居心地

相棒のワンコとの暮らしの風景
他愛ない日常のあれやこれ

終末への始まり

2009年09月13日 | 母との45日間
4年前の今日は

今は亡き母が一般病棟から緩和ケア病棟へ移った日である。

そして、この日から母と私の45日が始まったのだ。


膵臓癌が見つかった時点ですでにステージはⅣ

一般病棟では痛みを取る手立ては限られていて

母の苦しみも日に日に増してゆく。

母の苦しみを取り除くのが最優先。

妹と私はこの事だけは絶対に譲れない。


緩和ケアへ入るには

* 癌患者である事

* 余命半年以内である事

* 本人が了承している事

などがそこの病院での条件であった。

母の場合はどれもクリアをしていた。


移動の朝は良く晴れていた。

引っ越しさながらに大きな台車に母の荷物をまとめる

移動のベッドに揺られながら

長い長い廊下を渡って行く。

お世話になった看護師さんや先生が廊下の両脇で見送って下さった。

この廊下をもう母が戻ってくる事はない。

「先生、看護師さん、お世話になりましたね」

そんな事を知ってか知らずか母はお礼を言いながら進んでゆく

深々と頭を下げる先生と看護師さん達

インターンの先生は目が真っ赤だった。


この先にこんな廊下があったのかと思うほど先へ進んでゆくと

そこには聖なる場所へ続く扉が厳かに聳えている。

扉の向こうは別世界のコロニー。


母と私に用意された部屋は小さなキッチンに

畳のスペース付きの燦々と日が入る角部屋

バルコニーから直接お庭に出ることもできる。

花壇はボランティアさんが手入れをして下さっているので

季節のお花が風に揺られている。

大きなお風呂や図書室、小さなバーも有り

付き添い家族も一緒に利用できる。


「ここが終の棲家になるんだね」と呟く母。

お家からタンスを持ち込む方もあると言う。


担当の先生や看護師さんや栄養士さん

カウンセラーの先生や付添婦さん、総勢6人もの方が集まって下さった。


「痛みはすぐに取れますよ。体が楽になったら

どんどんやりたい事が浮かびますからね」

そんな夢のようなお話が翌朝には本当になっていた。


「とっても体が楽なの!もう私治っちゃったかな?」

そんな事あるはずないがこの一時だけはそう思いたかった。


母はこの部屋で終末に向けてのスタートを

静かに切ったのだった。



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