居心地

相棒のワンコとの暮らしの風景
他愛ない日常のあれやこれ

オリンピックの身代金

2009年08月22日 | 
著者 奥田英朗


時は昭和39年。

須賀忠 24歳。
東大を卒業後、産声をあげたばかりのテレビ局に就職した
父は警察官僚、兄は外務省と言う須賀一族の中で
ただ一人C調な息子。
実家が連続爆弾事件の標的にされるなか
身内から真実を知らされないまま勘当の身に。


島崎国男 同じく24歳。
東大で忠と同学年だったが現在は院生。
秋田出身の歌舞伎役者を思わせる風貌。
本人の意図せぬところで女性にもてる。
兄はオリンピック工事の為、出稼ぎに上京していたが
不慮の死を遂げる。


落合昌夫30歳
警視庁刑事部捜査一課に所属
身重の妻と二歳になる息子と郊外の団地に入居が決まった。
が、連続爆弾事件の捜査にあたりマイホームへ帰る事も
儘ならない。


物語は三者の側からの視点で時に時間を前後して進んでゆく。


日本が一丸となって一等国の仲間入りを果たさんと

東京オリンピック成功をスローガンに沸き立っている時

それを形にする要員として駆り出されたのは

おもに東北からの出稼ぎの人々。

貧農出身の彼らが低賃金で工事の礎となっているのだ。

何人もの人柱をだしながら

人工一人の死など大工事の前にはさして大きなニュースにもならない。

国男は兄の死に、その弔いの為同じ工事現場で働きだす。

その末端の世界に身を置き国男はある大きな思いに突き動かされてゆく。。。



果たして東京オリンピックから間もなく50年の今日

日本は真の繁栄を勝ち取ったのか?



社会の枠組みは当時と何も変わっていないのではないかと思わせる。

事を成し遂げて名を残す人等の陰には

大多数の名も無き人々の汗と涙と忍耐がある。

この小説はじっくりドラマ化して欲しい。

もちろんフィクションなのだがこの緊迫感はあまりにリアル。

島崎国男の名は私の心から消える事はないだろう。


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コメント (4)
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