも、自己中心的な物の見方しかできない、年齢相応の若者である。
その後、彼のお母さんとの電話連絡により、お嬢様と結婚していたことは、間違いないようだった。そして、彼の不安定が徐々に安定していったことにより、我々も、もう連絡を取り合うことがなくなっていった。
彼がこきおろしていた、さる大学の教授で評論家でもある、伯父さんの著書を本屋さんで見たときぐらいしか、彼の名前を思い出すことはなかったのである。
そして、数十年が経過した。ある業界で成功している男の名前が、あの大学生と同姓同名だった。それほど珍しい名前でもない。あきらかに同名の別人だと思った。彼とその職業とが、まるで繋がる要素がなかったから。それっきりだった。
今から数年前、またその男の名前を報道で見た。それは、若くしての死亡記事だった。ふと、まさか、という思いが湧いてきて、ネットで経歴を調べてみた。…符合している。
スナップのような、生前の写真も見た。若き日の彼に、非常に似ていた。ぼんやりとした点と点が、あぶり出しのように浮上してきていることに、私ははげしい動悸を覚えた。
彼の作品も、初期のものは、私に語った如く、あの燃えさかる”怨念”が感じられるような内容だったこと。
さらに調べると、彼の個人サイトが、「魔王」の名前であることを知った。そこは、登録しなければ入れないサイトだったが、そのトップページを見ただけで、私はもう、あの彼だったのだと確信していた。点と線は繋がったのだ。
彼が、中年以後も、心の中に「魔王」を棲まわせていたことに、私は茫然としていた。そして、私が気付いたときには、彼はもう、この世から消えてしまっていたことに、不思議な感覚がおしよせていた。
彼の、運命を思った。彼を成功に導いたであろうエネルギー源が、あきらかにあの”離婚の怨念”にあったのを、強く感じていた。
別れたお嬢様に誇れるような、自分の成功に、彼は当時の劣等感をはねかえせただろうか。偉くなった”ボク”を見せて、溜飲を下げただろうか。
その時、「人生なんて、センチメンタルジャーニィさ」というかすかな声が、どこからか聞こえた気がした。
「サヨウナラだね、可哀相なN君。今夜からは天国だから、安心して、ゆ~っくり眠るんだよ~」と、心の中でつぶやいて、私はそっと「魔王」のトップページを閉じた。泣くまいとしても、少しだけ、私は泣いていた。

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おかげさまで、今日は10位以内におります~!ありがたいことでございます(合掌)
ただし、「明日への夢と希望」とは、まったく繋がらない話なので、読まれる方には、ある種の「覚悟」をしてもらわなければなりません。(←え?あざとい?)いえ、それほどの話でもないのですが、いちおうの念押しデス(笑)
18日記事の最後の行から、始めます。
彼と彼女が暮らした「愛の巣」、の残骸を見学するため、大学生本人と待ち合わせて、○福町のアパートを訪問した。外見は何の変哲もない、普通のアパートである。なかは小奇麗にしているが、殺風景な部屋だった。
彼が説明する。ここに机を二つ並べて、いつも二人で勉強していたんだよ!そこの窓から、彼女の母親が、バカみたいに様子を窺っていたんだぜ~!と。
ほぅ、なるほど。この窓からですか?カーテン越しですか?。。。私は、事件の現場検証に立ち会う女性刑事、のようなものだった。まぁ、この辺は、茶化していますが、流れ的には、こんな感じでした。
物件をひと通り見てまわり、ブックシェルフも点検した。それなりに、経済学部の学生が読むだろう、おカタイ本が並んでいる。私ならば、ゼッタイに読まないような…。
その中には「ケインズの経済学」の本があった。ふ~ん、なるほど、これは素晴らしいや、と思ったくらい。思想的、あるいは何らかの宗教的な本は、見当たらなかったと思う。
彼女の荷物は?と聞けば、何から何までダンボールにつめて、送ってやった、という。この部屋に、女性がいたような形跡は、皆無だった。
学生結婚が、彼の妄想かも知れないことを、私はほんの少し疑っていた。たとえば正式な結婚ではなく、一時的な同棲ではなかったのか。
結婚式や披露宴は、一流ホテルで、政財界から千人規模でご招待しなくてはいけない、という向こうの一方的な要求を、ボクは蹴ってやったんだ、と彼は言った。彼女は、ボクの意見を聞いて、「それでいいヨ」って味方してくれたんだ。
楽しく、ここで二人で暮らしていたのに、彼女は親に説得されて、親に寝返った。きっと、莫大な財産を捨てきれなかったんだろ、くそっ!そんなお金のためにボクを…ボクを裏切りやがって!
