ミゾソバ↑
いぼむしり(=蟷螂)↑初冬には保護色の枯葉色になっているが生きている🍂この色になると「枯蟷螂」とも🍃
(小熊座2018年12月号⭐高野主宰の選評より)
まず思い浮かんだのは、なぜか般若の面である。「般若」はもともと智慧を意味する仏語。それが面の名前になったのは、般若坊という名の僧侶が最初に面を彫ったからだとか、『源氏物語』の葵の上とりついた六条御息所の生霊が、般若経を読んだら退散したからだとの説がある。般若はまだ中成り、つまり、鬼に化する途中の顔で、その完成形ではない。三段階あって、般若になる前を生成りと呼ぶ。角が出掛かったばかりで、形相もまだ若い女性を連想させる。般若の次が本成り、真蛇とも呼ぶ。憎悪のあまり蛇と化した顔だ。口は耳まで裂け、牙が長く、髪の毛もほとんどなくなる。
般若は女性の面ではあるが、憎悪、妬み、恨みなど、本来、男女の区別ない人間の心の闇の象徴であろう。この句は、鎌をかざした蟷螂を見たとき、ふと、人間の、その殺気だった心が生んだ斧を連想したのだ。斧は武器だが、蟷螂の場合は、身を守る場合と食べ物を得る場合にのみかざされる。人間の斧は、物欲や色欲など人間のみの根源の闇からかざされる。