彼のモノローグは、ますますエスカレートしていった。私は、彼の怒りの激しさがピークをむかえ、それがやがてクールダウンするまで、黙って聞いているより仕方がなかった。
この男の、どこが魅力的だろう。私には分からない。お嬢様の彼女が、彼のどこに魅かれたのか。私には、これといって特徴のない、平凡な大学生にしか見えない。それも、自己中心的な物の見方しかできない、年齢相応の若者である。
その後、彼のお母さんとの電話連絡により、お嬢様と結婚していたことは、間違いないようだった。そして、彼の不安定が徐々に安定していったことにより、我々も、もう連絡を取り合うことがなくなっていった。
彼がこきおろしていた、さる大学の教授で評論家でもある、伯父さんの著書を本屋さんで見たときぐらいしか、彼の名前を思い出すことはなかったのである。
そして、数十年が経過した。ある業界で成功している男の名前が、あの大学生と同姓同名だった。それほど珍しい名前でもない。あきらかに同名の別人だと思った。彼とその職業とが、まるで繋がる要素がなかったから。それっきりだった。
今から数年前、またその男の名前を報道で見た。それは、若くしての死亡記事だった。ふと、まさか、という思いが湧いてきて、ネットで経歴を調べてみた。…符合している。
スナップのような、生前の写真も見た。若き日の彼に、非常に似ていた。ぼんやりとした点と点が、あぶり出しのように浮上してきていることに、私ははげしい動悸を覚えた。
彼の作品も、初期のものは、私に語った如く、あの燃えさかる”怨念”が感じられるような内容だったこと。
さらに調べると、彼の個人サイトが、「魔王」の名前であることを知った。そこは、登録しなければ入れないサイトだったが、そのトップページを見ただけで、私はもう、あの彼だったのだと確信していた。点と線は繋がったのだ。
彼が、中年以後も、心の中に「魔王」を棲まわせていたことに、私は茫然としていた。そして、私が気付いたときには、彼はもう、この世から消えてしまっていたことに、不思議な感覚がおしよせていた。
彼の、運命を思った。彼を成功に導いたであろうエネルギー源が、あきらかにあの”離婚の怨念”にあったのを、強く感じていた。
別れたお嬢様に誇れるような、自分の成功に、彼は当時の劣等感をはねかえせただろうか。偉くなった”ボク”を見せて、溜飲を下げただろうか。
その時、「人生なんて、センチメンタルジャーニィさ」というかすかな声が、どこからか聞こえた気がした。
「サヨウナラだね、可哀相なN君。今夜からは天国だから、安心して、ゆ~っくり眠るんだよ~」と、心の中でつぶやいて、私はそっと「魔王」のトップページを閉じた。泣くまいとしても、少しだけ、私は泣いていた。

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なかなか引き込まれますね。
明るい文章です。
今からでも遅くありません。
エッセイをぜひ一冊に纏めて本にしてください。
ファンができると思います。
こっちの方が話に奥行きがあって好きです。
エッセイ集を出すときには是非、弊社に
ご用命を。。。
打ち合わせがてら会いに行きます!
たのしみにしてますね~♪
そうですか?明るい文章ですか?なら、嬉しいです(#^.^#)
…う~ん。誰も読まない、はた迷惑なエッセイね~、それは遠慮しておきましょう
山小屋さんこそ、山岳フォトエッセイ集、などを出版されてはいかがでしょう。ファンはたくさんいますよ
コメント、ありがとうございました(合掌)
あはは。その手には乗りませんよ~、営業活動か
要らない本って、ホント、迷惑なんですよね、頂いても。そんな被害者は増やしたくないと思う、エコなこの私^m^
いしともさん、そちらのツクシはもう出たかもしれません。仕事している場合じゃないですよ~、あはっ!?
コメント、ありがとうございました(合掌)
思い出したのが小学生の頃、背の高い太っちょの男子生徒が転校してきたのですが、仲良しの「コーちゃん」に似ていたので、帰りに後から「コーちゃん!一緒に帰ろう」と声をかけたら、間違えで転校してきた生徒だった。
翌日、全校生徒が集められ何やら重々しい雰囲気なので、何か?と思ったら、その男子生徒が自殺してしまったのだというのです・・。原因は良くわかりませんが、あの日僕が一緒に帰ってあげていたら・・と、考えるときがあります。
人の死をそんなかたちで知りたくはないですね~
ニュースになるような亡くなり方って・・・
ちょっと想像しちゃいました
世の中には
その負のエネルギーを
別の方向に向けられたらいいのに・・・
っていう人、結構いますよね。
彼のお母様の悲しみを思うと
最後まで自己中心的な生き方でしたね。
訪問させてもらってます。記事やコメントが
膨大で、多分まだ半分くらいしか読んでません。
僕もトーコさんの文章が好きです。
中学生のころ読んだ寺田寅彦ふうだったり、
夏目漱石ふうのところもあったり、なんか
イイですね。
記事の題材も面白いものが多いです。ネタを
探すのがお上手ですね。
これからも訪問させていただきます。
恒例の、お昼休みのご訪問、有り難き幸せ~~
え?誰を失神させたって?あ、なんだ、メジロかぁ(笑)
そうですか、転校生が…、辛い出来事でしたね。
あのね、文中の彼は、自殺ではなく、普通?の病死でした。ある業界で一時期ブレイクして、それなりに有名人だったから、報道されたのでしょうね。
もしや?と思って調べていたとき、微妙に本人に近づいていっていると感じ、心臓が口から飛び出しそうな気分になりました。そうか、あの彼が…と。
コメント、ありがとうございました(合掌)
ほよよ
彼は、病死でしたよ。あらっ?私の書き方が悪かったかしら。。。反省
彼の負のエネルギー、始まりはそうでも、途中から、明るい楽しいものになって、ブレイクしたようです。
彼にそんな才能があったなんて、ま~ったく想定外でした。彼を、そういう道に進ませたのは、あの事があったからだろうと思うから、世の中に「無駄」なんてことはないのだと、改めて感慨深いものがありましたね。
彼はまだ若かったのだけれど、人生のひと仕事を、やり終えたんだと思いました(合掌)
コメント、ありがとうございました。ウレピーーー(合掌)
まぁまぁ、いらしてたんですか?嬉しいです~
スエツグさんの生真面目さは、有史以前から存じ上げていました。私、実は、隠れファンだったのですよ(笑)
え?私のブログの”前科記事”を読んでいるのですか?それは…すぐ、中止された方が良いと思います!お目がケガレマスヨ。できれば、最近のだけにしてくださいまし~、あはっ!
ネタは、アレコレと思いつくのですが、ナニブン、書くのが異常に遅いです。ええ、単純にキーボードへの打ち込みの件の、問題なのですが(笑)
今後も、コメントをよろしくお願いします。また、「いしともブログ」のコメント欄で、多趣味なスエツグさんとコラボしたいです